COMDEX Fall 2001レポート

AMD、0.13μmプロセスにシュリンクした次世代Athlon XP用コア「Thoroughbred」を公開

会期:11月12日~11月16日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center


 AMDは、製造プロセスルールが0.13μmのThoroughbred(サラブレッド)を報道陣に公開した。Thoroughbredは、現在Athlon XPに利用されている0.18μm製造プロセスルールのPalominoコアを0.13μmにシュリンクしたCPUコアで、2002年の第2四半期に出荷が予定されている。

 また、MorganコアのDuron 1.2GHz、Thoroughbredの実働マシンなども公開され、AMDが今後出荷を予定しているものがドーンとまとめて公開された感がある。

 先月の8日に行なわれた証券アナリスト向けのAnnual Analyst Meetingにおいて公開されたロードマップなども交えながら、AMDのCPU戦略について紹介していこう。


●AMDのCPUとして初めて0.13μmの製造プロセスルールをサポートするThoroughbred

AMDのロードマップ

 Thoroughbredは、現在Athlon XPのCPUコアとして採用されているPalominoコアの後継となり、製造プロセスルールが0.18μmから0.13μmへとシュリンクされたCPUコア。

 製造プロセスルールがシュリンクされた以外は、現在のPalominoと仕様は同じで、QuantiSpeedアーキテクチャを採用し、L1キャッシュは128KB、L2キャッシュは256KBと、Palominoと基本的な仕様の違いはない。

 公開されたThoroughbredは、見てわかるとおりPalominoコアの現行Athlon XPに比べて、CPUダイのサイズが明らかに小さくなっている。AMDがAnnual Analyst Meetingで公開したThoroughbredのダイサイズは80平方mmで現行Athlon XPの129平方mmに比べて大幅に小さくなっている。AMDによれば、Northwoodの予想ダイサイズは116平方mmで、それに比べて約30%程度小さくなっている(Northwoodはリリース前であるので、あくまで予想)。

 ダイサイズは小さければ小さいほど、CPUの製造コストに大きく跳ね返る。たとえば、1つのウェハーを作るのに同じコストがかかっているとすれば、31%小さいThoroughbredはNorthwoodに比べて30%多くのダイがとれる(実際には歩留まりやとれない部分も絡んでくるのでもう少し数字は違ってくる)。コスト的なメリットは決して小さくない。

 すでに述べたように、ThoroughbredのL2キャッシュの容量は現行Athlon XPと同じ256KBになっている。2002年の第1四半期にリリースされるPentium 4の0.13μm版であるNorthwoodはL2キャッシュが512KBと倍に増やされる。となれば、L2キャッシュが増えた分Northwoodは処理能力が向上し、現在のAthlon XPとPentium 4の性能のポジショニングが変わってくる可能性があると考えられる。

 この点に関してAMDのコンピュテーションプロダクトグループ デスクトッププロダクツ マーケットデベロップメントマネージャのブレンダ・マース氏は「L2キャッシュを増やした場合、再開発にリソースや時間をとられることになる。現在のPalominoでもPentium 4に大きな差を付けており、その傾向はThoroughbredになったとしても基本的には変わらないと考えている」と述べ、性能差はさほど縮まらないためL2キャッシュの容量を増やす必要はないという見解を明らかにした。

AMDのAthlon XPの次世代コアとなるThoroughbred。製造プロセスルールは0.13μmで、L2キャッシュの容量は256KBとPalominoと同じ。デスクトップPC用は2002年第2四半期に ThoroughbredコアとPalominoコアの比較。Thoroughbredコアはのダイサイズは80平方mm、Palominoコアは116平方mmであるため、Thoroughbredのほうが30%程度小さくなっている


●アップデートされたロードマップにはHammerのモデルナンバーも

 AMDは、COMDEXに先立つ11月8日に、サンノゼで行なわれた証券アナリスト向けのAnnual Analyst MeetingにおいてCPUのロードマップを公開した。今回のCOMDEXでも公開されたが、それは以下のようになっている。

【AMDのデスクトップ向けロードマップ】
 2001年2002年2003年
 第4四半期第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期前半後半
パフォーマンスM2000M2200M2400M2600M3400M4000M4400
バリュー1200MHz1400MHz     
Palomino/Morgan
Thoroughbred/Appalosa/Barton
Hammer(0.13μm)
Hammer(0.10μm)

 すでに述べたように2002年の第2四半期にThoroughbredが追加される。Annual Analyst Meetingで明らかにされた資料によれば、PalominoコアのAthlon XPは今四半期中にモデルナンバーで2000+をリリース、2002年第1四半期には2200+がリリースされ、それを受ける形で第2四半期にThoroughbredの2400+が追加されることになる(いずれも実クロックは未公表)。さらに、第3四半期にはThoroughbredないしはBartonの2600+が追加される。

 注目の次世代プロセッサとなるHammerのアーキテクチャを採用したClawHammerは、2002年の第4四半期に、3400+として登場することになる。いきなり2600+からモデルナンバーで800+もジャンプすることになるが、「CPUのアーキテクチャが大幅に切り替わるため、単にクロックがあがっただけではなく、その分の処理能力の向上が見込める」(マース氏)とのことで、K7アーキテクチャからHammerになることで大幅な性能向上を見込めると考えていることが伺える。

 こうして具体的にAthlonとスケーリングできるのであれば、実際にシリコンができていて、ベンチマークなどで計測したのかどうかが気になるところだろう。そこで、すでにファーストシリコンなどができあがっているのかと聞いてみると「ノーコメント」とのことだった。AMDのOEMメーカー筋でもシリコンを受け取ったという話は聞こえてこないので、あくまで予測値だと考えるのが正しいのかもしれない。


●モバイル向けにはμPGAやOBGAパッケージも用意される

 また、Annual Analyst Meetingでは、モバイルに関して新しい戦略が披露された。注目したいのは、これまでAMDがフォーカスしてきた3スピンドルのフルサイズノートブックだけでなく、Thin & Lightと呼ばれる、A4サイズでも薄型の2スピンドルモデルもターゲットとしてあげられていることだ。

【AMDのノートPC向けロードマップ】
 2001年2002年2003年
 第4四半期第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期前半後半
35W1300MHzM1800M1900M2200M2400M2800M3800
1400MHz
25W1200MHzM1500M1600M1900M2200M2600M3600
1300MHz
16W  M1500M1600M1900M2100M2300
Palomino/Morgan
Thoroughbred/Appalosa/Barton
Hammer(0.10μm)

 AMD コンピュテーションプロダクトグループ 担当副社長のデレック・マイヤー氏はAnnual Analyst Meetingの中で「Thoroughbredでは、消費電力で25W、35Wなどに加えて、16Wの製品を追加する」と述べている。その資料の中でマイヤー氏はThin & Lightの熱設計電力のターゲットについて16~25Wとしており、明らかにこのセグメントをターゲットにしたものだと考えていいだろう。現在、この市場ではIntelの独占状態といっていいが、今後このセグメントがノートPC市場の中心になると考えられており、そこにThoroughbredで参入するというのがAMDの戦略だ。

 現状のAthlon 4ではPGAのみが提供されている。大手PCメーカーのエンジニアの中には、パッケージのバリエーションをAthlon 4の弱点とあげる場合もあった。そこでThoroughbredでは、μPGA、OBGAの2つのパッケージが追加される。これによりノートPCメーカーは設計ターゲットにあわせてパッケージを選択することが可能になる。そのため、モバイルでもIntelと同等に激しい競争をできるようになる可能性があり、注目していきたいところだ。

 なお、クロックは2002年の第1四半期にデスクトップPCに先駆けてThoroughbredがモデルナンバーで1800+が投入され、第2四半期に1900+、第3四半期に2200+とクロックがあげられていく。さらに、2003年の後半にはHammerのモバイル版が投入されることになる。Hammerのモバイル版は0.10μmの製造プロセスルールで作られ、モデルナンバーは3800+になるという。


●注目のAMD-760MPXは第4四半期中に出荷

 さらに、サーバーのセグメントだが、現在はPalominoコアのAthlon MPが用意されているが、今四半期中にMorganコアを採用したバリューセグメントのサーバー向けCPUが投入されるという。さらに2002年には、それぞれThoroughbredコア、Appaloosaコアに切り替えられ、さらにThoroughbredはSOIに対応したBartonへと切り替えられる。HammerのサーバーバージョンはSledgeHammer MP、ClawHammer DPというコードネームが与えられており、それぞれ4~8ウェイ向け、2ウェイ向けと分類されている。これらは2003年からの出荷が予定されている。

 さて、近未来という意味では、Athlon MP用のチップセットであるAMD-760MPの進化版であるAMD-760MPXが近日中に出荷される。AMD-760MPXは、サウスブリッジが従来のAMD-766からAMD-768というAMD-760MPX用に開発されたサウスブリッジで、PCIバスのクロックが33MHzないしは66MHzのどちらかのクロックしか選べないAMD-766に比べて、33MHzと66MHzのPCIバスが共存できるようになっている点が大きな特徴といえる。

 「AMD-760MPXは今四半期中には出荷されるだろう」(マース氏)とのことで、実際にAMDのブースにはABIT、GIGA-BYTE Technology、Tyan Computer、MSIのAMD-760MPXを搭載した製品が展示されていた。Tyan、MSI、ABITのAMD-760MPXマザーボードが公式に公開されたのは今回が初めてで、Thunder K7の後継となるThunder K7X、Tiger MPの後継となるTiger MPXの2製品が用意されているということだ。

AMD-760MPXのサウスブリッジであるAMD-768 ABITのWA-2A。AMD-760MPXを搭載したデュアルK7マザーボード GIGA-BYTE TECHNOLOGYのGA-7PXDW。AMD-760MPXを搭載したデュアルK7マザーボード

MSIのMS-6501。AMD-760MPXを搭載したデュアルK7マザーボード TyanのThunder K7X。仕様的にはThunder K7とほぼ同じで、価格的にも同じレンジになるという TyanのTiger MPX。Tiger MPの768版

□COMDEX Fall 2001のホームページ(英文)
http://www.key3media.com/comdex/fall2001/

(2001年11月13日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]

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