COMDEX Fall 2001レポート

NVIDIA、ノート用次世代グラフィックチップ「NV17M」発表

会期:11月12日~11月16日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center


 NVIDIAは、COMDEX Fall 2001において、ノートPC用の次世代グラフィックチップ「NV17M」(コードネーム)を発表した。昨年のCOMDEX Fallでは同社初のノートPC用グラフィックチップ「GeForce2 Go」を発表したが、今回発表されたNV17MはGeForce2 Goの後継にあたるチップだ。


●描画能力が大幅に向上

 GeForce2 Goは、ノートPC用グラフィックチップとして初めてハードウェアT&Lエンジンを搭載し、高い3D描画能力が実現されていることで話題となった。しかし、今回発表されたNV17Mは、GeForce2 Goをはるかに上回る、非常に高い3D描画能力が実現されている。

 NV17Mのスペックは表に示したとおりだ。GeForce2 Goは、デスクトップ用のGeForce2 MXとほぼ同等の機能が実現されていた。それに対しNV17Mは、基本的にはGeForce2がベースになっていると思われるが、ビデオメモリのバンド幅を向上させる「Lightspeed Memory Architecture」、Quincunxモードに対応するフルシーンアンチエイリアス機能「HRAA(High-Resorution Antialiasing)」など、GeForce3の機能の一部をノートPC用グラフィックチップとして初めて取り込んだ形となっている。ただ、GeForce3でサポートされている、プログラマブル・バーテックス・シェーダーやプログラマブル・ピクセル・シェーダーはNV17Mには取り込まれておらず、期待されていたGeForce3をベースとするノートPC用チップというわけではないようだ。

【NV17Mのスペック】
 コア動作クロック 250MHz
 ビデオメモリ DDR SDRAM、チップ上に搭載
 ビデオメモリ搭載量 最大64MB
 メモリクロック 最大250MHz(DDR動作時500MHz)
 ポリゴン処理能力 30Mトライアングル/sec
 ピクセルフィルレート 500Mピクセル/sec
 テクセルフィルレート 1Gテクセル/sec
 メモリバンド幅 最大8GB/sec
 製造プロセス 0.15μm

 ただ、その3D描画能力は、ノートPC用として考えるとずば抜けたものだと言っていい。実際に行なわれたデモでは、GeForce3の発表の時に利用されたカメレオンのデモやピンボールゲームなどがそのまま利用されたが、どれも非常にスムーズに動作しており、ノートPCで動作しているとは思えないほどであった。また、HRAA利用時でもほとんど処理落ちせずに描画ができていた。これは、チップ自体のパフォーマンスはもとより、Lightspeed Memory Architectureによって、最大8GB/secという広大なメモリバンド幅が確保されているという部分も要因の1つだ。

 NVIDIAはNV17Mを「地球上で最もパフォーマンスの高いGPU」としているが、その文句は少なくとも現時点では間違っていないだろう。

NVIDIAの社長兼CEO、Jen-Hsun Huang氏の右手がNV17M。カジノチップと比較してNV17の小ささをアピール 省電力機構「PowerMizer」、フルシーンアンチエイリアシング「HRAA」のサポートなどがNV17Mの特徴となっている NV17MとGeForce2 Goのスペック比較。GeForce2 Goからかなり強化されている

ATIのM7とのパフォーマンス比較。NV17M(緑)が圧倒的に優れている GeForce3のデモでおなじみのカメレオン。これが実際にNV17M搭載のノートPCでスムーズに動いていた HRAAを有効にすることで、ジャギーが目立ちやすい液晶ディスプレイでもスムーズな映像が得られる


●独自の省電力機構と製造プロセスの微細化で消費電力が低減

 GeForce2 Goは、消費電力が大きいことや、ビデオメモリが内蔵されていないためトータルの実装面積が大きくなってしまうといった点などが災いし、東芝やDELL製の一部のA4フルサイズノートでしか採用されなかった。ただ、NV17Mではこういった問題点がかなり改善されている。

 NV17Mでは、ハードウェアとソフトウェアを統合した独自の省電力機構「PowerMizer Technology」が新たに採用された。PowerMizer Technologyでは、マシンの利用状況(描画状況)を自動的に判断し、その状況に応じてGPU内のモジュールのON/OFFを行なったり、動作クロックを動的に変更できるようになっている。これにより、描画命令がほとんどない状況では、GPU内のモジュールの多くがスリープモードとなり、描画命令が届いた時点で必要となるモジュールが通常モードに切り替わり、描画命令を処理するようになる。

 また、ビデオドライバであらかじめ設定された動作モードに応じて、チップの動作クロックなどが決まる。用意されている動作モードは、最大限の描画能力が発揮される「Maximum Performance Mode」、描画能力はやや低くなるものの、バッテリ駆動時間を重視した「Maximum Power Saving Mode」、その中間に位置する「Balanced Mode」の3種類で、Maximum Power Saving Modeでは、描画能力はMaximum Performance Modeの1/3程度になるものの、消費電力は25%ほど少なくなるようだ。

 Video Processing Engine(VPE)という機能も搭載されている。VPEは一般的なMPEG-2デコーダとほぼ同等の機能を実現するもので、DVDビデオなどの再生時にCPUの処理量を低減でき、システム全体のパフォーマンスアップだけでなく、消費電力の低減にもつながるそうだ。

 さらに、NV17Mは製造プロセスルールが0.15μmとなったことでも、消費電力が抑えられている。そのため、NV17Mはハイエンドノートはもちろん、薄型ノートなどにも十分利用可能としている。

 ところでNV17Mは、Mobile AGP Package(MPA)という新しいチップパッケージを採用している。MPAは、一般的なAGPカードのように、基板上にNV17Mのコアとビデオメモリが実装された形でチップが構成されている。搭載されるメモリはDDR SDRAMで、最大64MBまで搭載可能。チップ自体の大きさは4cm四方ほどと小さく、NVIDIAの社長兼CEO、Jen-Hsun Huang氏はカジノチップを手にNV17Mの小ささをアピールしていた。

縦軸がシステム全体の消費電力、横軸がパフォーマンスを示す。Maximum Power Saving Modeでも他社のチップより高いパフォーマンスを示しているが、システムの消費電力は低くなっている VPEを利用することで、DVDビデオ再生時のCPUの処理量が減り、システム全体のパフォーマンスアップと消費電力の低減になる MAPの構造図。チップを構成する基板上にNV17MのコアとDDR SDRAMチップが2個実装される

NV17Mの実物。基板上にNV17MのコアとDDR SDRAMが実装されている デモで利用された、東芝製のNV17M搭載ノートの試作機。発売は2002年の早い時期(2月頃)が予定されている


●搭載製品は2002年の早い時期に登場

 今回のNV17Mの発表会では、実際にNV17Mを搭載するデモ用のノートPCが利用されていたが、そのノートPCは東芝製のものだ。東芝はGeForce2 Go搭載ノートを他社に先駆けて市場に投入したが、今回のNV17M搭載製品も東芝が他社に先駆け、2002年の早い時期(2月頃)に投入予定となっている。

 NV17Mは、高い3D描画能力を実現しながら、省電力性も追求され、GeForce2 Goの弱点がかなり克服されている。ノートPC市場では、ライバルATI Technologiesのシェアは圧倒的だが、NV17Mによって、ノートPC市場でもNVIDIAのシェアが上がるかもしれない、そういった予感も十分に感じることができた。

□COMDEX Fall 2001のホームページ(英文)
http://www.key3media.com/comdex/fall2001/

(2001年11月14日)

[Reported by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]

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