ニュース
現行モデル全員集合! CPU価格帯別一斉ベンチ
2019年9月30日 06:00
CINEBENCHでは第3世代Ryzenが完勝
ここからはメインストリーム向けの主要な現行CPU 13製品を各種ベンチマークテストで比較した結果を見ていこう。CPUは価格帯別に三つに分類している。
最初に掲載したCINEBENCH R20はMAXONのCINEMA 4Dをベースにしたソフト。CGレンダリング性能の目安であるのは当然だが、ほぼCPUのみに大きな負荷がかかるため、CPUの基本性能を測定する用途でもよく利用されている。R20ではAVX2、AVX-512命令も活用するようになっている。「CPU」は全コア/全スレッドを利用してのレンダリングで、マルチスレッド性能を示す。「CPU(シングルコア)」は1スレッドのみでのレンダリング性能で、シングルスレッド性能の目安になる。
ハイエンドはRyzen 9 3900Xの圧勝。マルチだけでなくシングルでもはっきりライバルのCore i9-9900Kを上回っている。アッパーミドルもやはり第3世代Ryzenが断然強い。Ryzen 7 3800X、Ryzen 7 3700Xのスコアは拮抗しているが、前世代のRyzen 7 2700Xと比べて大きく進歩していることも改めて確認できる。ミドル~エントリークラスもやはりZen 2アーキテクチャのRyzen 5 3600X、3600の強さだけが目立つ結果だ。(TEXT:鈴木雅暢)
【検証環境】
[AMD環境]マザーボード:ASUSTeK ROG Crosshair VIII Hero(WI-FI)(AMD X570)、メモリ:G.Skill F4-3600C16D-16GTRG(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※第3世代RyzenはPC4-25600で動作、第2世代RyzenはPC4-23400で動作)、[Intel環境]マザーボード:ASUSTeK ROG MAXIMUS XI HERO(WI-FI)(Intel Z390)、メモリ:Micron Ballistix BLT2K8G4D26AFTA(PC4-21300 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※Pentium/CeleronはPC4-19200で動作)、[共通]ビデオカード:ASUSTeK ROG-STRIX-RTX2080TI-O11G-GAMING(NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti)、SSD:GIGA-BYTE AORUS GP-ASM2NE6200TTTD[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB ※Intel環境ではPCI Express 3.0 x4動作]、電源:Corsair RMx Series RX1000x(1,000W、80PLUS Gold)、CPUクーラー:Corsiar Hydro Series H115i PRO RGB(簡易水冷、28cmクラス)、OS:Windows 10 Pro 64bit版、アイドル時:OS起動10分後の値、CINEBENCH時:CINEBENCH R20実行時の最大値、3DMark時:3DMark-Port Royal実行時の最大値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO
PCとしての総合性能はIntelが優位
UL BenchmarksのPCMark 10は、PCの総合性能を見るテストだ。実際のアプリを使い、三つの項目でスコアを出す。「Essentials」はWebブラウズやアプリの起動、ビデオチャットなど基本的な操作が中心。「Productivity」は、オフィス系アプリを複数利用しての作業をシミュレートする。「Digital Content Creation」は、写真や動画編集などコンテンツ制作業務を想定した内容だ。
ハイエンドクラスでは、Core i9-9900KがRyzen 9 3900Xを上回った。項目別に見ると、クリエイティブ系のDigital Content CreationではRyzen 9 3900Xがよいが差はわずか。クリエイティブと言っても12コア24スレッドの超メニーコアを活かせるほどのヘビーな内容はあまりないのだろう。Productivityで少し差が付いており、総合スコアの差もこれが影響しているようだ。
アッパーミドルでもやはりIntelのCore i7-9700Kが強い。項目別で見ると、すべての項目でRyzen 7 3800Xを上回っている。一番差が大きいのはやはりProductivity。クロックが高いほうがよいスコアが出やすい傾向にあるようだ。Digital Content CreationでもCore i7-9700Kが第3世代Ryzenよりも上を行っている。
ミドル~エントリークラスは微妙なところ。総合スコアではRyzen 5 3600X、3600がCore i5-9400Fを上回る。項目別ではProductivityのみは9400F、ほかは第3世代Ryzenが強い。メニーコアがある程度活きるクリエイティブ系だけでなく、ライトユース中心のEssentialsでもよいスコアが残せるのが第3世代Ryzenの強みと言える。
ゲーム性能No.1はCore i9-9900K
3DMarkでゲーム向けの性能を比較した。テストはGeForce RTX 2080 Ti搭載カードを搭載した環境で実施している。「Fire Strike Ultra」はDirectX 11ベースの4K解像度でのテスト。「Time Spy Extreme」はDirectX 12ベースでの4K解像度のテスト。CPUテストではSSE3のほかAVX系命令も利用する。「Port Royal」はDirectX Raytracing(DXR)対応のテスト。金属製の戦闘機や壁面に反射で映っている像がカメラワークに合わせてゆっくり動くなど、リアルタイムレイトレーシングならではの内容だ。
全体にPort Royalでは差がほとんどないが、これにはCPU向けのテスト項目が用意されていないことが大きい。これで落ち込みが見られるCeleronは、CPUがGPU描画のボトルネックになっていると判断できる。Ryzen 5 3400Gも若干低いスコアだが、これはPCI Expressのレーンが少ない(x8接続)点が影響していると思われる。
Fire Strike Ultra、Time Spy ExtremeはCPU向けにゲームの物理演算を素材としたテストが用意されている。とくに後者はスコア算出の比重も大きく、CPUのマルチスレッド性能がスコア差に反映されやすい。
Time Spy Extremeのスコアを見ると、Ryzen 9 3900XがCore i9-9900Kにはっきりとした差を付けて勝っている。ただ、Core i9-9900KはほかのテストではRyzen 9 3900Xに勝っており、総合的なゲーム性能ではやはり最上位の存在と言ってよいだろう。また、実ゲームでの性能についてはゲームの作りしだいの面もあるので、今後の各タイトルの対応に注目したい。
電力管理機能はIntelに一日の長
最後にシステム全体の消費電力を比較した。高負荷時はCINEBENCH R20と3DMark(Port Royal)の2種類のピーク電力を比較している。後者はビデオカードの消費電力の比重が大きいが、運用時の電力の目安として掲載した。純粋なCPUの電力比較については、ほぼCPUのみに高い負荷がかかるCINEBENCH R20だけを見れば十分だろう。
全体として目に付くのはRyzenシステムのアイドル時の電力の高さだ。X570マザーボードはPCI Express 4.0に対応していることから消費電力は高い傾向にあり、とくに今回はハイエンドクラスの製品を使っているためよけいに目立つのだろう。プラットフォームを含めた電力管理機能の面では熟成の余地が大きくあると感じさせられる。
第3世代Ryzenの高負荷時の電力効率については、第2世代のRyzen 7 2700Xを基準にすると明らかに改善が見られる。圧倒的な性能を誇るRyzen 9 3900XはRyzen 7 2700Xと大差ない電力だ。ただ、あくまでもパフォーマンスのわりには抑えられているという程度で、特別に省電力ではない。とくにRyzen 7 3700XやRyzen 5 3600の電力は、65WというTDPからするともの足りなく感じる。アクティブコア別の制限がないブースト機能の特性によりピーク電力が高く出やすいという事情はあるが、それを考慮しても65Wという値から抱くイメージとは差がある。Intel CPUもハイエンドは高めの数値ではあるが、電源プランが高パフォーマンスでもアイドルになるとすぐに電力が落ちていく。ミドルレンジ以下は性能の低さもあるが、省電力では明らかに優位が感じられる結果だった。
DOS/V POWER REPORT 2019年秋号では、「自作の王道をぶっ壊せ! 第3世代Ryzenインパクト!!!」と題した特集を掲載しています。本記事をはじめ、IntelとAMD CPUの多角的比較、第3世代Ryzen対応マザーボード紹介やRyzen PC組み立て講座などなど、Ryzen自作関連記事を多数掲載しています。