富士通が、再度の下方修正。削減人員の上乗せ、役員報酬カットを発表
~9月中間期決算は、創業以来初の営業赤字に

高谷卓代表取締役副社長

10月24日 発表



 富士通株式会社は、2002年3月期連結決算予想を、再度、下方修正すると発表するとともに、人員削減数をさらに拡大することを明らかにした。

 今回、発表した下方修正では、売上高は5兆2,000億円(前年実績5兆4,844億円)、営業利益ゼロ(同2,440億円)、経常利益マイナス1,000億円(同1,897億円)、当期純利益マイナス3,100億円(85億円)とした。

 7月に発表した修正では、売上高5兆4,000億円、営業利益800億円、経常利益マイナス200億円、当期純利益マイナス2,200億円としていたが、「市況の悪化は週を追うごと、日を追うごとに悪化している。さらに、9月11日の米国の同時多発テロの影響という暗いダメージによって、国内外経済への影響が出ている。先行きの需要回復は厳しく、不透明感がある。2002年度後半以降までは需要回復が見込めない」(高谷卓代表取締役副社長)として、今回の下方修正に踏み切った。

 富士通単体の業績を見ても、2001年9月期の通信事業の売上高は、前年同期比1.2%減であるのに対して、同事業の受注残は同16.6%減、電子デバイスに関しては、売上高23.8%減に対して受注残が42.8%減と、今後の経営悪化が見込まれる指標が表面化している。全社で見ても、売上高は5.6%減に対して、受注残は8.9%減となっている。

 だが、その一方で、同社では、7月の発表で秋草直之社長自らが、「2003年度には、ROE10%以上、4,000億円の利益を計上する」と言及しており、今回の会見でも、高谷副社長が、「経営陣の共通のコンセンサスとして、2002年度には2,000億円から3,000億円の利益を出す体質にもっていき、2003年度には秋草(社長)が掲げた目標を達成する計画に変更はない」としている。

 つまり、市況の回復が見込まれない状況であるとともに、今後、同社の売上が減少するであろうという見通しのなかで、黒字体質に転換するという経営課題に取り組んでいくことになる。

 「今年度は赤字になるとしても、何年間も赤字でズルズルいくことは考えていない」として、来年度以降の黒字化に向けて、今年度下期は、さらにリストラを加速させる考えである。

 今回の発表で明らかになったのは、さらなるリストラ対象人員の増加と、役員報酬の削減、事業構造改善費用の拡大である。

 リストラの対象人員では、7月の発表時点では16,400人(国内5,000人、海外11,400人)の退職、4,700人の異動による21,100人が対象となっていたが、今回の発表では、21,000人(国内5,500人、海外15,500人)の退職、8,500人の異動による29,500人が対象となった。

 また、事業構造改善費用では、当初3,000億円としていたものを、ソフトウェア・サービス部門、情報処理部門、通信部門でそれぞれ100億円ずつを上乗せ、さらに、電子デバイス部門では200億円を上乗せすることにより、合計3,500億円の費用を計上した。

 さらに、役員報酬に関しては、関澤義会長、秋草直之社長の50%削減を最大に、最低15%の削減を11月から実施、さらに、統括部長や部長などの一般管理職の削減についても、「検討中」(高谷副社長)だという。

 だが、一部の管理職の間では、「本日、報酬カットの協力を求めるといった内容の通達があった。削減率などの詳細な点には、まだ言及されていない」という声も出ており、事実上、一般管理職の報酬カットは実施に移される模様だ。

 こうした固定費の削減などにより、体質改善を図る富士通だが、依然として予断を許さない状況だともいえる。

 高谷副社長は、今後も、再度の業績下方修正の可能性はないか、との質問に対し、「あるか、ないかといえば、大ありだ」と答え、依然として厳しい状況にあることを示した。  大幅なリストラを推進し、事業体質の転換を図る富士通の、この下期の取り組みが、数年先の同社の業績に直結するといっても良さそうだ。

 一方、富士通は、2001年9月中間期連結決算を発表したが、創業以来初の営業赤字、8年ぶりの経常赤字、当期利益赤字という厳しい内容になった。

 売上高で前年同期比4.1%減の2兆3,877億円、営業利益がマイナス519億円、経常利益がマイナス1,075億円、当期利益マイナス1,747億円の赤字決算。

 部門別で見ると、ソフトウェア・サービス部門は売上高9,624億円(前年同期比4.1%増)、営業利益は483億円(12.8%減)と増収減益。「e-Japanや、バイオなどの分野に対して、拡販費用を、中間期に集中的に投下したことなどが利益悪化の要因」としている。

 情報処理部門は、売上高が7,852億円(7.3%減)、営業利益はマイナス49億円の赤字。パソコン、ハードディスクの需要減、価格下落が影響したという。

 同社では、今回初めてパソコンの営業利益を明らかにしたが、これによると、9月中間期では31億円の黒字となったものの、前年同期比では81.3%の大幅な減少。通期では、37.5%減の200億円の黒字を見込んでいる。

 なお、パソコンの出荷台数は、中間期実績で国内向けが121万台(前年同期実績135万台)、欧州127万台(同156万台)、北米6万台(8万台)、アジア4万台(3万台)となった。通期計画では、国内向けが279万台(300万台)、欧州317万台(同335万台)、北米12万台(16万台)、アジア9万台(7万台)。

 ハードディスクは、マイナス265億円の赤字、通期では350億円の赤字を見込んでいる。一方、通信部門は売上高で3,218億円(7.1%減)、営業利益でマイナス353億円。北米のキャリア向け光伝送装置の極端な不振が影響しているという。また、電子デバイスは、売上高が3,464億円(19.4%減)、営業利益は、マイナス355億円となり、すべての電子デバイスが所要減となったという。半導体だけでは、180億円の赤字となった。

 地域別では、日本が売上高で1兆9,708億円(4.0%減)、営業利益が232億円(81.3%減)。欧州は、売上高で2,970億円(10.6%減)、営業利益でマイナス149億円の赤字、米州では売上高が2,584億円(26.3%減)、営業利益でマイナス417億円の赤字、その他地域(アジア、オセアニアなど)は、売上高が2,422億円(11.1%減)、営業利益でマイナス272億円の赤字となった。

□富士通のホームページ
http://jp.fujitsu.com/
□2001年度(平成13年度) 単独および連結中間決算概要
http://pr.fujitsu.com/jp/ir/finance/2001h/
□関連記事
【8月20日】富士通、3,000億円をかけた大規模リストラを実施
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010820/fujitsu2.htm

(2001年10月24日)

[Reported by 大河原克行]

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