“Windowsタッチ”徹底解剖

アイ・オー・データ機器「LCD-AD221FB-T」レビュー



アイ・オー・データ機器
「LCD-AD221FB-T」

11月中旬 発売

価格:オープンプライス(直販49,800円)



 アイ・オー・データ機器の「LCD-AD221FB-T」は、マルチタッチに対応した液晶ディスプレイだ。液晶に光学式のタッチセンサーが搭載されており、Windows 7のマルチタッチ機能「Windowsタッチ」に対応した操作を行なうことができる。11月中旬の出荷予定で、メーカー直販サイトでの価格は49,800円だ。

 なお、今回試用した製品は量産前の評価機であり、市販される製品とは一部仕様が異なる可能性があることをお断りしておく。

●光学センサー部を除きごく一般的なフルHD対応ディスプレイ

 センサー部を除いた製品の基本仕様は、ごくスタンダードなフルHD対応液晶ディスプレイといった体。画面サイズは21.5インチ、最大解像度は1,920×1,080ドット、入力端子としてDVI-DとミニD-Sub15ピンの2つを搭載しており、HDMIやDisplayPortは搭載しない。

 スペック面は最大輝度は270cd/平方m、コントラスト比1,000:1、応答速度5msと、おおよそ一般的な値。従来のタッチ対応ディスプレイは応答速度が遅めだったりと、どこかスペックが犠牲になっている場合が少なくなかったが、本製品では特にそのような点は見られない。

 画面は反射がやや強いが、これは画面全域が一体型のガラス製フィルターで覆われているのが大きな理由だ。このガラスフィルターは厚さ2mm、表面硬度8Hの硬さを持ち、実際に使っていてもかなりの剛性感がある。付属のタッチペンを使っている限りでは、破損させてしまうといった心配はまずないだろう。

 本体外寸は513×228×393mm(幅×奥行き×高さ)と標準的なサイズだが、重量は6.2kgと、同社の21.5型液晶ディスプレイ「LCD-AD221E」シリーズの4.6kgと比較するとかなり重い。タッチセンサー関連の機構はもちろん、前述のガラス製フィルターが占める割合もそこそこ高いと思われる。もっともそのおかげで、タッチ操作中もディスプレイ本体が後方に倒れかかるといった心配はしなくて済む。

 チルト角は、上が45度、下が0度と、上向きに使うことを重視した設計になっている。低い位置に置いてオフィスの受付などで応対用に使うには便利そうだ。ただし説明書には「24時間連続の利用は避けてください」との注意書きがあるため、終日つけておくのは難しそうだ。なお、左右の首振り(スイベル)、および高さ調節には対応しない。

正面。クセのない直線的なデザイン。ガラス製フィルターで覆われているため反射はややキツめ。ちなみに液晶パネルの方式は非公開背面。VESA準拠のマウントアームに取り付けることができる入力方式はDVI-DとミニD-Sub15ピンのみで、HDMI端子などは搭載しない
左側面から見たところ。台座はスクエアなデザイン上方に最大45度の角度調整が可能右側面から見たところ。下部にタッチペン挿入ホールを備える

 本体正面下部のボタンを用いて各種設定が行なえる。メニューの内容は映像、色温度、LCD調整、OSD、その他の計5つ。マルチタッチ専用の項目はなく、液晶ディスプレイの汎用的な設定メニューのみだ。いずれも日本語で設定できるのでわかりやすい。

 ちなみに本製品の対応機種はWindows 7のみとなっているが、筆者が試した限り、マルチタッチを使わないのであればWindows XP/Vistaでも問題なく表示できた。なお、従来のタッチ式ディスプレイと同様、マルチディスプレイには非対応なので注意したい。

調整ボタンは本体前面下部に装備電源再投入時に表示されるメッセージ。接続方法、解像度などの情報が表示される
設定画面は5種類(LCD調整はアナログ接続時のみ利用可)で、タッチパネル関連の設定項目は特に用意されていない

●ドライバレスですぐに使える。指のほかタッチペンでも操作が可能

 本製品はWindows 7の「Windows タッチ」の利用を前提としているため、利用にあたってユーティリティの類をインストールする必要はなく、ディスプレイケーブルと電源ケーブルをつないだのち、タッチ信号伝送用のUSBケーブルを1本つなぐだけでセッティングは完了する。ユーティリティがいらないのはもちろん、キャリブレーション(位置合わせ)の操作すら必要とせず、いきなりマルチタッチ操作が行なえるのは、ちょっとしたカルチャーショックだ。

 タッチセンサーは光学式。ベゼルの左上と右上に光学センサーが搭載されており、ここで指もしくはタッチペンの座標を読み取って動作する。筆圧検知には対応しないため、筆圧検知に対応したアプリケーションをフルに活用することは難しく、ペンタブレットの代用としてアートワークに利用するのは厳しい。

 光学センサー式のメリットとして、指先だけでなく、爪やタッチペンでも操作が行なえることが挙げられる。指先で画面に直接タッチした場合、画面に脂がついてしまうことがあるが、爪やタッチペンを使えばそのような事態を回避できる。また、高解像度の画面において、指先で小さなボタンを押すのが難しいという場合も、タッチペンを有効活用するのがおすすめだ。

 添付のタッチペンは市販のボールペンと比べても遜色ない太さがあり、握り心地は悪くない。普段は本体側面右下に収納されているので、必要な時にすぐに引き出して使える。もっとも、1本のタッチペンだけではズームや回転、フリックなど2本指を用いた操作を行なうことができず、Windowsタッチの機能をフルに利用することは難しい。用途によって使い分けることになるだろう。

光学センサーはベゼルの裏側にレイアウトされる。左上と右上に各1個ずつの計2個タッチ信号の伝送にはUSBケーブルを利用する
付属のタッチペン。ニンテンドーDSや電子辞書などのタッチペンと比較してもかなり大きく、一般的なボールペンと同程度の径および長さを持つタッチペンは本体右側面下部に収納する

●ボタンやコントロールのサイズを大きくすれば操作が快適に

 今回はWindowsタッチの機能であるタップ、ダブルタップ、ズーム、回転、フリックなどを一通り試してみたが、機能そのものは特に問題なく利用できた。操作の様子については前回の記事に動画を掲載しているのであわせて参照いただきたいが、ドライバインストールが不要なこともあり、これまでのタッチ対応機器にみられた導入時のわずらわしさは全く感じない。説明書の類を読まずにここまで使えてしまう入力デバイスも珍しい。

 外観についても、一般的な液晶ディスプレイとなんら変わらず、タッチ対応の製品であると言われなければ気付かないほどだ。ガラス製フィルターのせいで多少ギラツキがあると書いたが、これにしても最近のグレアタイプの液晶とそれほど差異はない。従来のタッチ対応ディスプレイにみられたデザインの野暮ったさもまったくなく、家電量販店の店頭で陳列されていても、いい意味で普通の液晶ディスプレイと見分けがつかないだろう。

【お詫びと訂正】初出時、キャリブレーションができない旨を記載しておりましたが、OSのコントロールパネルの「Tablet PC設定」カテゴリにある「タッチディスプレイを構成します」というメニューで設定を行なえます。ご迷惑をおかけした関係者、読者の方にお詫びするとともに、訂正いたします。

 また、スクリーンに触れなくとも、数mm浮いた状態で読み取ってしまうのも気になった。光学式の限界なのか、はたまたチューニングの問題なのかは分からないが、先の位置ズレと併せて、思うように操作できないことがあった。静電容量方式のタブレットでも見られる現象ではあるが、ボタンやリンクといった1点を正確にタップする必要のある本製品では、ストレスに直結しやすい。

 これらの解決策としては、OSの側でボタンやコントロールのサイズを大きくしておくなど、インターフェイスを最適化しておくのがよい。本格的にマルチタッチを用いた操作を行なうのであれば、入力デバイス側にある程度のブレがあることを見越して、それを吸収する工夫を凝らしておくというのが正解だろう。

●直観的で使いやすい製品。爪先での操作がおすすめ

 マルチタッチ対応ディスプレイを実際に使ってみて思うのは、他のマルチタッチ対応入力デバイスと違って、いま見ている画面をそのままタッチして操作できるのは、非常に直感的で分かりやすいということだ。画面に直接タッチするということは、画面の一部を手で覆い隠してしまうことでもあるが、それを補って余りあるメリットがあると感じる。

 本製品について言うと、個人的には爪先での操作が適していると思う。マルチタッチの恩恵をきちんと享受できるのはもちろん、画面が脂で汚れる心配もない。ウィンドウのドラッグや画面スクロールなど、長い距離を移動させる場合は特にそうだ。もっとも、ガラス面に爪を立てると音がするので、力は入れずに軽くなぞるように操作するのがおすすめだ。