西川和久の不定期コラム
Acer「Aspire Switch 10E SW3-013-N12D/WF」
~Atom Z3735Fを搭載し、4万円からの10.1型2-in-1
(2015/5/30 06:00)
日本エイサーは5月20日、Atom Z3735Fを搭載した10.1型2-in-1「Aspire Switch 10E SW3-013-N12D/WF」を発表、6月4日から販売を開始する。価格はオープンプライスで、キーボードドックHDD非搭載モデルは店頭予想価格4万円前後とかなり安価に設定されている意欲的なマシンだ。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
テントモードなど4つの形態に対応
大きく分けて2モデルあり、キーボードドックは標準装備。そのキーボードドックに一方は500GBのHDDを内蔵し、Office Home and Business 2013が付属する「型番末尾D/WF:本体色ホワイト」、もう一方はHDD無しでKINGSOFT Office 2013の30日体験版が付属する「型番末尾P/W:ホワイト」、「同P/K:シャークグレー」となる。これからも分かるように、HDD搭載モデルのカラーバリエーションはホワイトのみ。HDD非搭載モデルのカラーバリエーションは、ホワイトとシャークグレーの2色となる。
店頭予想価格は、前者が55,000円前後、後者が40,000円前後。8型/2GB/32GBタブレットがおおよそ20,000円前後なので、8型タブレットと比較するとディスプレイが2型分大きく、キーボードドックが付き、ストレージ容量が64GBあることを考慮すると、なかなかリーズナブルな価格と言えよう。今回編集部から送られてきたのは、HDDありのモデルだ。主な仕様は以下の通り。
Acer「Aspire Switch 10E SW3-013-N12D/WF」の仕様 | |
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SoC | Atom Z3735F(4コア4スレッド、クロック 1.33GHz/1.83GHz、キャッシュ 2MB、SDP 2.2W) |
メモリ | 2GB(DDR3L-RS 1333) |
ストレージ | eMMC 64GB/HDD 500GB(USB 2.0接続) |
OS | Windows 8.1 with Bing(32bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics、Micro HDMI |
ディスプレイ | 10.1型IPS式1,280×800ドット(光沢あり)、10点タッチ対応 |
ネットワーク | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | Micro USB 2.0、microSDカードスロット、音声入出力、200万画素前面/背面カメラ、キーボードドック側にUSB 2.0 |
サイズ/重量(本体) | 約262×180×10.95mm(幅×奥行き×高さ)/約630g |
厚み/重量(ドッキング時) | 約25.75mm/約1,280g(HDD内蔵モデル) |
バッテリ駆動時間 | 約12時間(2セルリチウムイオン/8,060mAh) |
店頭予想価格 | 55,000円前後(500GB HDD内蔵、Office Home and Business 2013付属) |
プロセッサはAtom Z3735F。4コア4スレッドでクロックは1.33GHzから最大1.83GHz。キャッシュは2MB、SDPは2.2W。ここ約半年扱った中では最も登場回数が多く、MVPに相当するSKUと言える。末尾がF型番なのでメモリは2GB。ストレージは少し多めでeMMC 64GBを搭載。加えて500GBのHDDをキーボードドックに内蔵。OSは32bit版Windows 8.1 with Bingだ。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics。外部出力用としてMicro HDMIを装備している。ディスプレイは10.1型IPS式1,280×800ドット(光沢あり)で10点タッチ対応。解像度に関しては、8型でもフルHDの製品があることを考えると、価格相応となるだろうか。
インターフェイスは、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0、Micro USB 2.0、microSDカードスロット、音声入出力、200万画素前面/背面カメラ。キーボードドック側にUSB 2.0を搭載している。本体側のMicro USB 2.0は充電用だが、キーボードドック側にUSB 2.0ポートがあるので、さほど不便はないだろう。
付属のキーボードドックは磁石を使った着脱式だ。ノートモード、タブレットモード、ディスプレイモード、テントモードの4形態に変身することができる。ただこの仕掛けは、ヒンジ自体が360度回転するのではなく、必要に応じてパネルを裏表付け替えることによって実現している。
本体のサイズは、約262×180×10.95mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約630g。ドッキング時の厚みは約25.75mm、重量約1,280g(HDD内蔵モデル)、もしくは約22.85mm/約1,200g(HDD非内蔵モデル)となる。本体側に2セルリチウムイオン/8,060mAhのバッテリを内蔵し、バッテリ駆動時間は最大約12時間。
本体の天板はプラスチック製。このため高級感があるわけでもないが、キーボードドックの裏も含めホワイト、その他がブラックでまとめられ、なかなかカッコよく仕上がっている。本体のみだと実測で631gとそれなりに軽い。
キーボードドックの重量は実測で613g。磁石を使った着脱式で非常に扱いやすい。ドッキング時は実測で1,244g。あまり軽くないように思うが、実はこれでもギリギリでバランスを取っている。
と言うのも、ノートモードで置いた場合、ある程度までパネルを傾けると、本体とキーボードドックのバランスが崩れ後ろに倒れてしまうのだ。おそらくHDD非搭載モデルだと倒れるタイミングがもう少し早くなると思われる。バッテリを内蔵して重くすれば耐えられる角度は増えるだろうが、合計でこれ以上重くなるのも避けたいところ。絶妙なバランスの上に成り立っている。
ノートモード、タブレットモード、ディスプレイモード、テントモードの4形態に変身できる仕掛け……。一般的にこれを聞くとヒンジ部分が360度回転するように思うが、実は違い、先に書いたように、ヒンジ部分は100度程度に傾くのが最大で、パネルを裏表付け替えることによって実現している。2-in-1ならではの方法だが、そのままで変形できない分、少しだけ面倒だ。
本体液晶パネルの少し左側に200万画素カメラ。また液晶パネルの下、切れ目の部分の左右のスリットがスピーカー。下側面にドッキングコネクタ。裏は中央上部に200万画素カメラ。左側面にmicroSDカードスロット、音声入出力、Micro HDMI、Micro USB(充電用)。右側面に電源ボタン、音量±ボタン、Windowsボタンを配置。キーボードドックの右側面にUSBコネクタがある。付属のUSB式ACアダプタは、100~200V、5.35V/2A。サイズ44×40×25mm(同)、重量46g。
旧モデル「Aspire Switch 10」との違いは、旧モデルではキーボードドック着脱時に穴を見ながら場所を合わす必要があったが、その部分が改善され、簡単に着脱できるようになったのと、電源アダプタが専用からUSB式に変わったこと。文字にすると細かい部分だが、この2点で実際の使い勝手はだいぶ高まっている。
光沢ありの10.1型IPS式1,280×800ドット液晶パネルは、コストの兼ね合いなのか、明るさコントラスト、そして視野角が(実用上は差支えないものの)若干劣る感じだ。発色自体はニュートラルで写真も動画も問題ない。10点タッチもスムーズに扱える。
キーボードドックのキーボードは、アイソレーションタイプだ。10.1型のフットプリントなので、一般的なノートPCよりは全体的にキーピッチが狭く、実測で約18mm。[無変換]やファンクションキーなどは、さらに狭くもしくは小さくなっている。とは言え、たわむこともなく、キー自体はしっかり作られていることもあり、入力自体は非常にしやすい。
タッチパッドは物理的なボタンがない1枚プレートタイプだ。パッド自体の滑りもよく、画面の動きもスムーズ。キーボードも含め、価格を考慮すれば十分合格レベルと言えよう。
振動やノイズ、発熱に関しては、試用した範囲では、左裏が若干暖かくなる程度で、全く気にならない範囲に収まっている。サウンドはスリットのサイズからも分かるように、低音は出ないが、うまく筐体を振動させ、バランス自体は悪くない。また出力はこのクラスとしてはある方だろう。
Atom Z3735F搭載機としては平均的な性能
OSは32bit版Windows 8.1 with Bing。初期起動時のスタート画面は2画面。Acerアプリ以降がプリインストールとなる。デスクトップは、壁紙がSwitchエクスペリエンス(テーマ個別設定)でモードにより切り替わる。左側のショートカットは、abDocsなどab系が2つ、Acer Care Center、Acer Portal、Help and Supportなど、少し多めに並んでいる。また、powercfg/aで確認したところ、InstantGo対応だった。
ストレージはSSDがeMMCの「Hynix HCG8e」、HDDはUSB 2.0接続の500GB「WDC WD50 00LPVX-22V0T」が使われていた。SSDは、C:ドライブのみの1パーティションで約51GBが割り当てられ、空き46.8GB。回復パーティションは7GB。HDDはD:ドライブのみの1パーティションで約465.76GB。全て空きだ。HDDはUSB 2.0での接続なので速度的には期待できないものの、データ保管と考えればSSDのみよりも使い勝手は良い。
Wi-FiとBluetoothモジュールはRealtek製。またTP2.0や照度センサーを搭載しているのがデバイスマネージャーから見て取れる。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは、Acer Exploere、Evernote Touch、Filpboard、Music Maker Jamなど。
デスクトップアプリは、Microsoft Office、RtkGUI、abDocs、abFiles、abMedia、abPhoto、Acer Care Center、Acer Portal、Acer Quick Access、Acer Recovery Management、Acer Screen Frasp、Acer Touch Toolsなど同社のツール群、AVAST SecuireLine、Dropbox 15GB、マカフィー・リブセーフ・インターネットなどと多めだ。
abDocsやabFilesといった「ab」が付くソフトウェアは「Acer BYOC アプリ」と呼ばれるクラウドストレージベースのアプリケーションだ。スマホなどからも共有できる。
Acer Care Centerは、マイシステム/チェックアップ(バッテリ)/チューンアップ/更新/サポートなどに対応するソフトウェアだ。
Acer Quick Accessは、Wi-Fi/Bluetooth、Switchエクスペリエンス(テーマ個別設定/Acer SwitchLock/Acer BluelightShield/Acer LumiFlex/自動輝度調整/デスクトップにブート/ネットワークの共有)などの設定を簡単に行なえるパネル。Acer BluelightShieldはブルーライト軽減、Acer LumiFlexはコントラスト自動調整となる。
SwitchLockは、キーボードドックにHDDを内蔵している関係上、本体を外す時にHDDをロックする仕掛けのオン/オフができる。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。
winsat formalの結果は、総合 3.9。プロセッサ 5.7、メモリ 5.5、グラフィックス 3.9、ゲーム用グラフィックス 4、プライマリハードディスク 6.9。PCMark 8 バージョン2のHomeは1097。CrystalMarkは、ALU 19966、FPU 16074、MEM 17985、HDD 19890、GDI 4000、D2D 2889、OGL 2568。参考までにGoogle Octane 2.0は3,242だった。Atom Z3735F搭載機としては平均的なスコアだ。
スティックタイプPCを扱って以来、クロックの変動とプロセッサ温度の関係が面白いので、今回もPCMark 8 バージョン2のHome/詳細を掲載した。同じAtomプロセッサなのに結構動きが違い、特にバーストモードになるタイミングが少なく、演算のピーク時に一瞬上昇する感じだった。
BBenchは、ドッキングした状態で、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残4%で36,872秒/10.2時間(本体のみではバッテリの残4%で40,803秒/11.3時間)。HDDが接続されている割には10時間を超えた。これなら普通にノートPC替わりとしても十分使えそうだ。
以上のようにAcer「Aspire Switch 10E SW3-013-N12D/WF」は、Atom Z3735Fと10.1型IPS式1,280×800ドットでタッチ対応のパネルを搭載した2-in-1だ。10.1型と8型より大きいこともあってバッテリ駆動にも余裕がある。特に気になる点もなく、価格の範囲内でうまくまとめられた1台と言えよう。
Atom Z3735F/2GBなので、高い性能は望めないものの、ライトな用途で2-in-1を探しているユーザーにお勧めできる逸品だ。