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NEC PC「LaVie Desk All-in-one DA970」

~RealSense搭載の23.8型液晶一体型PC

NEC PC「LaVie Desk All-in-one DA970」

 NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)の2015年春モデルとして登場した「LaVie Desk All-in-one DA970」は、狭額縁筐体を採用した23.8型液晶一体型PCである。既報の通り、NEC PCは今回の春モデルからPCブランドを「LaVie」に一本化しており、製品カテゴリを示す文字が製品名に加わっている。

 「LeVie Desk All-in-one DA970」(以下、LaVie DA970)は、同社の液晶一体型PCの中でもフラッグシップとなるモデルであり、NEC PCの製品として初めてIntelの3Dカメラ「RealSense」を搭載していることが特徴だ。今回は、LaVie DA970を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。ただし、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や仕様、性能などが異なる可能性がある。

従来の3分の1以下の額縁幅を実現した狭額縁デザインの新筐体を採用

 まずはLaVie DA970の外観から見ていこう。LaVie DA970は、2014年秋冬モデルとして販売されていた23型液晶一体型PC「VALUESTAR N VN970」の後継となる製品だが、筐体が一新され、よりスタイリッシュなデザインとなっている。

 中でも目立つのが、狭額縁化である。額縁とは液晶の周囲の部分を指すが、額縁が狭いほど、同じ液晶サイズでも本体の幅や高さを小さくできるので好ましい。デザイン的にも、額縁部分が狭ければ、より画面が大きく感じられ、見た目も美しい。従来のVALUESTAR N VN970では、額縁部分(液晶周囲と液晶非表示エリア)の幅が約26mmであったが、LaVie DA970では幅が約8mmと、3分の1以下に縮小されている。その結果、VALUESTAR N VN970の本体サイズは、563×280×480mm(幅×奥行き×高さ、本体直立時)だったの対し、LeVie DA970の本体サイズは、544×220×435mm(幅×奥行き×高さ、本体直立/カメラ収納時)と、幅が19mm、高さが45mm小さくなっている。液晶サイズは、23型から23.8型にやや大きくなっているにもかかわらず、筐体は逆に小さくなっているのだ。

 また、スタンド部分が円形になり、設置場所を変えずにそのまま上下のチルトや左右のスイベルが可能になった。利用しないときには、キーボードを液晶の下に収納できるので、スペースも無駄にならない。

LaVie Desk All-in-one DA970の前面。額縁の幅が約8mmと狭いので、画面が大きく感じられる
チルト機構を搭載しており、液晶の角度を上下に変えることが可能。こちらは、液晶を垂直にした状態
こちらは、液晶面を一番上側に傾けた状態
左右に液晶を回転させるスイベル機能も備えている。こちらは、液晶面を右向きにした状態
こちらは、液晶面を左向きにした状態
液晶の下側には空間があり、使わないときにはキーボードを下に入れて収納できる

第5世代Coreプロセッサや4TB HDD、4チューナを搭載

右側面にBDXL対応のBDドライブを搭載する

 LaVie DA970は、NEC PCの液晶一体型PCのフラッグシップモデルだけあり、PCとしての基本スペックも高い。CPUとしては、Intel最新の第5世代Coreプロセッサ「Core i7-5500U」を搭載する。Core i7-5500Uは、開発コードネーム「Broadwell-U」と呼ばれていたCPUであり、TDPが15Wと低く、消費電力当たりの性能が高い。基本動作周波数は2.4GHzだが、自動オーバークロック技術のTurbo Boostによって最大3GHzまで向上する。

 メモリは8GBで、SO-DIMMスロットが1基空いているので、最大16GBまで増設が可能だ。ストレージは、3.5インチHDDで、容量は4TBと大容量。光学ドライブにはBDXL対応のBDドライブを搭載する。OSは、Windows 8.1 Update(64bit)で、Office Home & Business PremiumプラスOffice 365サービスもプリインストールされている。

 TV機能も充実しており、地上/BS/110度CSデジタルチューナを4基搭載。4番組同時録画が可能で、録画番組の再生時に番組本編だけを続けて再生する「見たいとこ再生」や、TVをオンにするときに視聴履歴から判断してその時間によく見るチャンネルに自動で切り替える「おはようマイチャンネル」、TVとTwitterを連携させる「つぶやきプラス」など、一般的なBD/HDDレコーダーよりも高機能であり、録画したい番組が複数重なっているとか、Twttierコメントを見ながら番組を見て、もっと盛り上がりたいといった人にお勧めだ。

広視野角のフルHD対応IPS液晶を搭載し、HDMI入出力を備える

 液晶ディスプレイとして、23.8型スーパーシャインビューLED IPS液晶を採用しており、解像度は1,920×1,080ドットである。IPS液晶は、視野角が広く、斜めから見ても色の変化が少ないことが利点であり、発色も美しい。狭額縁設計なので、横幅一杯に画面が表示され、画面がより広く感じられるのもうれしい。

 また、HDMI入力端子とHDMI出力端子の両方を備えていることも高く評価できる。最近は、HDMI入力端子を備え、BD/HDDレコーダーやコンシューマゲーム機などを接続できる液晶一体型PCも増えてきたが、HDMI出力端子も備えている製品は珍しい(下位のDA770は、HDMI入力端子のみ搭載)。LaVie DA970なら、HDMI入力端子にBD/HDDレコーダーやビデオカメラ、コンシューマーゲーム機などを接続して、本体の液晶に映像を表示できるだけでなく、LaVie DA970で録画したTV番組などをリビングの大画面TVで楽しむことも可能だ。本体上部の電源ボタンの隣には、HDMIと刻印された外部入力切替ボタンが用意されており、ワンタッチで外部入力に切り替えられる。なお、タッチパネルは搭載していないが、代わりにタッチパッド付きリモコンが付属する(詳しくは後述)。

 サウンドにもこだわっており、音質に定評のあるYAMAHAサウンドシステムを搭載。ウーファとヤマハサーボテクノロジーにより、迫力のある重低音が楽しめる。インターフェイスとしては、USB 3.0×3(内1ポートはパワーオフUSB充電対応)、USB 2.0×2、HDMI入力、HDMI出力、マイク/ヘッドフォン、Gigabit Ethernetを備えるほか、SDカードスロットも用意されている。ワイヤレス機能は、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LAN機能とBluetooth 4.0をサポートする。

LaVie Desk All-in-one DA970の背面。アンテナ端子や電源コネクタ、HDMI入力、HDMI出力、LAN、USB 3.0、USB 2.0×2が用意されている
背面のコネクタ部分のアップ
本体上部に、外部入力切替ボタンと電源ボタンが用意されている
YAMAHAサウンドシステムを搭載。ウーファとヤマハサーボテクノロジーにより、迫力のある重低音が楽しめる
左側面には、明るさ調整つまみ/画面消灯ボタン、USB 3.0×2(下側はパワーオフUSB充電対応)、SDカードスロット、miniB-CASカードスロット、ヘッドフォン/マイク端子が用意されている

利用しないときには背面に折りたためる3Dカメラ「RealSense」を搭載

 LaVie DA970のウリの1つが、Intelが開発した3Dカメラ「RealSense」を搭載していることだ。NECの一体型PCでRealSenseを搭載するのは、本製品が初となる。RealSenseモジュールは、RGBカメラ、赤外線カメラ、2Dカメラ、赤外線プロジェクタから構成されており、物体の深度情報(奥行き方向の情報)と画像を同時に取得することが可能だ。RealSenseを活用することで、手や指の動きや顔の表情などを読み取ることができるほか、皮下血管の動きも読み取れるので脈拍測定や感情判定にも利用できる。

 RealSenseは、量産が開始されたばかりで、対応アプリケーションはまだ少ない。しかしながら、IntelがRealSense対応アプリケーションの開発コンテストを実施するなどしており、今後対応アプリケーションの増加が期待できる。実際、市販ソフトウェアとして、サイバーリンクのカメラアプリ「YouCam RX」が登場しているほか、しくみデザインにより楽器演奏アプリ「KAGURA」も提供が行なわれている。また、RealSenseは、3Dスキャナとして利用することも可能であり、3Dスキャンによって得られた3Dデータを3Dプリンタで出力するといった使い方も考えられる。

 他社製品ではRealSense搭載に限らず、液晶上部のベゼル部分にWebカメラやRealSenseモジュールを実装していることが多いが、そうするとどうしても額縁部分が太くなってしまう。そこで、LaVie DA970では、カメラ部分にヒンジを付け、使わないときには本体背面に折りたたむことで液晶上部についても狭額縁を実現している。

 RealSenseは、通常のWebカメラとして使うことも可能だが、その真価を発揮するには、やはり対応アプリケーションが必要になる。LeVie DA970では、RealSense対応アプリケーションとして、ゲームアプリの「Intel RealSense Warrior Wave」とRealSenseの操作を体験するためのサンプルアプリ「Welcome to Intel RealSense 3D Camera」、ビデオチャットアプリ「Personify」がプリインストールされているほか、Welcome to Intel RealSense 3D Cameraから、RealSense対応アプリケーションを入手できる「RealSenseアプリショーケース」へのアクセスが可能だ。現時点では、このショーケースからダウンロードできるるアプリの数はまだ少ないが、近日公開となっているアプリもあるので、今後は拡充されるだろう。また、IntelのRealSenseページには、サンプルプログラムを含むSDKなどが公開されているので、それを試すこともできる。

 Warrior Waveは、RealSenseの前に手をかざすことで、その手の形が画面に現れ、その手を動かしてキャラクターをゴールまで運ぶゲームだが、手を傾けたり、指を立てたり、手の形や動きがそのままゲーム内で反映されるのは、未来感があって面白い。

 RealSense SDKには、顔の表情から感情を推測するサンプルや顔のパーツをトラッキングするサンプルなども含まれているのでそちらも実行してみたが、こちらも面白かった。Intelは、RealSenseをPCだけでなくタブレットにも提供していくとしており、RealSenseによって、これまでのPCやタブレットでは困難だった実世界指向インターフェイスやアプリケーションを実現できる可能性がある。

液晶上部に3Dカメラ「RealSense」を搭載する
RealSense利用中の様子。動作中は緑色のLEDが点灯し、右のプロジェクタから赤外線が照射される
RealSenseカメラを背面から起こし、また折りたたんで収納する様子
プリインストールされているRealSense対応ゲーム「Warrior Wave」をプレイしている様子
プリインストールされている「Welcome to Intel RealSense 3D Camera」では、RealSenseで何ができるかを体験できる
「Welcome to Intel RealSense 3D Camera」からアクセスできる「RealSenseアプリショーケース」
プリインストールされているビデオチャットアプリ「Personify」の画面
Personifyでは、深度情報を利用して、人物の背景を消すことができる
RealSense SDKに含まれているサンプルの1つ「Emotion Viewer」。表情から感情を推測することができる。この例だと、「SURPRISE」「POSITIVE」と判定されている
RealSense SDKに含まれているサンプルの1つ「Face Tracking」。顔の輪郭や目、鼻、口の位置などを検出できる
RealSence SDKに含まれているサンプルの1つ「Hands Viewer」。手の関節角度などを知ることができる

ワイヤレスキーボードとマウス、リモコンが付属

 キーボードとマウスはワイヤレス式で、ケーブルに煩わされることがない。ワイヤレスキーボードから本体の電源オン/オフが可能なのも便利だ。キーボードは、キーピッチ、キーストロークともに十分で、キー配列も標準的なので使いやすい。

 マウスはレーザー式で、机の材質を問わず利用可能だ。また、無線方式のリモコンも付属する。このリモコンは、表面が通常のボタン式リモコン、背面が大型タッチパッド搭載リモコンとなっており、側面のスライドスイッチで、どちらのモードで利用するかを変更できる。

 なお、電源はノートPCなどと同じく、ACアダプタ経由で供給される。

ワイヤレスキーボードが付属する。キー配列も標準的で使いやすい
ワイヤレスレーザーマウスが付属する。横チルト機能も搭載している
無線式のリモコンが付属する。表面にはボタンが多数用意されており、TV機能などの操作が可能だ
リモコンの背面は、大型タッチパッドになっており、Windowsの操作を行なうことができる
リモコンの側面に、モード切替用のスライドスイッチが用意されている
電源はACアダプタ経由で供給される

パフォーマンスも十分

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark 8」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」である。比較用として、NEC PC「VALUESTAR N VN970/NS」の結果も掲載した。なお、冒頭でも振れた通り今回試用したのは試作機であり、製品版とは性能が異なる可能性がある点はご了承いただきたい。

 結果は下の表に示したとおりで、PCMark 7は、ほとんどの項目でVALUESTAR N VN970/NSのスコアを上回っている。3DMarkやFINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編といった3Dグラフィックス系のベンチマークでは、逆にVALUESTAR N VN970/NSの方のスコアが高いが、LaVie DA970のCPUはデュアルコアなのに対し、VALUESTAR N VN970/NSのCPUはクアッドコアであり、同時に実行できるスレッドの数が倍違うことも影響しているのであろう。とはいえ、LaVie DA970の性能も、Windows 8.1を快適に使うには十分である。

LaVie Desk All-in-one DA970ベンチマーク結果

LaVie DA970VALUESTAR N VN970/NS
CPUCore i7-5500U(2.4GHz)Core i7-4700MQ(2.4GHz)
GPUIntel HD Graphics 5500Intel HD Graphics 4600
PCMark 7
PCMark score32652489
Lightweight score25212537
Productivity score19192041
Entertainment score28611652
Creativity score62666354
Computation score1422815290
System storage score20521959
Raw system storage score566508
PCMark 8
Home conventional2399未計測
Home accelerated2891未計測
Creative conventional2300未計測
Creative accelerated3388未計測
Work conventional2827未計測
Work accelerated3855未計測
3DMark
Fire Strike Ultra139未計測
Fire Strike Extreme258未計測
Fire Strike586611
Sky Diver2306未計測
Cloud Gate41415637
Ice Storm Extreme26979未計測
Ice Storm3645937861
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット 最高品質13131457
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)13471483
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)16771817
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)27093360
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)27493379
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード142.8MB/sec未計測
シーケンシャルライト134.9MB/sec未計測
512Kランダムリード32.48MB/sec未計測
512Kランダムライト74.60MB/sec未計測
4Kランダムリード0.333MB/sec未計測
4Kランダムライト1.163MB/sec未計測
4K QD32ランダムリード1.084MB/sec未計測
4K QD32ランダムライト1.193MB/sec未計測

TV録画機能やRealSenseの将来性を重視する人にお勧め

 LaVie DA970は、狭額縁デザインが魅力の液晶一体型PCであり、RealSenseや3波4チューナを搭載するなど、NEC PCの液晶一体型PCのフラッグシップモデルの名に恥じない高機能な製品だ。RealSenseが真価を発揮するのはまだこれからであろうが、しくみデザインの「KAGURA」やサイバーリンクの「YouCam RX」のような、RealSense対応アプリケーションが登場し始めており、Intelが普及に注力していることを考えると、その将来性は期待できそうだ。

 筐体のデザインも優れており、HDMI入出力を備えるなど、液晶一体型PCとしてのTV番組をたくさん録画したいので、2チューナでは足りないという人や、いち早くRealSenseによる次世代UIを体験してみたい人にお勧めしたい。

(石井 英男)