ベンチで検証! CPUのキキどころ
Sandy Bridgeでまだ戦えると思っているあなたに
2020年7月4日 06:50
スマートフォンやPCなどコンピューティングデバイスでは、CPUやGPUはコア数が増え、SSDは速度が向上しつつ容量が増え、といった具合に、搭載される半導体がめまぐるしく進化している。
そのなかで、CPUについては、近年、進化が鈍化しているようにも見える。世代が変わっても、ぱっと見で見える製品ブランドが、たとえば「Pentium」だったり「Core i7」だったりするままというのもあるのかもしれない。しかし、じっさいには、世代が新しくなるについて、CPU自体、そしてプラットフォーム全体でも確実に性能が引き上げられている。
本連載では、ユーザーが普段利用するアプリを1つ1つ取り上げ、複数の世代にまたがったCPUを用いて、どれだけ性能に変化があるのかを検証していく。取り上げるソフトの種類は、ゲーム、ビデオ会議、動画編集、写真編集、3D CG、配信など。じっさいのベンチマーク結果は次回以降でご紹介していくとして、今回は基礎知識として、CPUの世代が変わるとともに、どのような点が改良されているのかを簡単にまとめる。
登場から12年間で10世代を重ねたIntelのCoreプロセッサ
Intelの主力CPUが「第10世代Coreプロセッサ」に代替わりした2020年は、Intelが「Core i」ブランドを導入してから12年目となる。この間、第9世代で最上位ブランドとなる「Core i9」が追加されたが、第1世代で確立された「エントリー向けのCore i3、ミドルレンジのCore i5、ハイエンドのCore i7」というブランドラインナップは、10世代12年に渡って現在でも継続している。
このため、「Core i7搭載PC」と言えば、最新の第10世代Coreプロセッサを搭載したPCから、12年前のCPUを搭載したPCまでが含まれることになる。Core i7はハイエンドクラスのCPUに与えられる製品ブランドではあるが、先に挙げた両者を同列に扱うことができないのは明らかだろう。現代のCPUを語るなら、製品ブランドは「製品の世代」とセットで語らねばならない。
それでは、同じ製品ブランドでも世代を重ねることで何が変わっていくのかを紹介していこう。
CPUの基本性能を高めるアーキテクチャの進化
CPUが世代を重ねていく中で進化していくのが、CPUコアの基本設計である「アーキテクチャ」だ。
初代Coreプロセッサに採用された「Nehalemアーキテクチャ」から、第10世代Coreプロセッサの「Comet Lakeアーキテクチャ」へと進化する過程で、演算ユニットやキャッシュといったCPUコア内部構造の変更による演算性能向上や、マルチメディア分野で広く利用されている拡張命令セット「AVX2」のサポートなど、CPUコアがより効率的に演算が実行できるように設計を改良してきた。
こうした改良により、仮に「同じコア数かつ同じ動作クロック」であったとしても、より新しいアーキテクチャを採用したCPUの方が高いパフォーマンスを発揮できるというわけだ。
世代を重ねて増加した「CPUコア数」
近年、CPUの基本性能を向上させるアーキテクチャの進化以上に、CPU世代間の差を拡大させているのがCPUコア数の増加だ。
たとえば、一世を風靡した第2世代Coreプロセッサ「Sandy Bridge」のCore i7は4コア8スレッドCPUだったが、最新の第10世代Coreプロセッサでは、Core i7は2倍のコア数を備える8コア16スレッドCPUとなっており、さらに上位のCore i9は10コア20スレッドを備えている。
CPUコア数の増加はマルチスレッド性能を向上させる。最新世代のCPUはアーキテクチャの進化によって「同じコア数かつ同じ動作クロック」でも高性能であり、最新世代CPUのマルチスレッド性能は単純なCPUコア数の差以上に大きなものとなる。
現在では、動画や3DCGのレンダリングのように処理の並列化の進んだアプリケーションだけでなく、ゲームなどでもCPUのマルチスレッド性能への要求が高まっており、コア数の多いCPUを使うメリット自体が以前よりも大きい。CPUコア数の増加は、ユーザーにとってメリットの大きな進化であると言えるだろう。
では、ゲームなどの重いアプリ意外では新しい、あるいはハイエンドなCPUは不要なのかと言えばそうではない。最近ビジネスで利用が増えているビデオ会議なども思いのほかCPUの負荷がかかったりする。このあたりは、この連載で検証結果をお伝えしていく。
世代を重ねてCPUの「動作クロック」も向上
近年のCPUは、世代を重ねるたびに動作クロックが向上している。CPUの回路は動作クロックと同期して稼働するため、動作クロックが高くなるほど時間単位の演算回数が増加し、演算性能が向上する。
どのくらいCPUクロックが向上しているのかと言えば、第2世代Coreプロセッサである「Core i7-2700K」の動作クロックが最大3.9GHz(定格時3.5GHz)であったのに対し、第10世代Coreプロセッサ「Core i7-10700K」では最大5.1GHz(定格時3.8GHz)に大きく向上している。
動作クロックはCPUのアーキテクチャが異なると数値での比較できなくなる指標なのだが、先に紹介したとおり、進化したアーキテクチャは「同じコア数かつ同じ動作クロック」で従来よりも高性能なので、より進化したアーキテクチャを採用しながら動作クロックも向上した最新世代CPUは、動作クロックの数値以上に高いパフォーマンスを発揮できるのである。
CPUとともにプラットフォーム自体も進化
以上のように、CPUはアーキテクチャの進化やコア数の増加、そして動作クロックの向上によって、世代を重ねるたびに高性能化しつづけているのだが、CPUの進化は演算を行なうCPUコアのみの進化に留まらず、CPUソケットを通じたプラットフォーム全体としても進化を重ねてきた。
現代のCPUは、CPUコア以外にも複数の機能をCPUパッケージに統合している。その中でもとくに進化してきたのがメモリコントローラとPCI Expressだ。
第1世代から第5世代までのCoreプロセッサの内蔵メモリコントローラはDDR3メモリに対応しており、メモリクロックは最大でもDDR3-1600までの対応だったが、最新の第10世代CoreプロセッサはDDR4メモリに対応し、最大でDDR4-2933動作をサポートしている。また、1枚で32GBの容量を実現するメモリモジュールにも対応しており、より高速かつ大容量のメモリシステムを構築可能となっている。
初期のCoreプロセッサは、1レーンで500MB/sのPCI Express 2.0をサポートしていたが、第3世代以降でCPU内蔵のPCI Expressが1レーンで1GB/sを実現するPCI Express 3.0にアップグレードされ、第6世代以降ではソケットを介して接続するチップセットでもPCI Express 3.0が提供されるようになった。
CPUに内蔵されたCPUコア以外の機能が進化するにつれ、CPUとCPUソケットを中心としたプラットフォーム全体の機能も進化しており、数GB/sクラスの速度を実現する高速なNVMe SSDが利用可能なM.2スロットや、有線LANと遜色ないほどの速度を実現するWi-Fi 6、USB 3.2 Gen 2のような高速インターフェイスがマザーボード上に搭載されるようになった。
こうした「足回り」と言うべきプラットフォームの進化は、GPUやSSDなどCPU以外の性能が快適性を左右し得る現代のPCにおいて重要なものであり、最新世代のCPUとそれに対応する最新プラットフォームを利用するメリットであると言えよう。
次回より新旧CPU 9モデルでの性能比較を順次実施
今回は、同じ製品ブランドのCPUであっても、世代を重ねることで内部構造や機能が改善されており、性能が向上していることを紹介した。
次回からは、その世代の違いによるCPUの性能差を新旧のCPU 9モデルを使ってアプリごとに検証していく。CPUの進化具合に興味を感じているユーザーはぜひチェックしてもらいたい。
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