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NEC、パスポートを1度も見せず搭乗可能にする生体認証技術
2018年4月18日 17:20
NECは18日、同社の生体認証技術についての記者説明会を開催。説明会には執行役員の田熊範孝氏が登壇し、説明を行なった。
同社の生体認証は「指静脈」、「指紋/掌紋」、「虹彩」、「顔」、「声」、「耳音響」の6つの要素で認証でき、それらの生体認証技術を「Bio-IDiom(バイオ・イディオム)」としてブランド化し、市場に提供する。
田熊氏は、2020年の全世界人口の77億人に対し、IoTデバイスの数は304億個まで増加するとの予測を挙げ、それらに搭載されていることを考えれば、センサーは1兆単位の数になると説明。これによってヒトとモノに膨大な接点が生まれ、止められないデジタル化の波が起こる。
そのデジタル化の波によって起きるのは、生産性の向上や、思わぬ競合の登場といった変化で、デジタルがゲームチェンジの波を起こすと説明した。
NECでは、デジタルトランスフォーメーションを「ヒト/モノ/コトに新たな意味性を付与するもの」として考え、現実世界の事象を見える化してサイバー世界に持ち込み、分析を行ない、得られたものを現実世界に還元するというサイクルで価値を創造すると述べた。
NECの生体認証技術は、同社の掲げる「Safer Cities」構想の核となるもので、犯罪者指紋照合や出入国管理、市中映像監視といった「パブリックセーフティー」、なりすまし防止や詐欺検知、市民サービス向上などの「デジタル政府」、チケットレスや個別サービス、One IDといった「スマートトランスポーテーション」分野での活用を見込んでおり、ひいてはヘルスケアや働き方改革といったシーンでも利用を想定しているという。
田熊氏は、「デジタル世界はなりすましなどリスクを含んでいる世界とも言える」と説明し、生体認証は実世界からデジタル世界への入り口になるもので、安心して誰もがデジタルを活用できる世界を実現すると語った。
同社の認証技術の歴史は、1960年に郵便の宛名読み取りのためのOCR技術を開発したところから始まったもので、指紋認証や静止画顔認証、動画での顔認証で、NIST(米国立標準技術研究所)のコンペティションでトップに輝き、田熊氏は世界最高の認証精度を誇っていると説明した。
すでにNECの生体認証はグローバルに展開しており、70カ国以上で700システム以上が導入されており、とくに空港での利用は多く、世界50カ所の空港で利用されているという。
そういった事情から、飛行機の搭乗プロセスで、パスポートチェックを不要にするだけでなく、スムーズな乗客呼び出しといったパーソナライズされた空港サービスの提供や、空港外でのホテルのウェルカムサービスなどのスムーズな利用を実現できる、One IDプラットフォームといったかたちの活用イメージが示された。
Bio-IDiomでは、顔や指紋、虹彩といった複数の認証要素を組み合わせることで、より「マルチモーダル認証」も提供される。
生体認証は、指紋や静脈などは高精度な認証を行なえるが、接触式のセンサーが必要となるため読み取り不良が発生したり、顔認証はユーザーに意識させず認証が可能で利便性が高いが、認識精度では指紋に劣るといったように、それぞれ利点と欠点がある。それらを組み合わせることで、使いやすく高精度/高セキュリティな認証を実現するという。
また、生体認証と群衆行動解析や遠隔視線推定といった映像分析を組み合わせ、意味付けを行なうことで新たな価値の創出も実現するとした。
技術デモでは、生体認証は、物理的な鍵を渡さずに信用しあって共有でき、証明書不要でサービスを受けられ、瞬時の認証で待ち時間なく、忘れることがない証明情報のため安心/安全なことから、「わたさず・もたず・またず・わすれない」という特徴があると説明が行なわれた。
耳音響認証は、そのほかの認証技術と異なりまだ試験段階の技術だが、ノールックかつハンズフリーで認証できるのが特徴。
イヤホンを装着させておけば、常時/都度認証が可能という点に優位性があるという。例としては、要人護衛のSPなどに装着すれば、常に認証しつづけることで、なりすましなどを防ぐことができる。
また、認証音は可聴音から可聴域外の音まで、無数に作成でき、その認証音によって特徴量も変化するため、IDとパスワードのような運用や、ワンタイムパスワードといった運用が可能だという。