|
COMDEX Fall 2001レポートIntel、シリアルATAとUSB 2.0に関する説明会を開催 |
USBインプリメントフォーラム議長でIntelテクノロジ イニシアチブマネージャのジェイソン・ジラー氏 |
IntelはCOMDEX Fallの会場においてシリアルATAとUSB 2.0に関する記者会見を開催し、公式な場としては初めてUSB 2.0コントローラが統合されたチップセットのデモンストレーションを行なった。
これまでのデモンストレーションではNECなどサードパーティが開発した単体のUSB 2.0コントローラを利用して行なわれていたが、今回デモされたのは、サウスブリッジにUSB 2.0コントローラを統合したもので、2002年に出荷が予定されているものだ。
また、シリアルATAのコントローラを統合したチップセットの出荷時期についても2003年であると説明が行なわれたほか、IntelブースではUSB 2.0、シリアルATA、Bluetooth、IEEE 1394、IEEE 802.11bなどがすべてオンボードとなったマザーボードが展示された。
●「2002年にUSB 2.0を統合したチップセットを出荷し、USB 2.0が本格的に普及する」とジラー氏
USBの普及を目指すUSBインプリメントフォーラムの議長であるジェイソン・ジラー氏(Intel テクノロジ イニシアチブマネージャ)は、今年の4月に行なわれたIntel Developer Forum Japanで説明したとおり、「2002年の前半にUSB 2.0コントローラを統合したチップセットを出荷する。これによりUSB 2.0は本格的に普及することになる」と述べた。
OEMメーカー筋の情報によれば、Intelは2002年の第3四半期にPentium 4用として4つのチップセットを予定しているという。それが、Tehama-E、Brookdale-E、Brookdale-G、Brookdale-GLの4つで、それぞれ以下のようなスペックになっているという。
【チップセットのスペック】
Intel850 | Intel845 | Brookdale-DDR | Tehama-E | Brookdale-E | Brookdale-G | Brookdale-GL | |
ノースブリッジ | FW82850 | FW82845 | ? | ? | ? | ? | ? |
システムバス | 400MHz | 400MHz | 400MHz | 500/533MHz | 500/533MHz | 400MHz | ← |
メインメモリ | Direct RDRAM | SDRAM | DDR SDRAM | Direct RDRAM | DDR SDRAM | DDR SDRAM/SDRAM | ← |
メモリクロック | 600/800MHz | 133MHz | 200/266MHz | 600/800MHz | 200/266MHz | 133/200/266MHz | ← |
メモリモジュール | PC600/800 | PC133 | DDR200/266 | PC600/800 | DDR200/266 | PC133/DDR200/266 | ← |
AGPスロット | 2X/4X | ← | ← | ← | ← | ← | - |
グラフィックス統合 | - | - | - | - | - | 内蔵 | 内蔵 |
サウスブリッジ | ICH2(FW82801BA) | ← | ← | ← | ICH4(FW82801DB) | ← | ← |
IDE | Ultra ATA/100 (2チャネル) | ← | ← | ← | ← | ← | ← |
AC'97 | オーディオ/モデム | ← | ← | ← | ← | ← | ← |
USB(ポート数) | 1.1(4ポート) | ← | ← | ← | 2.0(6ポート) | ← | ← |
LAN | 内蔵 | ← | ← | ← | ← | ← | ← |
Tehama-EはIntel 850の改良版で、システムバスのクロックが533MHzにも対応していることが大きな違いである。Tehama-Eは、サウスブリッジはIntel 850と同じくICH2となり、USB 2.0コントローラは統合されない。
USB 2.0コントローラが統合されるのは、Brookdale-E、Brookdale-G、Brookdale-GLの3つのチップセットで、それぞれDDR SDRAMないしはSDRAMが利用できるメインストリーム向きからバリュー向けのチップセットだ。
内蔵グラフィックスの有無、AGPのサポートなどの有無でスペック上の違いがあり、Pentium IIIで利用されていたIntel 815でいえば、AGPグラフィックスカードを一緒に使う単体チップセットのIntel 815EP相当のBrookdale-E、AGPないしは内蔵グラフィックスから選択できるIntel 815E相当のBrookdale-G、内蔵グラフィックスのみのIntel 815EG相当のBrookdaleーGLとなる。
これらのBrookdale-E、BrookdaleーG、Brookdale-GLはサウスブリッジとしてICH4を利用する。ICH4は、現在モバイル向けチップセットであるIntel 830Mファミリー(Intel 830MP、Intel 830M、Intel 830MG)ないしは来年の第1四半期に出荷が予定されているモバイルPentium 4プロセッサのチップセットであるIntel 830MPチップセットで利用されているICH3M(FW82801CA)の改良版で、ICH3Mではなんらかの理由で無効にされたまま出荷されているUSB 2.0コントローラが実際に使えるようになる。
ジラー氏が2002年の前半に、というのは、このことを意味していると考えられるだろう(ただ、Brookdale-E/G/GLは第3四半期というスケジューリングがされているため、それとは若干ずれてはいるが)。
●8月のIntel Developer Forumで公開したマザーボードを利用しての実働デモ
今回はその開発中のICH4と見られるサウスブリッジを搭載したマシンを利用したデモが行なわれた。
利用されたマザーボードは写真は撮影不可だったものの、筆者が確認した限りでは8月にサンノゼで開催されたIntel Developer Forum Conference Fall 01のルイス・バーンズ副社長兼デスクトッププラットフォームグループジェネラルマネージャの基調講演( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010831/idf05.htm )で公開されたUSB 2.0コントローラ統合チップセット搭載マザーボードで、やはりICH4のエンジニアリングサンプルが利用されていると見ていいだろう。
デモでは、MEPG-2と思われる動画をUSB 1.1対応ハードディスク、USB 2.0対応ハードディスクのそれぞれで再生し、USB 1.1ではコマ落ちするのに対して、USB 2.0では問題なく動作するというものと、USB 2.0に対応したCCDカメラで、640×480ドットで30fpsを実現するというデモだ。どちらもUSB 2.0ではスムーズに動作しており、カメラと動画の再生も問題なくできていた。
ジラー氏は「このようにUSB 2.0コントローラを統合したチップセットの開発は順調に進んでおり、2002年にはUSB 2.0をインプリメントするコストはほとんどないに等しくなる。これによりUSB 2.0の普及は加速的に進むだろう」と述べ、USB 2.0の普及に自信をのぞかせた。
デモに利用されたICH4の開発途上バージョンが搭載されたPC | 背面に用意されたマザーボード上にオンボード搭載されたUSB 2.0ポート | USB 2.0のハードディスク上にある動画ファイルを再生しているところ |
●シリアルATAの製品は2002年に登場しチップセットへの統合は2003年に
また、ジラー氏は同じく同社が現在のパラレルのIDEインターフェイスに変えて普及を目指している、シリアルのIDEインターフェイスとなるシリアルATAについて、現状を説明した。
すでに秋のIDFでは、最終スペックであるスペック1.0が策定されたことが明らかにされており、各メーカーがそれに併せて製品の開発に入っている段階だ。「シリアルATAの実際の製品は2002年の前半には市場に登場する」と、こちらも来年から徐々に普及が進んでいくという見通しを明らかにした。
すでに、Intelは、8つのUSB 2.0ポート、2チャネルのシリアルATAインターフェイス、Bluetooth、IEEE 802.11b、IEEE 1394といった新しいインターフェイスをすべて搭載したマザーボードの試作品を自社ブースに展示している。それは実際に動作しており、来場者の興味を誘っていた。
シリアルATAにすることでケーブルはすっきりしており、ケーブルの取り回しなどはよくなっている。また、シリアルATAではバスの帯域幅が150MB/secとなっており、現在のUltra ATA/100に比べて高速になっている。ジラー氏によれば、コストも現在のパラレルATAと変わらず、ロイヤリティなどは一切ないという。シリアルATAのチップセットへの統合に関してジラー氏は「2003年になる」と説明している。
気になるのは、VIA TechnologiesとハードディスクメーカーであるMaxtorが共同で提案しているUltra ATA/133に対するIntelの姿勢だ。
Ultra ATA/133は、現行規格であるUltra ATA/100の上位規格で、133MB/secとシリアルATAの150MB/secに近い帯域幅を実現している。速度的には近い規格であり、当然バッティングする可能性があるといえる。
実際、Ultra ATA/133は、Ultra ATA/100と全く同じコストでいけるので、すでにMaxtorなどは対応ハードディスクを出荷している。このことに関してジラー氏は「当社はシリアルATAに大きなアドバンテージがあると考えており、業界の多くのベンダーと協力してシリアルATAの普及につとめている。Ultra ATA/133MHzはシリアルATAを下回るスペックであるため、これをサポートする理由はないと考えている」と述べ、「Ultra ATA/133を当社のチップセットがサポートする計画はなく、Ultra ATA/100からシリアルATAへ直接、移行を促す」という意向も明らかにした。
今後VIAをはじめとするUltra ATA/133を推進するグループと、Intelを中心にするシリアルATAへの移行を推進するグループとに分かれて、綱引きが行なわれる可能性があり、今後の展開は要注目といえる。
8つのUSB 2.0ポート、IEEE 1394、無線LAN(802.11b)、Bluetooth、2チャネルのシリアルATAがオンボードに搭載されたマザーボードを利用したシステム | マザーボードの全景 | 電源コネクタの左に見えるのがシリアルATAのコネクタ。シリアルATAのコントローラチップはオンボードで搭載されていた |
バックパネル。USBのコネクタが8つも用意されている。USB 2.0のコントローラはNECのチップがオンボード搭載 | 金色のコネクタはBluetoothのアンテナを取り付けるためのもの |
□COMDEX Fall 2001のホームページ(英文)
http://www.key3media.com/comdex/fall2001/
(2001年11月15日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
|