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COMDEX Fall 2001レポートソニー社長兼COOの安藤国威氏がCOMDEX Fall 2001で講演 |
会期:11月12日~11月16日(現地時間)
会場:Las Vegas HILTON(基調講演)
Las Vegas Convention Center(展示ホール)
■「FEEL(仮称)」は極めて人間的な機器間接続のインターフェース
COMDEXの基調講演における日本人スピーカーは、'99年の出井伸之ソニー会長に続いて二人目となる。安藤国威社長は、ほぼ1時間出ずっぱりでステージ上を動き回った |
ネットワークへの入り口は、ナローバンドにおいてはPCや携帯電話がせいぜいだったが、ブロードバンド化を受けて、ノンPC(デジタルTV、AV機器、ゲームコンソール)、モバイル(携帯電話、PDA)、PCへと拡大。そのそれぞれが、家庭内、屋外、そしてクルマのなかなど状況に応じて使い分けられるようになると、現在発売済みのソニー製品を例にあげて移行の流れを解説した。上映されたコンセプトビデオでは、例えばAIBOの頭部についたCCDカメラの映像を遠隔地で確認したり、少年達がハンディカム片手に探検に向かう状況をリアルタイムでネットワーク中継するなど、現在の製品形状とほとんど変わらないアイテムで、極めて近い将来の「ユビキタス・バリュー・ネットワーク」を描き出して見せた。
ソニーの目指す、相互接続されたハードウェア・プラットフォームの構築で、キーテクノロジーとなるのはデジタル機器すべてにIPアドレスを割り振り、ネットワーク化を容易に実現するためのIPv6。そして、各機器間を接続するワイヤレス技術になるという。特にワイヤレス技術は家庭内における機器接続のカギを握ることになる。そのため、ステージでのデモも、ワイヤレスを意識させるものが数多く披露された。
興味深かったのは、機器同士を近づけたときにそれぞれが認識しあうユーザーインターフェイス技術「FEEL(仮称)」。機器間の接続の確立といった作業を意識させないよう、「機器同士を近づけて数度振る」あるいは「軽く接触させる」という極めて人間的な動作でリンクを確立させる。後に行なわれた記者懇談会では「ワイヤレスの問題点は常に接続相手をスキャンする作業が存在すること。この作業を、近づける・振ると言ったアクションをキーにすることで電波の微弱化、プロトコルの簡略化を実現できる。もう1つの問題点であるバッテリの持続時間についても解決できる方法だ」と説明された。
「FEEL(仮称)」のデモは、CLIEと二台のVAIOを使って行なわれた。一方のVAIOにCLIEを近づけて軽く振ってリンクを確立。VAIOに保存されていたデータをCLIEに取りだし、そのままもう一方のVAIOへと向かう(この時点で距離が離れリンクは解消される)。そして、もう一方のVAIOで同じアクションをとり、CLIEに保存されたデータを移動するものだ。
同コンセプトのデモは講演の最後に、安藤氏自らも披露して見せた。腕に付けたプロトタイプの「双方向リストコミュニケーター」に安藤氏宛のメッセージの着信を知らせる案内が届く。そのまま手近な端末機器へと移動して、コミュニケーターを近づけリンクを確立。自動的に同氏の個人情報にアクセスして、届いていたビデオメッセージをコミュニケーターに転送。モニタ画面で確認したメッセージに、コミュニケーターのカメラを使って返事をするという一連の手順である。
さらにこの基調講演では、「ユビキタス・バリュー・ネットワーク」の構築と実現に向けて2つの大きな協力態勢が発表されている。いっぽうはAOLタイムワーナー。主な合意事項として、次の三点が発表されている。
・ブロードバンドホームネットワークゲートウェイ機器関連技術の共同開発
・ネットワーク対応AV機器に適したインターネットブラウザーの共同開発
・米国におけるソニーのネットワーク対応機器にAOLがアクセスサービスを提供することの検討
もういっぽうの協力先はノキア。ソニーがエリクソンと携帯電話端末事業で協業することで、その分野ではライバル関係にある両社といえるが「ユビキタス・バリュー・ネットワーク」の構築にあたっては、サービスの相互運用性を確保するために重要なパートナーと位置付け、オープンで共通なミドルウェアプラットフォームを共同開発するという。具体的な内容としては、新しいユーザーインターフェース、コンテンツのダウンロード技術、マルチメディアメッセージング、オープンなデジタル著作権管理技術、そしてIPv6の互換性確保などが挙げられている。
■USBストレージメディアと、ソニーエリクソンのコンセプトモデルを公開
例年ほぼ同じ場所にブースを構えるソニー。来場者がもっとも利用する入り口に近い、マイクロソフトブースからの動線上に位置する格好のロケーションだ。もちろんソニー自体の注目度も高いため、いつも混雑しているのが特徴でもある。ブースの面積はこれまでとほとんど変わっていないが、二階建てのブース構造や、シアター形式のデモ映像上映がなくなるなど、やはり展示規模は縮小傾向と見ざるを得ない。ソニーはこれまでもCOMDEXでは積極的な参考出展を続けてきたが、今年はすでに発表済み(あるいは日本国内出荷済み)の製品の展示が大半を占め、これから数年先を予見させるような新しいコンセプトの製品はほとんど見ることができなかった。
唯一展示されていたのは、前述した安藤国威氏の基調講演でも紹介されていた「双方向リストコミュニケエーター」。これまで日本では見ることができなかった新製品には、ソニーブランドが付いたUSBストレージメディアがある。
携帯電話端末分野で協業を開始したソニーエリクソンは、とりあえず既存の端末を同ブランドから出荷しはじめている。純粋な意味でのファーストプロダクトは、もう少し先になりそうだ。モックアップのコンセプトデザインのみが展示されている。
ソニーエリクソンブランドの携帯電話3種。いずれもモックアップで、デザインコンセプトモデル。同ブランドでのファーストプロダクトが待ち遠しい |
(2001年11月15日)
[Reported by 矢作 晃]
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