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あこがれの真空管アンプキットか?先進のラズパイオーディオか?
~低価格・高音質オーディオDIYは新旧世代ともおもしろい!
2018年2月9日 06:00
あれこれ経験を積むと“濃い趣味”に走りたくなるのが男というもの。「買ったほうが安くない?」、「なんでわざわざ自分で作るの?」と、ごもっともなことを言われても、そこにこそ魅力を感じてしまうのだから仕方ない。
1月27日発売のDOS/V POWER REPORT 3月号では「特集 最新か、クラシックか。 男の趣味と生活を変えるモノ」と題し、料理、コーヒー、オーディオDIY、日曜大工などの7つのジャンルにおいて、こだわりのアイテムを紹介する。各ジャンルでは先進的なアイテムと伝統的なアイテムをセレクトし、新旧それぞれの手法で異なる味わいを楽しむ。
ここではその中から、男子であれば一生に数度はハマるというオーディオの世界をテーマに、DIYのスタイルを紹介。ほのかな灯りの揺らめく「真空管アンプ」のDIYと、スナップインで手軽な「ラズパイオーディオ」のDIYを紹介しよう。
TEXT:ゴン川野
オーディオDIYの誘惑その1:虜になったらもうオシマイ! 心地よい真空管のゆらぎの音 ※大
世の中は音楽であふれているが、本当に心地よい音を奏でるオーディオ機器は意外に少ない。朝目覚めたとき、帰宅してくつろぎたいとき、寝る前のひとときにリラックスして聴ける。それが真空管アンプの音である。なめらかで艶やか、それでいてダイナミック。完成品は高価だが、キットなら手に届く価格の製品が見付かるに違いない。
温かくなめらかな音がする“真空管”とは?
そもそも半導体が発明される以前は多くの機器に真空管が使われていた。最初は通信用として、それから増幅用にも使われるようになった。増幅用途に使われる真空管の仕組は、真空中の陰極(カソード)、またはフィラメントを熱して熱電子を飛び出させ、プレートで捕獲する。その間に電子の流れを制御するグリッドを配置して電気信号をコントロールする。これが3つのパーツから構成される三極管である。真空管が赤く光るのは灼熱するまでヒーターを熱しているからなのだ。
三極管から五極管、ビーム管などが生まれ、さらに進化するにつれて小型化を続けてきた。もちろんオーディオ用としても使われ、小出力なら三極管のシングル、大出力を得るためにビーム管をペアで使うプッシュプルと呼ばれる構成が使われた。近年になって複合管と呼ばれるタイプが登場。これは三極管と五極管を1本にまとめたもので、2本あればステレオアンプが作れる便利なものだ。今回作成するキット「KA-08SE」にも「16A8」という複合管が使われている。
真空管アンプはトランジスタアンプに比べて、軟らかい、温かみがある、なめらかなどと言われているが、その科学的根拠は明らかではない。あなたの手で作って、自分の耳で確かめてみてほしい。
玉ころがしとは?
真空管は世界各国で作られたため、同じ規格であっても型番が違うものが数多く存在する。現在では、チェコやロシア、中国が主な生産国だが、以前は日本、イギリスやアメリカ、ドイツなどでも作られ、そのメーカーもさまざまだった。有名な真空管には互換品が多く存在し、おもしろいことに挿し換えることで音色が変化する。これを利用して好みの音を追求するのが“球ころがし”である。「16A8」も日本を含む複数の国で作られたことがあり、球ころがしが楽しめる。
キットを組み立てる
真空管キットの音質は?
ゴン川野:NFB(負帰還)をかけているので解像度が高く現代的な音だ。中低域もこもらずクッキリ。それでいて女性ボーカルは艶やかで心地よい。能率の高いフルレンジスピーカーをバックロードホーンに入れて鳴らすと最高だ。出力2W+2Wだが8畳間までいける
編集部 出町 学:音がなめらかで液体(?)っぽい、かつ暖かい感じを受けた。真空管の音は初めてだが、どうしてこういう表現をしたくなるのか、自分でも不思議だ(笑)
【検証環境】スピーカーボックス:FOSTEX スピーカーボックス P1000-BH、ユニット:FOSTEX FF105WK、DAP:A&ultima SP1000、スピーカーケーブル:ORB INNOVA TS7、ラインケーブル:ORB Clear force mini to RCA
オーディオDIYの誘惑その2:スナップインで簡単高音質! 手軽な高音質はラズパイオーディオが正解!
ワンボードコンピュータの「Raspberry Pi」に「HAT(Hardware Attached on Top)」と呼ばれるドーターカードを合体させると、簡単にハイレゾ対応オーディオ機器が完成する。スマホのWebブラウザから操作でき、その音は専用機に引けを取らない。これはもう立派なネットワークプレイヤーなのである。
Raspberry Piにカードを載せて専用OSを入れればオーディオ再生機の完成
オーディオの鉄則に音質改善は上流からという言葉がある。音の出口となるスピーカーが下流で、上流はかつてレコードプレイヤーだった。それがCDプレイヤーとなり、現在はデジタルデータで、これを保存・再生するのはPCとUSB/DACが定番となっている。音楽用のNASやSSDなども製品化され、デジタル領域での高音質化が追求されている。アナログ機器は大きくて重いほど高音質とされてきたが、デジタル機器は一味違う。集積度を高め、回路をコンパクトにまとめることでジッタの影響を最小限にするという手法がある。
そこで注目されたのが“ラズパイ”と呼ばれる「Raspberry Pi」である。ワンボードでオーディオ入出力に対応し、拡張基板でDACやアンプを実装できる。超コンパクトなデジタル再生システムが2枚の基板で実現できるのだ。ラズパイを使えば従来のオーディオシステムを簡単にハイレゾ対応にできる上、デスクトップオーディオを手軽に高音質化できると注目を集めている。従来のネットワークプレイヤーの役割をラズパイが果たしてくれるわけだ。HATと呼ばれる拡張基板の交換で高性能化や機能変更にも柔軟に対応できる。ハイコスパで手のひらサイズ。そんな夢のような基板が登場したのだ。オーディオマニアも注目のラズパイで再生するハイレゾ音源の音を、この機会にぜひ体験していただきたい。
ラズパイオーディオDIYのメリット
- 用途に応じた拡張カードを使える
- 好みの音質のDACを選択できる
- ソフトウェアの設定で音質を変更できる
IQaudIO Pi-DAC PROでDACを自作する
メーカー | 製品名 | 実売価格 | 個数 |
---|---|---|---|
Raspberry Pi財団 | Raspberry Pi 3 Model B+ | 6,000円前後 | 1個 |
IQaudIO | Pi-DAC PRO | 6,500円前後 | 1個 |
スイッチサイエンス | ラズパイ3に最適なACアダプター 5V/3.0A USB Micro-Bコネクタ出力 | 1,400円前後 | 1個 |
ノーブランド | 端子(Pi-DAC PRO付属) | - | 2個 |
ノーブランド | ネジ(Pi-DAC PRO付属) | - | 4個 |
ノーブランド | スペーサ(Pi-DAC PRO付属) | - | 4個 |
Pi-DAC PROはRaspberryPi対応の拡張基板なので、ラズパイ基板上に重ねて40ピンを結合させ、四隅をネジ止めすれば完成。ラズパイ側に電源を接続するとLEDが点灯してPi-DAC PROも起動する。
あとはOSとオーディオプレイヤーソフトをラズパイにインストール。プレイヤーの操作は無線LAN接続したスマホかタブレットからWebブラウザを使って行なえる。音楽データを保存したUSBメモリを挿入すれば認識された楽曲が表示され、デジタルオーディオプレイヤー感覚で選曲、再生、停止などの操作をできる。
セットアップから再生まで
Raspberry Piの音はどう変わった?
ゴン川野:Pi-DAC PROでは、まず音量が大きくできる。30まで上げれば大音量。ダイナミックレンジが広く、解像度が高くて粒立ちのよい音。高域も伸びている。【検証環境】ヘッドホン:Philips Fidelio X1、ヘッドホン:FitEar Air2
編集部 出町学:本体のオーディオ端子にイヤホンを挿して聞くと、素人耳でもプチプチと雑音が認識できる。一方Pi-DAC PROの端子はクリアで躍動感ある楽しい音。
【検証環境】イヤホン:オーディオテクニカ ATH-LS70
DOS/V POWER REPORT2018年3月号「特集 最新か、クラシックか。 男の趣味と生活を変えるモノ」では、以下のジャンル80ページにわたって取り上げています。
- 1杯のコーヒー”を楽しむ全自動コーヒーメーカー & ハンドドリップ
- 火と煙で味を作る“ロースト&スモーク” ロティサリーグリル & スモーカー
- 安価で刺激的な“オーディオDIY” ラズパイオーディオ & 真空管アンプキット
- 個性的な写りを楽しむ。一眼カメラでハマる“レンズ沼” 他社マウントAFレンズ & オールドレンズ
- ブロック感覚で楽しむイマドキの“日曜大工” 2×4パーツ & スチールパイプ
- ミドルエイジこそ気にしたい“オトコの身だしなみ” 新スタイル電気シェーバー & 高級安全カミソリ
- 使うほど愛せる大人の“革小物” レーザー彫刻 & レザークラフト