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日立、中間期決算は421億円の赤字。通期も赤字の見通し
売上高、営業損益は、8月に行なった下方修正値を上回る数値となり、底力を見せたものの、その一方で、税引き前当期純損益はマイナス985億円、当期純損益はマイナス1,105億円と当初計画よりも悪化している。
業績悪化の要因となったのは、半導体事業を含む電子デバイス部門の不振。 半導体の需要減と価格下落が大きく影響したことに加えて、ディスプレイ事業が、パソコンおよび携帯電話用のTFT液晶ディスプレイの価格下落により大幅に売り上げ減となり、対前年同期比24%減の7,650億円の売り上げにとどまったことが要因。また、社会インフラなどの設備投資の落ち込みが目立ったことも売り上げ減の原因だと説明しており、電力・産業システムという企業設備投資向け事業の比率が高い重電・日立の特徴をよくあらわした結果となった。 また、通期見通しについては、米国経済の悪化による不況が世界的に広がっているうえ、米国の同時多発テロ事件によるマイナス影響も懸念されていることから、売上高は対前年同期比6%減となる7兆9,000億円、営業損失マイナス300億円、税引き前当期純損失マイナス2,150億円、当期純損失マイナス2,300億円の大幅な赤字としている。 すでに業績悪化に対応するためのリストラ、工場ラインの停止なども進めており、「緊急経営施策を着実に実施することで、業績の早期改善と、抜本的な経営改革・事業構造の転換を進めていく」(日立製作所コーポレート・コミュニケーション本部・広報部)と説明している。 今回の連結決算では、コンピュータ事業を含む情報システム部門では、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立情報システムズのインテグレーション事業およびサービス事業が伸びたこと、海外を中心としたストレージソリューションが堅調に推移し、前年同期比5%増の8,733億円となった。 とくにこれまでに見られなかった傾向として、ソフト/サービスが4,527億円、ハードウェアが4,206億円と、ソフト/サービスが、ハード売り上げを上回る比率となったことがあげられる。大手電機メーカーはいずれも事業の基盤をハードからソフト/サービスへと移行を進めている。日立も同様の施策をすすめているが、今回の業績に関しては、むしろハードの売り上げ不振の影響が大きい。 コンピュータ機器の出荷実績を見ても、汎用機は前年上半期の43%減となる242台。UNIXサーバは9%増となる1,500台、パソコンはサーバーを含め3%減となる30万台と、UNIXサーバーの伸張以外は厳しい結果となっている。 しかも、コンピュータ事業以上に大きく落ち込んだのが、通信向けハードウェアで、「NTTをはじめとするキャリアのハードウェア投資が落ち込み、国内での交換機需要が非常に厳しかった」ことから、はからずもソフト/サービス売り上げがハードを上回る数字となった。 そのため、「今回の結果はあくまで短期的要因のもの。中長期的にはソフト/サービスの売り上げ増につなげる努力はしていくが、今年度の結果と直接には結びつかない」(コーポレート・コミュニケーション本部広報部)と説明している。 情報通信システム部門の下期見通しは、売上高は5%減の9,166億円、営業利益は33%減の244億円。ソフトとハードの比率については、不透明要素が多いことなどを要因に見通しを出していない。 コンピュータ事業の計画では、汎用コンピュータが前年下期を40%下回る164台、UNIXサーバが29%増の1,800台、サーバーを含むパソコンは24%増の42万台。他社の下期のパソコン出荷見通しはかなり辛目になっていることを考慮しても、日立の数字は強気の見通しだが、(1)企業ユースが中心である日立の特性から、下半期は例年需要が拡大する傾向にある、(2)官公庁や一部の企業からは、需要が戻るという好材料があがってきており、こうした需要により出荷拡大が見込める、(3)割合としては少ないものの、コンシューマ市場ではWindows XPというプラス要因がある--という3つを要因としてあげている。
それに対し、コンピュータ事業の収益の要に成長しつつあるSAN/NASのストレージソリューション事業は、上期は20%増の1,200億円と好調なのに対し、下期は7%減の1,300億円と伸び悩む見通しを出している。これは、日立の場合、ストレージソリューション事業売り上げの4分の3が海外マーケットによるもので、「9月のテロ事件以降、米国を中心にマーケットの不透明感が広がり、一部案件が先送りになるといった事例も出てきている。この調子からすれば、かなり厳しいマーケットなることは否めない」と、テロ事件の影響をモロに受けた格好となっているためだ。米国経済については、「来年春から夏頃まで、景気回復は難しいのではないか」との見通しを明らかにしており、ストレージソリューション事業はしばらくの間、苦戦が続く可能性もあるとしている。
□日立のホームページ (2001年10月31日)
[Reported by 大河原克行] |
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