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エプソン、オフィス向けレーザープリンタから撤退。2026年までにインクジェット方式に一本化

エプソンではオフィス向け複合機でもインクジェット方式を採用している。写真は新製品のLMシリーズ

 セイコーエプソンは、2026年までに、新規で販売するオフィス向けプリンタを全てインクジェット方式とし、2026年を目標にレーザープリンタの本体販売を終了すると発表した。消耗品および保守部品については、引き続き供給する。

 セイコーエプソン代表取締役専務執行役員営業本部長の久保田孝一氏は、「オフィスの消費電力の10%がプリンタおよび複合機であり、インクジェットプリンタは、レーザープリンタに比べて環境対応に優れている。待ったなしの環境問題に、環境性能が高く、脱炭素化に貢献できるインクジェットプリンタで応え、より多くの顧客に届けたい」と述べた。

セイコーエプソン代表取締役専務執行役員営業本部長の久保田孝一氏

 エプソン社内では、2014年にはレーザープリンタを中心に利用していたところ、月間の消費電力は1万6,000kWに達していいたが、インクジェットプリンタへの置き換えを推進したことで、2019年には3,000kW弱まで削減。消費電力量の削減率は82%に達した。また、消耗品廃棄量は72%の削減率になったという。

【おわびと訂正】初出時に2019年の消費電力を300kWとしておりましたが、正しくは3,000kWとなります。おわびして訂正させていただきます。

 同社調べによると、医療・福祉系の大規模ユーザーでは、535台のレーザープリンタを、489台のインクジェットプリンタに置きかえたところ、消費電力量が85%削減され、CO2排出量も85%削減されたという。

 「調査によると、オフィスで使用しているレーザープリンタを、エプソンのインクジェットプリンタに変更するだけで、CO2排出量を47%以上削減できる。政府では2030年に向けた温室効果ガスの削減目標として、2013年度比で46%の削減を打ち出している。レーザープリンタをインクジェットプリンタに置きかえることは、この達成に向けて有効な打ち手になる」と述べた。

 レーザープリンタは予熱をして、トナーを紙に定着させるために熱を使用。帯電から定着までの印刷プロセスが複雑であるのに対して、エプソンのインクジェットプリンタは、インク吐出に熱を使わないHeat-Free Technologyを採用。タンク吐出だけで印刷が終了するシンプルな仕組みとなっている。

 久保田氏は、「インクジェットプリンタは、レーザー方式に比べて電力消費が少なく、ヘッド蓄熱による待ち時間が発生しないため、プリンタの稼働時間と消費電力の効率化につながる。また、シンプルな構造で交換するパーツが少なく、定期交換部品が少ないため、メンテナンスが簡素化できること、インク吐出時に熱を使わないためヘッドの劣化が少ないというメリットもある。さらに、ファーストプリントが速く、安定した高速印刷が可能である点も特徴である。環境負荷の削減と生産性向上を同時に達成できる」とする。

 エプソン販売の鈴村文徳社長は、「企業では、環境負荷低減のために、さまざまなことに取り組んでおり、再生可能エネルギーへの変更や、設備やプロセスの革新、ハイブリッド車への変更などに取り組んでいる。だがそれらに比べると、社内のプリンタをインクジェットプリンタに置きかえることは、誰でも簡単にすぐにもでき、ハードルが低い環境活動だと言える。

エプソン販売の鈴村文徳社長

 過度な投資が不要で、しかも、生産性を高めることもできる」とし、「多くの企業が、インクジェットプリンタに置きかえてもらうためには、環境貢献できる度合いを可視化することが大切である。環境に取り組みたいと思っている企業に、どれぐらいCO2排出量を削減できるのか、といった情報を的確に提供をすることに力を注いでいく」と述べた。

 エプソンでは、キャプランとの協業により、同社が提供する「CO2排出量可視化BPOサービス」を通じて、CO2排出量のうち、オフィスにおける印刷業務での排出量を算出。エプソンの「出力環境アセスメントサービス」と組み合わせることで、印刷業務に関わる排出量を詳細まで明確化。インクジェット方式への切り替えによる排出量削減のシミュレーション結果や、最適な印刷環境を提案する考えだ。