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NVIDIA、Maxwellコア採用を始めたQuadro新モデル

 NVIDIAは、12日(米国時間)にワークステーション向けGPU「Quadro」の新ラインナップを発表。21日(日本時間)に担当者が来日し、国内報道関係者向けの説明会が実施された。

 新しく発表されたQuadroは、「Quadro K5200」、「Quadro K4200」、「Quadro K2200」、「Quadro K620」、「Quadro K420」の5製品。順にK5000、K4000、K2000、K600、410の後継モデルに相当する。2013年7月に発表された「Quadro K6000」は継続し、合わせて6製品のラインナップとなる。発売は9月。主要メーカーのワークステーションに搭載されて提供されるほか、菱洋エレクトロ、エルザ ジャパンからビデオカードが発売される。

 今回のリニューアルは、主に性能改善で、GPUコア数増加などによるグラフィックス/演算性能の向上やメモリ帯域幅の拡大に加え、メモリ容量も従来モデルに対して2倍の容量が搭載される。性能は平均で40%向上していると言う。

 また、ディスプレイ出力周りも強化されており、従来ラインナップでは下位製品に最大2画面出力のモデルが存在したが、今回は全ラインナップが4画面出力に対応。K4200は、K4000では対応していなかったマルチディスプレイ技術の「Quadro Sync」に対応する。

 なお、K5200、K4200、K420の3モデルは従来同様に「Kepler」アーキテクチャを採用するが、K2200とK620は「Maxwell」アーキテクチャを採用する。QuadroシリーズへのMaxwell採用は今回が初めて。ただし、最上位モデルがKeplerを採用するため、ファミリー全体の統一性のため“K”で始まるモデル名にしているという。そのほかの主な仕様は下記スライドを参照されたい。

Quadro新ラインナップの仕様
NVIDIAプロフェッショナル・ソリューション・ビジネス プロダクトマーケティング シニアディレクターのサンディープ・グプテ氏

 説明のために来日した、NVIDIAプロフェッショナル・ソリューション・ビジネス プロダクトマーケティング部門のシニアディレクターであるサンディープ・グプテ氏は、Quadroを利用する顧客のトレンドを紹介。

 Quadroは、製造や自動車、航空、映像など、多岐に渡る業界で利用されており、開発に当たっては、各業界の課題やチャンスなどを探るところから始めると言う。

 そこで見えてきたことの1つが、「データの複雑化/大規模化」だ。例えば、自動車の設計でも、簡素化したものではなく色合いも光の反射も実車に近いモデリングがなされたものを確認したいというニーズがある。またハリウッドの映像制作では、4Kが台頭し、すでに6K撮影への挑戦も始まっているという。こうしたことがQuadro新製品の性能向上や、2倍のメモリ容量の背景にある。

 米国で10月に封切りとなる映画「Gone Girl」の制作では実際に6Kで撮影。制作チームにQuadro K5200を提供して作業に使ってもらったそうだ。ここの編集作業ではAdobe Premiere Proが用いられているが、説明会でも実際にPremiereを用いたデモが実施された。

 その内容は、Red Digital Cinemaのカメラで撮影した4K解像度/30HzのRawデータを編集するというもの。Rawデータであるため各色のベイヤーデータを通常のRGB画像へ現像するディベイヤー処理を行なわないと、画面上で映像を確認することもできないが、ディベイヤー処理にCUDAを用いることでスムーズな再生が可能であることを示した。

 また、同じくAdobe製品については、6月に発表されたIllustratorのGPUパスレンダリングも紹介。OpenGLのエクステンションとして実装されたもので、多数のパスを用いた複雑なベクターデータであっても、ズームアップ/インやパンした際の表示が高速に行なえることを示した。

 映画制作に関しては、「ゼロ・グラビティ」のVFXを担当したFramestoreにもQuadro新製品を提供。劇的な性能改善が見られたそうだ。

各業界との対話の中で見えてきた課題やチャンス
6Kで撮影が行なわれた10月公開の映画「Gone Girl」の制作にもK5200が使われる
ゼロ・グラビティのVFX制作を担当したプロダクションであるFramestoreの事例
Adobe Premiere Pro CC 2014上で、Redカメラで撮影したRawデータを編集するデモ。Rawデータのディベイヤー処理が必要なため、CPUによるレンダリングでは通常の再生もままならないが、GPU(CUDA)を用いることでスムーズに表示できる
こちらはIllustrator向けに提供されているGPUパスレンダリング(GPUプレビュー)のデモ。GPUプレビューを利用することで多数のパスを持つ複雑なベクターデータもスムーズに表示できる

 各業界の課題やチャンスについて、このほかに見えてきたこととして、クラウドやBYODの台頭も上げられた。例えば、チームが複数に分散し、大規模なデータにリモートでアクセスしなければならないケースに対する解決策が求められる。

 これに対するNVIDIAの答えの1つがクラウドでのレンダリングである。AutodeskのCGソフト「Maya」に組み込める、レイトレーシングソリューションの「Iray」では、レンダリング処理をローカルで行なうか、クラウドで行なうかの選択が可能になる。クラウドでレンダリングする場合、最初は全てのジオメトリデータを送信するが、以後は視点やデザイン変更などの差分のみが送られ、最小限の通信で変更内容を適用したレンダリング結果が表示される仕組みになっている。

 説明会でもデモが行なわれ、ローカルではQuadro K5200を2枚搭載したHewlett-Packard製ワークステーションを用い、サーバー側にはQuadro K6000を8枚搭載したアプライアンスサーバー「NVIDIA VCA」を9台用意。Maya上で視点を変えるなどした場合でも、アプリケーション内のプレビューが高速に再レンダリングされる。これらが全てMayaの画面内で完結しているのもポイントであるとし、デザインの変更とレンダリングの反復作業がスムーズに行なえることをアピールした。

GPUアプライアンスサーバーのVCAを用いたリモートレンダリングの内容。クライアントから必要な最小限のデータを送信し、サーバー側の強力なGPUでレンダリング、結果をクライアントに配信する
自動車デザインを行なうMOTORCITY EUROPEにおけるK5200を用いた事例
サーバーのIPアドレスなどを指定するリモートでのレンダリング設定画面
Mayaの編集画面はそのままに、レンダリング結果を表示するウィンドウが置かれるので、ローカルでの編集作業とクラウドでのレンダリング結果確認をシームレスに行なえる
GPUの数によるレンダリング速度デモ。左上はQuadro K6000×1台、ほかはVCAの台数による差となる。再レンダリングが始まった直後を撮影したもので、16台のVCAを用いた環境はレンダリングが完了しているが、ほかはまだ結果が収束していないことが分かる
NVIDIAではさまざまな業界におけるビジュアルコンピューティングの中心にQuadroを据える考え
Quadro K5200
Quadro K4200
Quadro K2200
Quadro K620
Quadro K420

(多和田 新也)