東芝、1,200億円のリストラ。17,000人を削減
~メモリ事業の売却も視野に

岡村正社長

8月27日 発表



 NEC、富士通、松下電器、ソニーと電機大手の相次ぐリストラ策の発表に続いて、東芝も 国内人員の12%にあたる17,000人の人員削減、1,200億円の事業構造改革費用を計上したリストラ策を発表した。

 「01 Action Plan」と題した今回の経営施策では、今年6月に発表した2003年度までの中期計画で目標とした経常利益4,500億円の数値目標は変更せず、競争力強化、軽量化経営の実現により、これを達成するというものだ。

 だが、その内容は、「大きな痛みを伴うもので、真の変化を恐れず、過去の東芝の形を変える」と東芝の岡村正社長が断言するように、大規模な構造改革となっている。

2001年度業績見込

 アクションプラン策定のきっかけとなった今回の業績修正では、今年度通期決算で、売上高5兆7,500億円(6,900億円の下方修正)、営業利益ゼロ(2,000億円の下方修正)、税引前損失マイナス1,900億円(3,000億円の下方修正)、当期損失マイナス1,150億円(1,750億円の下方修正)とした。

 中間期決算についても、売上高2兆6,500億円(2,100億円の下方修正)、営業利益マイナス800億円(1,250億円の下方修正)、税引前損失マイナス1,800億円(1,900億円の下方修正)、当期損失マイナス1,100億円(1,150億円の下方修正)とした。

 岡村正社長は、今回の下方修正について、「中間期および通期決算が赤字計上の見通しとなったこと、さらに、中間配当がゼロとなることは、経営者としての責任は重大だと理解している。将来に向け、真の変化を恐れず、新しい東芝をリジェネレイト(再創)したい」と、経営改革にかける決意を語った。


 今回のアクションプランでは、「競争力強化」と「軽量化経営」の2つを骨子としている。

 「現在のIT不況は、単なる低迷ではなく、構造的な問題だと認識している。その観点からプランを策定した」(岡村社長)として、グループ全体の抜本的な見直しにも及んでいる。

 軽量化経営としては、国内体制の再編が主軸となっている。

 国内生産拠点の再編および統廃合として、国内21拠点のうち6拠点の閉鎖あるいは機能統合を図るほか、国内生産およびエンジニアリング会社を統廃合し、現在98社を4分の3の規模にする。

 また、人員削減では、2003年度末までにグループ人員188,000人の10%の削減を予定している。具体的には、国内人員の12%にあたる17,000人の削減、グループ内分社をはじめ、新会社設立、強化部門などへのシフトといった国内グループ1万人の人材流動化の実施、期間限定の自立自営支援制度の実施を行なう。自立自営支援制度の詳細は明らかにはされなかったが、これに伴う退職金、支援金などで事業構造改革費用1,200億円のうち半分にあたる600億円を計上している。

 さらに、今年6月の中期経営計画の発表時点で明らかにしていた流動資産の効率化による3,500億円の資産圧縮に加え、事業構造見直しで1,200億円、保有株式の売却で500億円、不動産の流動化で1,000億円、リースの活用で1,000億円、グローバル資金管理で800億円の合計4,500億円を新たに上乗せした。これにより、今年度中に1,000億円の資産圧縮を積み上げる。

 そのほか、調達コストの大幅な削減にも乗り出す。

 「社外の調達先だけに留まらず、国内調達で50%を占める国内関連企業からの調達にもメスを入れる」として、現在6,570社の調達先を半減、今後2年間で20%の削減となる5,600億円の削減を目指す。

 「小さい取引が数多いというのも、効率化にマイナス」だとして、こうした中小規模の取引先との関係も見直す考えだ。

 また、デジタル関連機器開発技術者に関しては青梅工場に集結する一方、競争力強化のための海外生産拠点の拡大を掲げており、その結果、今回の構造改革では、海外における人員数は据え置きとすることを明らかにした。

事業構造見直しの方向付け

 競争力の強化としては、東芝のグループの新たな枠組みとして、事業を「産業・社会」、「個人」、「部品」の3つの領域にわけ、さらに、勝ちパターン事業モデルとして、「イノベータ型事業」、「インテグレータ型事業」、「プラットフォーム型事業」に分類し、これに向けた事業の見直しを行なう。

 岡村社長によると、「最先端技術を生かし、自ら開発、製造、販売を行なうイノベータ型事業は、インテルの事業モデル。自らの強みを生かして外部リソースとの組み合わせで顧客ニーズに対応するインテグレータ型事業はデルコンピュータの事業モデル。自社の強い特定機能を徹底的に磨き上げ、競争力のある地位を確保するプラットフォーム型事業はソレクトロンの事業モデル」と位置づけ、「自前主義からの脱却とともに、3つの領域をあわせもつ強い複合電機メーカーを目指す」とした。

 パソコンやモバイル事業は、インテグレータ型事業とし、フラッシュメモリ、ポリシリコン有機EL、ハードディスクなどはイノベータ型事業、CRT、コンテンツなどはプラットフォーム型事業に分類した。

 また、東芝では、TVC(TOSHIBA Value Created)と呼ばれる事業選択基準を策定し、この選択基準を下回る事業に関しては再編を図る方針を示した。具体的には、この基準を2半期連続で下回った事業は要注意事業と位置づけ、4半期連続の場合には、選択事業として整理の対象とする。岡村社長によると、「宇宙システム事業、系統・変電事業、メモリ事業、液晶事業、CRT事業などが2半期連続のTVC基準マイナスとなっている」ということだ。だが、「すぐに整理というわけではなく、一部分割なども視野に入れて再編を検討したい」という。

 当面の同社の構造改革および再編の話題の中心は、やはり一部でとりざたされている半導体事業の売却などになっていきそうだ。今回の会見では、そのあたりは「相手があること」として、口を濁したが、半導体事業部門の再編が、今後の重要な注目点といえるのは間違いない。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□下方修正のニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2001_08/pr_j2702.htm
□01アクションプランのニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2001_08/pr_j2701.htm
□関連記事
【8月27日】【大河原】東芝がコンシューマ市場強化を図る理由
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010827/gyokai10.htm

(2001年8月27日)

[Reported by 大河原克行]

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