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2017年の電子情報産業の世界生産額は前年比6%増の2兆7,401億ドル
~好景気は2020年まで続く見込みとJEITA会長
2017年12月19日 13:58
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)は、12月19日に同社団法人のオフィスにおいて記者会見を開催し、同社団法人が毎年発表している電子情報産業の世界生産額の見通しを発表した。
JEITAによれば、2017年の電子情報産業の世界生産額は2兆7,401億ドルと対前年比で6%増加しており、このプラス成長は2018年も対前年比4%増で成長が続く見通しだと、同社団法人のメンバー企業への聞き取り調査などで明らかになったという。
JEITA代表理事/会長 長榮周作氏(パナソニック取締役会長)は「日系企業の生産額は38兆5,403億円を見込んでおり、スマートフォンの高速化、自動車の電装加工場による電子部品、デバイスの成長が今後も見込まれ、2018年も2%のプラス成長となる見通し、この右肩上がりは2020年の東京オリンピックまで続くだろう」と述べ、日本の電子情報産業が引き続き成長をしていくという見通しを明らかにした。
グローバルに6%成長、日本企業も5%成長と活況を呈している2017年の電子情報産業
JEITAの記者会見で説明に立った長榮会長は「今年(2017年)のJEITAは会員制度を変更し、従来の電機という括りからIoTなどへも枠を広げ、トヨタ自動車やソフトバンクといった従来のJEITAの枠には入らない企業にも参加して頂いており、385の企業と団体から構成されている」とJEITAが従来の電機メーカーの集まりという特徴から、より後半に電子情報産業へとウイングを広げていったと説明した。
長榮氏は、例年JEITAが公開している「電子情報産業の世界生産見通し」について説明した。この「電子情報産業の世界生産見通し」は、2007年からJEITAが会員企業に聞き取りしてまとめているデータ集で、電子情報産業(半導体、AV機器、通信機器、コンピュータおよび情報端末、電子部品、ディスプレイデバイス)などの生産額の推移を、グローバルに、そして日系メーカーの括りで推計したものとなる。
「世界生産見通しは、ドルベースで過去最高を更新する見通し。2017年は前年度6%増加した2兆7,401億ドル。2018年も前年比4%増となる2兆8,366億ドルを見込んでいる、世界経済の成長が加速するなか、生産性向上などのIT投資が拡大し、IoTなどを中心としたソリューションへの投資が続く」と述べ、グローバルな電子情報産業が3年連続の成長を続けていくという見通しを明らかにした。とくに成長しているのが、半導体やディスプレイデバイスなどで、それらが過去最高となり、成長の後押しをしているという。
このうち日本企業は「生産額38兆5,403億円と前年比5%増となっている。スマートフォンの高度化、自動車の電装化、電子部品の生産が増えている。これは来年も続く見通しで、2018年は前年比2%増の39兆2,353億円になる見通しだ」(長榮氏)と、日本の電子情報通信関連企業も成長を続けており、その傾向は2018年も続く見通しだと説明した。その上で長榮氏は「今後は2020年に向けてIoT(Internet of Things)やデバイスなどへの投資で継続した成長が望まれる」と述べた。
なお、この調査の詳細に関しては、冊子の形で配布しており、詳しくはJEITAのWebサイトでご確認頂きたい。
IoT市場は2030年には2016年の倍になると予想、とくに家庭・個人向けが大きな市場になる
また、JEITAはCPS(Cyber Physical System)やIoT(Internet of Things)の利活用分野別の世界市場調査の結果についても公表した。長榮氏は「2016年に世界では194兆円、日本では11.1兆円の市場だと推計されている。しかし、2030年には世界で404.4兆円、日本では19.7兆円とそれぞれ約2倍に成長する見通し。とくに世界市場で一番大きな市場になると予想されているのが家庭や個人向けなどで、今年はスマートスピーカーなどが話題になった」と述べ、CPS/IoT市場で戦って行くには課題解決が重要であり、今回の調査では利活用シーンを見据えた詳細な調査を行なったと説明した。
また、今年の10月に行なわれたCEATEC Japanに関しても振り返り「Society 5.0をテーマに据え、家電の新製品だけでなく従来の枠を越えるような革新的なものになった。新規出展は327にもなり、来場者数も5%増え、1日平均は2009年以来初めて3.2万人を越えた。来場者の属性も変わりつつある」(長榮氏)とCEATEC Japanが新しい時代を迎えたことを強調した。なお、来年(2018年)のCEATEC Japanは2018年の10月16日(火)~10月19日(金)の日程で行なわれる予定だ。
最後に、長榮氏は「IoTの推進を目指す税制措置が、与党の2018年度税制大綱の中に入ったことは関係者の努力に感謝したい。そうした政策措置により、あらゆる産業の付加価値が高まることを期待している。また、TPP11の大筋合意、日EUのEPA合意なども大きな意味があり、世界の産業界と協力して自由貿易を世界に発信していきたい」と述べ、政府与党の政策などについて期待感を表明した。
記者会見終了後には質疑応答が行われた。以下はその模様だ。
Q:日系メーカーのシェアは従来は2割だったのが今は13%程度に減っている。今後どうしたらシェアが伸びていくか。
長榮氏:どんな分野でシェアをあげていくかだが、ビッグデータ、IoT、AIなどが密接に絡み合っており、中身が変わっている。JEITAの中にもスマート部会を作ったりして対応している。
来年も含めて、世界的には右肩あがりで成長が続いており、概ね順調に推移すると予想されている。2020年のオリンピックまでは右肩あがりで推移するのではないかと考えている。
Q:先日4K放送が始まるイベントで、野田総務大臣からユーザーへの周知徹底をして欲しいという要望がでていたが…
長榮氏:来年の12月1日から衛星放送で4Kが始まる1年前ということでイベントがあって、そこには私も出席させた頂いた。最大の問題はチューナの問題で、今の4Kテレビは外付けのチューナをつけないと4K放送を見ることができないが、今後発売される製品はチューナが内蔵される。そういうことが周知徹底されていないという話しだと思う。今後は売り場などで啓発活動をやっていかなければならないと考えている。ただ、4Kテレビの普及というのも、テレビはなかなかすぐは壊れないという側面もあるので、4Kテレビの綺麗さなどを訴求していく必要があると考えている。
今、いつ対応チューナを内蔵したテレビが発売されるのかということは言及できないが、おそらく夏以降に各社販売してくるのではないだろうか。それを見据えて買い控えが起こるのではという懸念もあるが、外付けチューナを安価に提供していく、そいうことも考えて4Kテレビを販売していかなければならないだろう。
Q:AIについてはどのような取り組みを行っているか?
長尾尚人氏(JEITA 代表理事/専務理事):AIに関してもさまざまな取り組みを行なっている。たとえばIoTの部会で、IoTをどうやって使っていくのか、それに関連する企業にも部会に入って頂いている。とくに、ディープラーニングを得意とするベンチャー企業の取り組みが重要になってくるので、そうしたベンチャー企業にもJEITAに入ってもらい、今ではJEITAの正会員となる企業も増えている。AIを得意とするベンチャーとセットメーカーの出会いの場としてJEITAを使って欲しい。
Q:自動車の自動運転や電動化で、自動車メーカーと電機メーカーの提携も進んでいる。そこをどう考えるか?
長榮氏:これまで電機メーカーは、ティア1、ティア2という自動車のサプライヤーのエコシステムの中でティア2として関わってきており、ティア1に納品するというポジションだった。日本メーカーは電子部品やデバイスに関しては小型、薄型、省エネなど他メーカーに比べて優勢を持っており、そのあたりを武器にしてやっていかないといけない。
自動車メーカーと電装メーカーの連携に関しては各社の都合もあるとは思うが、今後も増えると思う。個社と個社ではなく、複数社の連携が増えるのではないだろうか。