Seybold San Francisco 2001レポート

Mac OS X 10.1を発表

基調講演を行なったAppleワールドワイド・マーケティング担当上級副社長フィル・シラー氏
会期:9月24日~28日(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Convention Center



 米サンフランシスコでは24日(現地時間)よりSeybold San Fransico 2001がスタート、25日より展示会もオープンし本格的な開催となった。Seyboldは電子出版業界向けの展示会で、DTPからWeb、PDF、電子ブック、さらには映像など多岐に渡る分野をカバーしている。


●Apple上級副社長フィル・シラー氏基調講演

 25日午前9時からはApple Computerのワールドワイド・マーケティング担当副社長フィル・シラー氏による基調講演が行なわれ、ほぼ全面的にMac OS Xの新バージョン10.1についての内容となった。

 冒頭はApple CEOのスティーブ・ジョブズ氏が登場し、Mac OS Xへの移行予定などについて触れ、Mac OS X 10.1が現地時間の29日よりリリースされることを発表。パッケージが129ドルで販売開始され、以前のMac OS Xからは19.95ドルでCD-ROMを入手するほか、販売店で無料アップグレードを受けることもできるという。

 Mac OS X 10.1では、従来のバージョンで最大の問題とされていた速度面で、非常に大きな改善がなされたことを強調した。またDVD-Videoの再生やCD-Rライティング機能といった、Mac OS 9.xにはあってMac OS Xで未対応であった機能もサポートされており、ようやく全ての機能が揃ったというところ。さらに、SMBやNFSなどへの対応も標準で行なわれ、さまざまなネットワーク環境に対応することが強調された。またDVD-Rをファイル保存媒体として標準で利用できるようになった。

Mac OS X 10.1画面。非常に多岐にわたり機能の向上、パフォーマンス改善が行なわれた Mac OS X 10.1で利用可能なDVD制作ツール「iDVD 2」は、カスタマイズ機能が大幅に拡張されている

 AppleはこのMac OS Xを同社の「デジタルハブ」構想の中核と位置付け、DVD制作ソフトの最新版「iDVD 2」などをデモ。また出版業界向け展示会ということもあり、同社のOSレベルで統合された色管理システム「ColorSync 4」や自動化用の「AppleScript」に関するデモも多く行なわれた。

 ColorSync 4では、デジタルカメラからの画像取り込み時に、自動的にプロファイルを含めるよう設定する様子や、その画像をメールソフトなど、特にグラフィックとは関係ないソフトでも色管理が行なわれていることをデモ。また、さまざまなソフトを自動化するAppleScriptを利用し、ネット上の情報を元にグラフィックを変更したり、データベースを元にした自動ページレイアウトなどをデモ。またAppleScript開発に「Project Builder」や「UserInterface Builder」といったAppleの本格的な開発環境を利用できる「AppleScript Studio」も今年中に提供されることが発表された。

Mac OSに統合されたAppleScriptによりレイアウト作業を自動化(デモでは「Adobe InDesign 2.0」などを利用) Mac OS X専用として開発された「Microsoft Office v.X」は、ルック&フィールなど同OSの特徴を良く取り入れている

 Mac OS Xに対応するサードパーティ製ソフトとしては、Mac OS Xのユーザーインターフェイスやグラフィック機能を大幅に取り入れた「Microsoft Office v.X」や、AdobeのHTML作成ソフト「GoLive」の開発途上版をまずはデモ。続いて3Dグラフィック勢としてNewTekの「Lightwave 3D」やハイエンド分野の「Maya」のデモが行なわれた。

Mac OS Xへの移行を時計に例えて、今回のMac OS X 10.1発表が9時にあたると説明
 Appleは従来のMac OSからMac OS Xへの移行を時計に例え、公開ベータ版発表を3時、正式版発表を6時、さらに今回のMac OS X 10.1やさまざまな対応アプリケーション登場を9時とし、最終的に移行する時期、つまり12時は来年春になるとしている。

 確かにOfficeを含めた多くの対応アプリケーションが発表されてはいるが、販売開始段階には至っていない製品がまだいくつも残っている。新しいMac OS X環境を誰にでも薦められるという状況になるまでは、まだ時間が必要かもしれない。


●展示会場

 展示会場ではAppleのほかAdobeが非常に大きなブースを構え、いくつもの新製品を大々的に発表するなど、この分野での存在感を示していた。

AppleブースではMac OS X 10.1のほか、色管理やWebアプリケーションなど展示会内容に沿ったテーマ別の展示も実施 新製品も多く発表し、大きなブースを構えるなど、この業界の巨人となった感のあるAdobeブース

 Corelも「CorelDraw 10」や「Painter」などのグラフィックソフトをデモしたほか、Wacomは米国初公開の液晶タブレット「Cintiq」などを展示。会場では元気な企業の姿を見ることもできた。

「procreate」ブランドでさまざまなグラフィックソフトを提供するCorel DTP専用のページレイアウト・ソフトからXMLやHTML、PDFなどのさまざまなメディア・オーサリングツールへ展開をデモするQuark

 しかし、米国同時多発テロの影響から、東海岸や海外に拠点を置く企業の多くが出展を取り止めるなど、展示会ホールは空きが非常に多く寂しい感じすらする。また来場者も飛行機などを利用しない地元からが大半で、かなり減少していることが見て取れた。経済が下降気味なこととのダブルパンチなのだろうが、かなり痛々しい様子であったのは間違いなかった。

 展示で目新しい「これ」というトピックを見つけにくかった点も挙げられる。強いてあげればクロスメディア、つまり1つのコンテンツ情報を印刷からPDFやWebへ、さらにWebでもPC用のほかに携帯用やPDA用、そして電子ブックなど多彩な形態に展開するためのソリューションだ。いままでもそうした方向性に今後は進むだろうと言われて来たのだが、多くのXML関連ソフトやAdobe製グラフィックサーバーソフトなどのソリューション登場により、次第に現実的なものとなってきているようだ。

 電子出版業界はDTPからはじまり、インターネットによるWeb展開などハイテク産業の発達とともに大きく発展した。しかしIT不況とも呼ばれる現在はこの業界も重大な曲り角に差し掛かっているようだ。会場では「パーティーは終わったのか?」と言われるパネルディスカッションも催され、「次」への突破口を探している。


●追記

 米国内外で多くの展示会が中止となっている中で、強行されたSeybold San Francisco 2001。テロへの不安から厳重な警備が実施され、一般車両は直接会場に乗り入れることができないことや荷物チェックなど、多少ものものしい雰囲気で行なわれている。

 筆者が閉口したのは、特別な場合を除き展示会場への写真・映像機材持ち込みが厳しく禁じられている点だ。許可を得るのにタライ回しにされるなど、かなり駆けずりまわる羽目になってしまった。また写真関連で言えば、Appleは同社ブース敷地内での撮影は一切禁止し、ブース外からの撮影も制限を設けるなど、神経質ぶりが際立っていた。

□Seybold San Francisco 2001のホームページ
http://www.key3media.com/seyboldseminars/sf2001/

(2001年9月26日)

[Reported by Pierre Fujiki]

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