日立、1,400億円の赤字。14,700名を削減
~RAM、DVD-ROM、ISDN交換機などの不調が要因に

日立製作所 庄山悦彦社長
8月31日 発表



 「今後1年は悪い状況からは回復しないだろう。小手先ではない事業構造の見直しをやっていく」(日立製作所 庄山悦彦社長)-日立製作所は、今年末までに14,700人の人員削減を含む緊急経営施策を発表するとともに、2001年度中間期および通期の業績予測を下方修正した。

 今週初めから、月内には同社のリストラ策が発表されると予測されていたが、8月最終日になって、売上高で1兆円規模の大幅な下方修正をはじめとする経営改革を発表することになった。

 業績の下方修正は、「ひとつの分野に集中したものではない」(庄山社長)としたものの、電子デバイス事業におけるDRAMの不振が大きく響いたほか、情報通信分野では北米向けの光通信ケーブルおよび国内ではNTT向けのISDN用交換機の凍結が業績悪化を招き、電子デバイスでは、マイナス1,240億円の営業損失、情報通信でも当初見通しの810億円の営業利益を約半分の480億円(前年比2%減)とした。また、デジタルメディア・民生機器でもパソコン用DVD-ROMが売上で3割減となり、この影響でマイナス70億円の営業損失へと下方修正した。

 これにより、2002年3月期は、売上高で7兆8,500億円(当初見通しに比べて9,000億円の下方修正)、営業利益ゼロ(同2,800億円の下方修正)、税引前当期純損失マイナス650億円(同3,350億円の下方修正)、当期純損失マイナス1,400億円(同2,300億円の下方修正)とした。

 経営責任については、「強く感じている。新たなリスク管理手法を用いて、市場の変動に対応できる体質をつくる」と言及、今回の構造改革では、変動対応力の強化を念頭に置くことを強調した。

 庄山社長が変動対応力を強調する背景には、売価の下落に対応できなかった点がある。

 「'99年4月から事業構造改革、経営改革を実行、固定費および設備投資の削減に取り組んできたが、半導体の売価が35%も下落、ディスプレイでは48%も下落しており、結果としてこの市場変化に追いつかなかった。どの事業部門が悪いというのではなく、全事業において変動幅を少なくすることが重要だと感じている」(庄山社長)という。


 一方、今回の経営改革では、新たにFIV(Future Inspiration Value)という付加価値評価指標を導入し、新たに7つに分類した事業セグメント単位でのポートフォリオの再評価を行なうことを明らかにした。

 また、事業グループ別に固定費の削減目標を設定、今年度末までに全社で600億円の固定費削減をするほか、電子デバイスなどの業績悪化が顕著な部門を中心とした生産拠点を子会社を含めて整理統合および人員削減により連結ベースで約1,300億円の固定削減を目指す。

 当初2万人規模とも見られていた人員削減では、半導体グループ、ディスプレイグループを中心とした事業再編によって、子会社を含めて国内10,200人、海外4,500人の合計14,700人の削減となった。

 さらに、設備投資の見直しとして必要最低限の投資に絞り込むほか、日立グループ全体における調達仕様、方法を見直し、ネットによる集中購買、物流コストの大幅低減を軸とした取り組みにより、資材調達コストを2年間で現在の20%減にあたる約6,000億円の削減を見込む。

 また、「Cプロジェクト」の名称で、戦略投資資金の確保、有利子負債の圧縮を図るべく、棚卸資産と売掛債権の手持ち日数を短縮、キャッシュフロー1兆円の改善を図る。さらに、「A計画」の名称で、各事業グループにおいて、2~3年以内に世界のトップ集団を走る事業および業務を育成する計画を推進、このA計画の対象となる製品、サービスの売上げ規模を2001年度には1.5倍規模に、2002年度には2倍規模として、事業の選択と集中を図る。現在、各事業部から約100の候補があがっており、今後、これを選択していくことになる。


 一方、事業部門別に見ると、情報通信システムの事業強化としては、「SAN/NASストレージソリューション事業」の強化を掲げている。庄山社長は、この分野でのM&Aを積極化していくことを明らかにし、2001年度には3,100億円、2002年度には4,000億円を目指す。

 また、デジタルメディア関連では、情報・ネットワーク技術、電子デバイス技術、ソリューション技術の活用により、家電製品のネットワーク化、デジタル化を推進、松下電器と協力して、ホームネットワーク家電のデファクトスタンダードづくりをすすめる。

 一方、半導体事業に関しては、前行程を担当するラインを19ラインから13ラインへと縮小、後行程については13拠点を8拠点に集約して、他事業グループへの異動を含めて2,000人の削減を行なう。

 ディスプレイ事業部門では、すでにパソコン用ブラウン管からの撤退を発表しているが、年末までに国内外における生産を停止、売却の具体的な交渉をすすめている。これにより、同事業による赤字解消を図るとともに、約2,600人の人員削減を行なう。今後、ディスプレイ事業はTFT液晶を中心とするフラットパネルディスプレイにリソースを集中、テレビ用ディスプレイについては事業再編を検討する考え。

 今回の日立のリストラ策は、市場の変化に経営改革がついていかなかった点が大きな問題といえる。そのなかで、9,000億円の大幅な売上高の下方修正は、見通しの甘さを指摘されても仕方がないことだ。また、今回新たに発表されたFIVの手法も、その評価基準などが明確化されなかったのは残念なところだ。

 「これまでは連結決算に留まっていたグループ経営を、連結経営といえるところにまで高めたい」と、庄山社長はグループ経営の強化を標榜したが、これが、結果として、もたれあい構造を生まないことを祈りたい。

□日立製作所のホームページ
http://www.hitachi.co.jp/

(2001年8月31日)

[Reported by 大河原克行]

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