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NEC PC「LaVie Hybrid Advance」

~LaVieシリーズ初の“YOGA”型マルチスタイルノート

NEC PC「LaVie Hybrid Advance」(PC-HA850AAS)

 NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)は、2015年春モデルとして、LaVieシリーズのノートPCとして初となる液晶パネル360度開閉型のマルチスタイルノート「LaVie Hybrid Advance」シリーズを発表。利用スタイルに合わせ形状を全4種類に変形し利用できるだけでなく、スペックの充実で性能に余裕がある点も特徴となっている。

 今回、LaVie Hybrid Advanceシリーズ最上位モデルとなる「PC-HA850AAS」をいち早く試用する機会を得たので、ハード面を中心に紹介する。2月上旬に発売を予定しており、税別店頭予想価格は224,800円前後。

360度液晶回転ヒンジでYOGAスタイルを実現

 「LaVie Hybrid Advance PC-HA850AAS」(以下、HA850)の最大の特徴は、LaVieシリーズ初となる360度開閉する液晶回転ヒンジを採用し、全4種類のスタイルで利用可能なマルチスタイル仕様を実現している点だ。4種類の形状とは、通常のクラムシェルノートスタイル、液晶を180度以上開いて利用するスタンドスタイルとテントスタイル、そして液晶を360度開いて利用するタブレットスタイルで、いわゆるYOGAタイプのマルチスタイル仕様を実現している。

 液晶ヒンジ部は、液晶側と本体側それぞれに回転軸を備える「シンクロナイゼーションヒンジ」と呼ばれる板状のもので、それぞれの回転軸が180度回転することで360度の開閉を実現している。ヒンジの見た目は、マルチスタイルを実現する製品で広く採用されているものと大きく変わらない。ただ、液晶側と本体側の回転軸が、常に同じ割合で同時に回転するようになっている点が、これまでの製品のものとは大きく異なっている。液晶部の開閉は非常にスムーズで、どの角度でもぐらつきが少なく、安定して角度を保持できる点は、ほかの製品に対する利点。また、液晶と本体がほぼフラットに開ける点も、これまでにはない特徴だ。

 HA850は、15.6型液晶を搭載することもあり、本体サイズは383×256.5×22.3mm(幅×奥行き×高さ)と、マルチスタイルノートとしてはやや大きく、重量も公称2.3kg、実測で2,228gとやや重い。これまでに登場しているYOGAタイプのマルチスタイルノートは、多くがモバイルノートに分類される薄型軽量モデルが中心。それに対し、HA850はどちらかというと家庭やオフィスでテーブルに設置して利用するメインノートに近いサイズや重量だ。タブレットモードでの利用は、サイズや重量的にやや難があると感じるが、映像鑑賞時などスタンドモードやテントモードで利用できる点は大きな魅力で、このサイズでもマルチスタイルは十分に活用できるはずだ。

板状の回転ヒンジ「シンクロナイゼーションヒンジ」の採用で、液晶が360度開閉する
通常のノートPCとして利用するクラムシェルモード
液晶を180度以上開いたスタンドモード
ヒンジ部を上にして置き利用するテントモード
液晶を360度開いたタブレットモード
ヒンジの2つの回転軸が同時に回転するため、本体と液晶がほぼフラットに開く
本体前面。高さは22.3mmと、15.6型クラスのノートPCとしてはまずまずの薄さだ
左側面。前方から後方までほぼ均一の高さとなっている
背面
右側面
天板部分。凹凸のないフラットな形状だ
フットプリントは383×256.5mm(幅×奥行き)と、メインノートとしては標準的なサイズだ
底面
重量は実測で2,228gだった
ヒンジは本体側と液晶側の回転軸が同時に回転する

マルチスタイル時にキーボードを保護する「ライジングキーボード」機構を採用

 キーボードは、キーの間隔が開いた、いわゆるアイソレーションタイプのキーボードを採用。キーピッチは約19mmとフルサイズ。ストロークも約1.8mmと深く、しっかりとしたクリック感と合わせて、打鍵感は非常に優れる。本体サイズに余裕があるためテンキーも用意されており、数字入力時などの利便性も高い。もちろん配列も自然で、キーボードの操作性に不満はほとんどない。

 ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載。こちらもサイズ的に余裕があるため大型のものを搭載しており、扱いやすさは申し分ない。

 ところで、YOGAスタイルのマルチスタイルノートでは、液晶を180度以上開いた状態でのキーボードの存在が気になる場面がある。特に、キーボード面を下に置いて利用するスタンドモードや、液晶を360度開いたタブレットモードでは、利用時に設置面や手にキーボードが触れるため、利用時に気を遣うことが多い。

 この課題に対しHA850では、液晶を180度以上開いた場合、キーボード周囲がせり上がってキーボードのキーを保護するとともに、キー自体もロックされる「ライジングキーボード」と呼ばれる仕組みを採用。加えて、キーボード面上部の左右角付近からはゴム足がせり上がるようになっている。これによって、スタンドモードでも床にキーボードが触れることはなく、タブレットモードでも指にキーが触れる感触が少なくなり、違和感や不安感が減る。

 ギミック面での面白さもあるが、やはりマルチモードで利用する場合の安心感が向上するという意味で、この仕様は大きな利点と言えそうだ。

アイソレーションタイプのキーボードを搭載。サイズに余裕があるためテンキーも搭載される
キーピッチは約19mmフルピッチ。配列も自然でタッチタイプも余裕だ
ストロークは約1.8mmと深く、しっかりとしたクリック感もあり打鍵感も優れる
タッチパッドはクリックボタン一体型。面積が広く扱いやすい
液晶を180度以上開くと、キーボードのキー周囲にあるフレーム部が上にせり上がり、キーを保護するとともにキー自体もロックされ押せなくなる
キーボード奥の左右角にあるゴム足も、液晶を180度以上開くとせり上がってくる
キーボード周囲のフレームと奥のゴム足がせり上がっている様子。これでスタンドモードやタブレットモードでもキーボードがしっかり保護される

フルHD表示対応の15.6型液晶を搭載

 液晶は、1,920×1,080ドット(フルHD)表示対応の15.6型液晶を搭載。パネルの方式はIPSで、視野角が広くタブレットモードで利用する場合でも快適な視認性が確保されている。パネルの表面は光沢仕様となっており、外光の映り込みはやや気になるが、発色は鮮やかで写真や映像を高品質に表示できる。

 ミドルレンジよりやや上位に位置付けられる製品のため、より高解像度の液晶パネルを搭載しても良かったように思う。ただ、フルHDなら情報量は十分で、表示品質も優れており、実際に利用していて表示解像度や品質に不満を感じる場面はほぼないと言って良さそうだ。

 液晶表面には、静電容量方式のタッチパネルを搭載。10点マルチタッチ対応で、Windows 8.1のタッチ操作やタッチ対応アプリの利用も軽快だ。大画面でタブレットモードでの利用も可能なため、家族でマルチプレイ対応のゲームも余裕で楽しめる。なお、液晶表面は指紋の痕がやや付きやすいようなので、頻繁な拭き取りが不可欠と感じた。

1,920×1,080ドット表示対応の15.6型液晶を搭載。IPSパネルのため広視野角で、タブレットモードでも快適な視認性を確保。10点マルチタッチ対応の静電容量方式タッチパネルも搭載する
パネル表面は光沢仕様となっており、鮮やかな発色を実現。ただし外光の映り込みは少々気になる

RealSense 3Dカメラを搭載

 HA850には、標準でIntelの「RealSenseテクノロジー」に準拠する3Dカメラ「RealSense 3Dカメラ」が搭載される。液晶上部には2Dカメラに加えて赤外線カメラやRGBカメラ、赤外線プロジェクタなどが搭載され、手や指の動きを高度にトラッキングできる。これによって、スムーズなジェスチャー操作を可能としている。

 実際に、ゲームなどのRealSense対応アプリを利用してみたが、手の動きがしっかり捉えられ、快適な操作が行なえた。これまでWebカメラを利用したジェスチャー操作を実現する製品もいくつか存在していたが、それらにはない快適性が実現されており、ジェスチャー操作の利便性が大きく向上していると感じる。

 現時点では、RealSense 3Dカメラの対応アプリは少ないが、今後対応アプリは充実していく可能性が高い。また、RealSense 3Dカメラはジェスチャー操作だけでなく、個人認証用途への活用も考慮されており、優れたセキュリティ性を実現するために今後不可欠の存在になる可能性もある。そういった意味で、RealSense 3Dカメラの標準搭載は、将来性という意味でも大きな利点があるはずだ。

液晶上部には、標準でRealSense 3Dカメラを搭載。2Dカメラの画素数は約200万画素となる
Webカメラとしての利用はもちろん、3D撮影やジェスチャー操作など、さまざまな用途に利用できる
RealSense対応ゲームをプレイしている様子

第5世代Core i7や高速SSDを採用

 プロセッサは、Broadwellこと第5世代CoreプロセッサシリーズのCore i7-5500Uを採用。第4世代Coreプロセッサと比べてCPUの処理能力が向上するとともに、内蔵GPUがIntel HD Graphics 5500に強化され、3D描画能力も高まっている。また、省電力性能も高められ、バッテリ駆動時間も向上。優れた性能と省電力性を両立できるため、特にノートPCにとって魅力の大きなCPUとなっている。

 メインメモリは標準で8GBと比較的余裕の容量を搭載し、最大16GBまで増設可能。なお、標準の8GBではメインメモリはシングルチャネル動作となるため、CPUの性能を最大限引き出したいなら16GBのメモリ搭載がお勧めだ。

 内蔵ストレージは、256GBのSATA接続SSDを採用。このクラスのノートPCなら、SSDとHDDの同時搭載で性能と容量を両立する製品も存在するが、HA850はSSDのみの搭載となる。容量はやや心許ないが、性能面では申し分ない。

 光学式ドライブは内蔵しないが、標準でBDXL対応の外付けBlu-rayドライブが付属する。マルチスタイルを実現するために光学式ドライブを内蔵しなかったものと思われるが、外付けでもそれほど不便は感じないだろう。

 無線機能は、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0に標準対応。無線LANの速度は11ac時で最大867Mbpsとなる。センサー類としては、加速度センサー、電子コンパス、ジャイロセンサー、照度センサーを搭載。GPSは非搭載だが、モバイル向けではないためそれほど大きな問題とはならないだろう。カメラは、先ほど紹介したようにRealSense 3Dカメラ(2Dカメラの有効画素数は約200万画素)を標準搭載する。

 側面のポート類は、左側面に電源コネクタとUSB 3.0ポート×1、ヘッドフォン/マイク共用ジャック、SDカードスロット。右側面にUSB 2.0ポート×1、USB 3.0ポート×1、HDMI出力の各ポートを備える。また、右側面には電源ボタンとボリュームボタン、画面回転オン/オフボタンも用意される。側面に電源ボタンなどが配置されるのは、マルチスタイルでの利用に対応するためだ。

左側面には、電源コネクタ、USB 3.0ポート、ヘッドフォン/マイク共用ジャック、SDカードスロットがある
右側面には、USB 2.0ポート、USB 3.0ポート、HDMI出力がある。また、電源ボタン、ボリュームボタン、画面回転ON/OFFボタンも用意される
光学式ドライブを本体に内蔵しないかわりに、標準でUSB接続のBDXL対応外付けBlu-rayドライブが付属する
キーボード上部にはJBLブランドのステレオスピーカーを搭載。小型ながらなかなか迫力のあるサウンドが再生される
キーボード後方の側面側には空冷ファンの排気口がある
ACアダプタは比較的コンパクトなものが付属する
ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで227gだった

メモリがシングルチャネル構成のためか性能の伸びに欠ける

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.0.282」、「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.4.826」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、Maxonの「CINEBENCH R15」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」の7種類。

 なお、評価機は試作機であるため、実際の製品とはスコア差が発生する点はご了承いただきたい。比較用として、ユニットコムの「15X8140-i7-QTRB」と日本マイクロソフトの「Surface Pro 3」の結果も加えてあるが、一部ベンチマークテストではバージョンが異なるものもあるため、これらは参考値として見てほしい。

 結果を見ると、4コア8スレッドのCore i7-4710HQおよび外部GPUとしてGeForce GTX 970Mを搭載する15X8140-i7-QTRBにスコア大きく劣っている点は当然としても、Surface Pro 3の結果と比べると、一部テストでスコアが劣る部分があるなど、ややスコアの伸びに欠ける印象を受ける。もちろん、多くのテストでSurface Pro 3のスコアを上回っているため、性能的にはまずまずスペック通りとも言えるが、3D描画のテストではもっとスコアが良くてもいいように思う。

 この原因は、メインメモリがシングルチャネル構成になっているからと考えられる。おそらく、8GBモジュールを1枚足してメインメモリを16GBに増設しデュアルチャネル構成にすれば、もっとスコアが高まるはずで、そういった意味では今回のテストではHA850が備える本来の性能がフルに発揮されていないと考えていいだろう。とは言え、この状態でも利用時に不満を感じる場面はなく、性能的には十分に満足できるはずだ。


LaVie Hybrid Advance PC-HA850AAS15X8140-i7-QTRBSurface Pro 3
CPUCore i7-5500U(2.40/3.00GHz)Core i7-4710HQ(2.50/3.50GHz)Core i5-4300U(1.90/2.90GHz)
チップセットIntel HM87 Express
ビデオチップIntel HD Graphics 5500Intel HD Graphics 4600
GeForce GTX 970M
Inte HD Graphics 4400
メモリPC3L-12800 DDR3 SDRAM 8GB×1PC3L-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2PC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD256GB SSD + 1TB HDD256GB SSD
OSWindows 8.1 Update 64bitWindows 8.1 Update 64bitWindows 8.1 Pro Update 64bit
PCMark 8 v2.0.282(Surface Pro 3はv2.0.228を使用)
Home Accelarated 3.0281331132190
Creative accelarated 3.0347344782540
Work accelarated 2.0401638373282
Storage494249984882
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score455157524816
Lightweight score318159413209
Productivity score221050832428
Entertainment score337842503107
Creativity score8987103758691
Computation score125821862514289
System storage score528755515135
Raw system storage score546460584015
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/AN/A
CPU Score9897129159081
Memory Score7021105738446
Graphics Score30207887N/A
HDD Score574155877938847
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)22.0699.0
CPU255638
CPU (Single Core)94130
3DMark Professional Edition v1.4.828(Surface Pro 3はv1.3.708を使用)
Ice Storm323667647029479
Graphics Score390749934932413
Physics Score202194234222387
Ice Storm Extreme2166077573
Graphics Score22635101385
Physics Score1882342576
Ice Storm Unlimited45970131268
Graphics Score50279288143
Physics Score3536345179
Cloud Gate3560203302791
Graphics Score4064513563254
Physics Score248365281864
Sky Diver199318146
Graphics Score192223711
Physics Score25648552
Combined score189216849
Fire Strike47333141679
Graphics Score51934241589
Physics Score320491982672
Combined score16115081478
Fire Strike Ultra1131636
Graphics Score1091577
Physics Score30899209
Combined score53840
3DMark06 Build 1.2.0 1901
3DMark Score5720274624288
SM2.0 Score2038103141881
HDR/SM3.0 Score2315139031376
CPU Score322372002459
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)1603
1,920×1,080ドット 高品質(ノートPC)73712267
1,920×1,080ドット 最高品質9466

 次にバッテリ駆動時間だ。HA850はモバイルノートではないため、バッテリ駆動時間はそれほど重要視されないと思うが、念のため計測してみた。公称のバッテリ駆動時間は約6.7時間(JEITA測定法 Ver.2.0)とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「省電力」、バックライト輝度を40%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約13時間33分と、公称の2倍近い駆動時間を記録した。

 Core i7-5500Uは、低負荷時にCPUのTDPを7.5Wまで下げて動作するようになっているが、それによる効果がかなり働いての結果と考えられる。もちろん、ゲームなどのアプリを利用したりすると、公称の駆動時間に近付くものと思われるが、それでも家庭内で別の部屋に持ち運んで利用する場合でも、駆動時間をそれほど気にせず使えそうだ。

幅広い用途に活用できるメインノートとしてお勧め

 HA850は、360度の液晶開閉機構を備えるマルチスタイルノートとして、全4種類の形状で活用できる点がこれまでのLaVieシリーズにはない特徴となっている。15.6型液晶搭載のため、サイズはメインノート相当だが、通常のノートPCとしてだけでなく、タブレット相当や映像鑑賞に最適なスタンドモード、テントモードでも活用でき、これまでのノートPCにはない幅広い活用が可能だ。しかも、スタンドモードやタブレットモード利用時でもキーボードがしっかり保護される機構を備える点もうれしい配慮だ。

 また、第5世代Core i7やSSDの搭載により、性能面でも十分に満足できる。外部GPUを搭載しないため、最新3Dゲームのプレイは少々厳しい部分もあるが、そのほかの用途であれば全く不満を感じないだろう。そのため、家庭で利用するメインノートとして、広くお勧めしたい製品と言える。

(平澤 寿康)