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「Streaming Media West 2001」展示会場レポート
場所:Long Beach Convention Center
●Javaアプレット形式の画像コーデック
フィンランドのヘルシンキから来たOPLAYO OYのブースでは、JavaベースのMVQという圧縮コーデックがデモされていた。このコーデックは、Javaのアプレット形式になっておりサイズは10KBほどの大きさだ。 コーデック自体は、独自のものだが、Javaベースで記述されているため、Javaを搭載した携帯電話などでも映像を再生できる。実際、デモでは、NOKIAのJava内蔵携帯電話で同じ映像を再生していた。 MVQは、オリジナルイメージを4ピクセルごとに分け、その4ピクセルに応じたコード番号を割り振る。次のフレームでも同じように、4ピクセルごとに分け、変化した部分のコード番号を送る。この方式では、フレーム数が上がらなければ、大幅な圧縮をおこなうできる。この圧縮方法は、H.263などのTV電話に用いられているモノとコンセプトはいっしょだ。ただし、MVQではコード表や分割するピクセル数など、改良されているところが多い。このコーデック自体は、高解像度の映像にも対応できるが、そのアーキテクチャから、解像度の低い携帯電話などが主なターゲットだろう。 独自方式のコーデックを利用しているため、画像のエンコードにも、自社の専用ツールが必要となる。このツールはPC上で動作し、AVI、MPEG-1、MPEG-2、MJPEG、QiuckTime、DV(コーデックが必要)、DVD(コーデックが必要)などの映像を入力として、MVQ方式に圧縮できる。 データ量を考えれば、クオリティはいいほうだ。なんと言っても、コーデックがJavaアプレットで記述されているため、どのようなプラットフォーム上でも動作するのは大きなメリットだろう。
□OPALYO OY
●Windows Media 8中心のMicrosoft
Microsoftは、Widnows Media 8を中心にしてブースが構成していた。いつものように、1,024×768ドットのHDTVクオリティの映像展示や、RealPlayer8の比較展示が中心だ。 また、今回発表されたMicrosoft Producerがデモされていた。これは、以前提供されていたOn Demand Producerをバージョンアップしたものだ。基本的には、Office XPユーザー向きのツールで、オーディオやビデオに合わせて、プレゼンテーションを切り替えたりできる。さらに、HTMLページに出力し、1つのページで動画とプレゼンテーションを同時に表示できる。
□Microsoft Producer 製品情報
●RealPlayerの再生速度可変プラグイン EnounceのRealPlayer用のプラグインは、なんと再生スピードを可変にする。
通常のRealPlayerでは、標準スピードしか再生ができないが、このプラグインを入れれば、0.3倍(スロー)~2倍(倍速)まで可変となる。データがすべてダウンロードされていればベストだが、回線スピードが速ければストリーミングでも利用できる。 英語が苦手なユーザーにとっては、スロースピードで英語が聞けるからわかりやすいかもしれない。
□Enounce
●全周撮影できる映像システム
BeHereの映像撮影システムは、カメラに特殊な鏡をつけて、360度全景の撮影ができる。この映像をPCに取り込み映像を修正して全周画面にする。プラグインを入れれば、WindowsMedia、RealPlayer、QuickTimeなどで再生できる。NFLやNBAなどのインターネット放送でテスト利用されており、自由に方向を動かして、360度いろいろな角度から映像が見られる。
□BeHere ●映像の自動インデックスシステム Lernout&HauspieのMediaIndexerは、長時間の映像に自動的にインデックスをつけるシステムだ。たとえば、1時間の講演の映像をすべて見るわけにいかないときなど、これを利用すれば、「Computer」と発音している音声のマッチングを行ない。Computerと発音しているシーンにインデックスをつけて、すぐにその場面が見られる。
同種のインデックスシステムは、いくつかの会社からリリースされており、数年前にクリントン前大統領のセックススキャンダルの証言テープが公開されたときには、長時間のテープから特定のシーンを抜き出すことに利用された。
□Lermout&Hauspie ●MPEG-4に注力するPhilips
Philipsは、MPEG-4のコーデック、プレーヤー、エンコーダー、サーバー、編集ソフトなど、MPEG-4に関する一連のソフトウェア群を展示していた。 特に注目されたのが、エンコーダーと編集ソフトだ。MPEG-4エンコーダー「WebCine Encoder」は、リアルタイムでエンコードできる。ビットレートなどのパラメーターの設定はメニューで行なえる。 編集ソフトは、MPEG-4のオブジェクトをサポートしているため、画像にCGのエフェクトをかぶせることもできる。MPEG-4のフルファンクションを、利用できるわけではないが、MPEG-4ベースの編集が行なえるソフトとして注目されていた。
□Philips ●P2P技術を活かしたCDSシステム 展示会場には、AkamaiやInktomiなど、有力なコンテンツ・デリバリー・サービス(CDS)企業もブースを出している。しかし、これらのCDSとまったく違ったアイデアで、スムーズなストリーミング配信を行なおうとしているのが、Vtrailsだ。ここの特徴は、P2P(Peer To Peer)モデルを利用したストリーミング配信システムだ。 ストリーミング配信にとって、大きな障害は、1つのサーバーにアクセスが集中して、サーバーに負荷がかかりすぎ、動画の転送レートが落ちたり、サーバーに接続されている回線にも負荷がかかりオーバーフローしてしまうことがある。 対処法としては、サーバーの数を増やしたり、回線幅を増やしたりしていくことになる。また、CDSを利用して、インターネットとは別の専用回線でISPを接続して、インターネット上の負荷を軽くし、特定のISPには高いクオリティの映像を配信しようとしている。 しかし、これらのモデルでは、映像配信に大規模なサーバーや回線が必要になってくるため、高いクオリティの映像を配信するためには、コストがかかりすぎる。 Vtrailsは、エンドユーザーのPCに専用のソフトをインストールして、エンドユーザーのPCからネットワーク上で近くにある別のPCに映像を配信しようというものだ。これにより、コンテンツサーバー側は、1つのISPには1つのストリームだけを配信するばよくなる。これにより、インターネットの混雑したネットワークでも、スムーズにストリーミング配信が行なえる。 Vtrailsのシステムでは、コンテンツを配信するためのストリーミングサーバーの直後に、vTcasterという配信コントロールサーバーが置かれている。さらに、vTpassというソフトウェア・モジュールが、あらかじめ各PCにインストールされている必要がある。この二つを除けば、ストリーミングサーバーやプレーヤソフトは、既存のものがそのまま利用できる。 ストリーミング配信を行なう前に、VTpassとvTcasterは通信を行ない、クライアントのIPアドレスをチェックして、効率的なバーチャル・ネットワークを設計する。そして、vTpassがインストールされた各クライアントに、自分が転送すべきユーザーのIPアドレスを配布することでネットワークが構築される。 サーバーは、ISPに向かって、単一のストリーミングデータだけを配信すればいい。あとは、vTpassがインストールされたPCが、自動的にルーティングを行ない、指定されたクライアントにストリーミング配信をおこなう。 実際に、デモを見たところ、クライアントPCを経由する際に、ストリーミングのディレイがおこるようで、100%リアルタイムというわけにはいかない。なお、クライアント側では、ストリーミングを転送しているだけで、HDDなどへのキャッシュはしていない。転送にかかるサーバーの負荷をクライアントPCに振り分けていこうというアイデアなのだ。このシステムは、現在βテストを開始した直後で、今年の秋頃の完成を目指している。 ただし、vTrailsにもいくつかの欠点がある。 まず、 クライアントPCはADSLや光ファイバーなどの速い回線に接続されている必要がある。遅い回線のPCがあると、そこがボトルネックとなってしまうのだ。 また、同じ時間帯に映像をストリーミングするイベント(スポーツ中継、コンサート中継など)にはぴったりだが、リクエスト型のオンデマンドサービスには対応しにくいだろう。個々のユーザーが、リクエストしたときから映像が始まる映画サービスなどでは、このシステムのメリットが発揮できないのだ。
□Vtrails
□Streaming Media Westのホームページ(英文) (2001年6月22日)
[Reported by 山本雅史] |
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