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Intel、288コアのSierra Forestで性能2.7倍実現へ。KDDIが採用に前向き
2024年2月26日 14:00
Intelは、2月26日(現地時間)からスペイン王国バルセロナ市で開催される、ワイヤレス通信業界の世界最大のイベント「MWC 2024」に出展し、同社の通信キャリア向けのCPU製品や、企業向けのAI PC(MWCの2日目に発表予定だと明らかにされている)に関する発表などを行なう。それに先だって報道発表を行ない、同社がMWCで発表する製品やデモなどに関して明らかにした。
この中でIntelは、最大228コアのSierra Forestのデモを行なう計画で、従来製品と比較してラック1つあたりのピーク性能が2.7倍になると明らかにした。Sierra Forestは5Gコアと呼ばれる5Gネットワーク基幹部分のSDN(Software Defined Network)化において、電力効率の改善に貢献する。世界中の通信キャリアが採用を検討していることを明らかにしたが、日本の通信キャリアではKDDIが期待感を表明している。
IntelのEコアだけの「Sierra Forest」、1つのパッケージに288コアを実現しラック辺りの性能が2.7倍に
Intelは、近年の5GコアネットワークのSDN化を推進しており、Xeonプロセッサーをエリクソンやノキア、NEC、富士通といった通信機器メーカーや、Dell Technologies、HPE、Lenovoといったサーバー機器メーカーに提供し、そうした通信キャリアのデータセンターに機器を納入して、ソフトウェアとCPUの組み合わせによりコアネットワークを実現している。
そうした通信キャリアにとって、もっか大きな課題となっているのがデータセンターの消費電力、より厳密に言えば電力効率だ。データセンター全体やラック1つあたりの消費電力は決まっているので、その範囲内でできるだけ性能が高いサーバー機器が必要になる。そのため通信機器メーカーも、サーバー機器ベンダーも電力効率の改善に努めており、消費電力を削減できる液浸を利用した冷却に取り組んでいる通信キャリアなども登場しているほどだ。
Intelも、電力効率の改善に迫れており、昨年(2023年)のMWCでは「Intel Infrastructure Power Manager」と呼ばれる、Xeonを搭載したサーバー機器の電力効率を高める電力管理ツールを発表している。もちろんそうした取り組みも有効なのだが、もっとも効率がよいのは、CPUそのものを省電力化することであるのは言うまでもない。
そうしたIntelが今年の前半にリリースを予定しているのが、開発コードネームSierra Forestで知られる次世代Xeonプロセッサーだ。
Sierra Forestは、クライアントPC向けのハイブリッド・アーキテクチャの2種類のうち、より電力効率の高いEコア(Efficiency Core)だけで構成されているデータセンター向けCPUとなる。パッケージ内に2つのダイが実装されており、1つのダイあたり144コアで、パッケージ全体で288コアの構成が可能になっている。従来の第4世代Xeonが1Pで60コア、第5世代Xeonが1Pで64コアとなるので、第5世代Xeon比較で4.5倍のCPUコアが1Pで実現されている計算になる。
このため、従来の5Gコア用Xeonと比較して、ラックあたりのピーク性能が2.7倍になるとIntelは説明しており、そのデモをMWCで行なう計画だ。
こうしたSierra Forestの採用は世界中の通信キャリアで計画されており、日本の通信キャリアではKDDIが「電力効率とコア数は、KDDIが5Gネットワークを構築する際の重要な指標だ。Sierra Forestの電力節約とワットあたりの性能向上は印象的。KDDIは、そのプラットフォーム展開をサポートする新しいオプションを歓迎する」というコメントを発表するなどしており、前向きに採用を検討していることを示唆している。
vRAN向けには「Granite Rapids-D」を来年に投入、レイヤー1アクセラレーションなどに対応
Intelは、vRAN(Virtual Radio Access Network)と呼ばれる通信キャリアの基地局とコアネットワークの中継となるRANをSDNで仮想化するソリューションも推進しており、昨年のMWCでも多数の採用例を明らかにした。
そして、そのvRAN専用の製品として「第4世代インテルXeonプロセッサー Intel vRAN Boost対応」(以下第4世代Xeon vRAN Boost対応、開発コードネームSapphire Rapids EE)を昨年のMWCで発表し投入している。
第4世代Xeon vRAN Boost対応は、通常の第4世代Xeonに、レイヤー1のアクセラレータ(vRAN Boost)を追加して、ネットワークのパケット処理を低負荷で行なえるようにした製品。それにより、パケット処理はアクセラレータに任せ、CPUは別の処理を行なえる。
今回そうした第4世代Xeon vRAN Boost対応の後継として、2025年にGranite Rapids-Dを投入する計画を明らかにした。Granite Rapidsは、昨年の12月に発表された第5世代Xeon(開発コードネームEmerald Rapids)の後継として今年投入されるXeonプロセッサー。Sierra ForestがEコアから構成されているのに対して、Granite RapidsはPコアから構成されている製品になる。
Granite Rapids-DはそのGranite Rapidsに、レイヤー1アクセラレータ(vRAN Boost)などを追加した製品となる。Intelによれば、Dell Technologies、Lenovoなどの主要OEMメーカー、Red HatやWind Riverなどのプラットフォーマーなどと開発を進めており、搭載した製品が2025年に登場する見通しだ。
また、IntelはvRAN環境でもAIを活用してトラフィックの処理をより効率よく行なうためのソフトウェア開発キットとして「Intel vRAN AI Development Kit」を投入する計画も明らかにした。OpenVINOやoneAPIなどのIntelが提供する開発キットも活用して、vRAN向けのAI開発をより効率よく行なえる。
このほかにも、Intelはエッジ環境を効率よく開発するための「Intel Edge Platform」を、24年中に同社のパートナーなどを通じて提供開始するとも明らかにした。