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COMPUTEX TAIPEI 2001会場レポートAMDのSFF向け戦略が明らかに
会期:6月4日~6月8日
COMPUTEX TAIPEI 2001の2日目に、AMDは同社初のサーバー/ワークステーション向けのソリューションとなるAMD Athlon MPプロセッサとAMD-760MPチップセットを発表した。この模様については既にお伝えした通りだが、COMPUTEX TAIPEIでは、さらにそのAMD-760MP搭載マザーボードについての話題やAMDのSFF(Slim Form Factor、薄型ケース)向けCPUに関する戦略なども明らかになってきた。
【お詫びと訂正】
今回AMDがAMD-760MPのラウンチパートナーに指名したのはTyan Computerで、既にそのマザーボードThunder K7は秋葉原でも販売されるなど注目の製品と言ってよい。ところで、このAMD-760MPを搭載したマザーボードはTyan以外のベンダーでも展示されている。それがMSI ComputerのK7D Master-LRだ。しかしながら、よく見てみるとThunder K7とK7D Master-LRには決定的に大きな違いが2つある。それが以下の点だ。
(1) K7D Master-LRにはAthlon MP用8ピンの電源コネクタではなく、
そこで、各方面に取材してみたところ、どうやらこのサウスブリッジはやはりこれからAMDがリリースする予定の新サウスブリッジであるらしいことがわかった。実は、その新サウスブリッジに関する情報はAMD-760MPのデータシート( http://www.amd.com/products/cpg/athlon/techdocs/pdf/24416.pdf )を見ると載っている。AMD-760MPのデータシートによれば、AMD-760MPにはAMD-762+AMD-766という標準構成以外に、AMD-762+新サウスブリッジという組み合わせが用意されており、そちらはAMD-760MPXという別の製品名が用意されていることが記載されている。なぜこうした別バージョンが用意されているかと言えば、それは現行のサウスブリッジであるAMD-766が66MHzのPCIインターフェイスに対応していないためだ。 AMD-762はPCIバスインターフェイスとして、クロックは33MHz、66MHzの両方に対応している。33MHz時には7つのPCIバスマスタデバイスをサポートし、66MHz時には2つのPCIバスマスタデバイスをサポートする。しかし、AMD-766は33MHzにしか対応していないため、実際にAMD-766を利用する場合にはノース・サウス間のバスは33MHzに固定になる。しかし、新しいサウスブリッジは66MHzのPCIにも対応しており、さらにセカンダリPCIバスを構成するためのPCI-PCIブリッジの機能を持っているので、別のPCIバスを用意することができる。つまり、下記のようになる。
【現行AMD-760MPの場合】
【AMD-760MPXの場合】 AMD-760MPXでは66MHzのPCIと33MHzのPCIを混在することが可能になっており、66MHzのPCIバスマスタデバイスを2デバイス利用し、それとは別に33MHzのPCIデバイスを複数利用することができる。 もう1つはVIA TechnologiesのVT82C686Bというサウスブリッジを使う方法だ。これであれば、AMD-766を使う場合よりも安価に構成することができる。実際、AMDはVT82C686Bを利用した場合のデータシートをリリースしている。今回のThunder K7ではVT82C696Bが採用された例であるようだ。実際に、海外のWebサイトではシールなしの写真を掲載している例もあり、そちらであるということで間違いないようだ。 また、本製品はThunder K7に搭載されているQlogicのサーバーマネージメント用チップ、Ultra160対応SCSIホストコントローラなどが省略されており、マザーボードの大きさもThunderK7とくらべて小さくなっている。このこともあり、圧倒的に安価な価格でリリースされる可能性が高く、MSIに近い筋によればエントリー向けのデュアルマザーボード(3万円~4万円)に近い価格で、Tyanよりも1~2カ月遅れでリリースされる予定だという。サーバー用機能やSCSIホストコントローラなどが必要ではないワークステーションやPC向けなどに使いたいユーザーであれば、この製品を待つのがいいかもしれない。
台湾のマザーボードメーカーは各社ともベアボーンシステムと呼ばれるケースにマザーボードを最初から組み合わせた製品を積極的に製品化している。また、マザーボードメーカーは日本メーカーも含めた大手PCメーカーに対してシステムごとOEM供給しており、そちら向けの製品も開発が進んでいる。そうした台湾のコンポーネントメーカーの間では、35WのCPU消費電力をターゲットにしたAthlon向けスリムケースの開発が進んでいるという。なぜかと言えば、「AMDが今後SFF(Slim Form Factor)向けCPUは、35Wの消費電力をターゲットにすると通知してきた」(あるケースメーカー関係者)という事情があるからだ。 情報筋によれば、AMDは今後SFF向けのPCはTDP(Thermal Desgin Power、熱設計に利用する最大時の消費電力)の値は35W、ケース内温度(Tcase)は摂氏90度というというデータを基に熱設計を行なって欲しいとOEMメーカーに対して説明しているという。このため、各メーカーともこの仕様に基づいたケースなどを設計しているというわけだ。 実は、OEMメーカーに対しては以下のようなSFF向けCPUロードマップが提示されている。
これらのCPUはすべて消費電力の上限が35Wに設定されているという。例えば、第2四半期にリリースされるSFF Athlon 1.1GHzはコア電圧が1.4Vで35Wとなっている。また、第3四半期にリリースされるSFF向けPalomino 1.1GHzはコア電圧1.6Vで35W、Palomino 1.2GHzはコア電圧1.5Vで35Wとなっており、すべてのクロックで消費電力が35Wに設定されている。こうしたロードマップがあるため、AMDがOEMメーカーに対して35Wを基に設計して欲しいとアナウンスしているのだ。 AMDがこのように、どのクロックでもコア電圧を変動させることにより消費電力35Wを実現しようとしている理由は、歩留まりを少しでも上げたいと考えているためだろう。電圧を下げれば、どんどん高クロックで動作させるのが難しくなるが、電圧を上げることができれば少しは歩留まりを上げられるからだ。また、こうしたプランはメーカー側にもメリットがある。一度35Wにあわせたスリムケースを作ってしまえば、あとはCPUのクロックをあげても熱設計をやり直す必要はなくなるというメリットがある。例えば、仮に今四半期にAthlon 1.1GHzのSFF PCを出したメーカーは、全く同じケースで、冬には1.3GHzのマシンを出荷できるのだ。
AMDがこうしたSFF向けの戦略を打ち出した背景には、IntelのSFF向けCPUが今後手薄になるためだと考えられている。IntelはOEMメーカーに対して、Pentium 4へ急速に移行するように促しており、実際、世界的に見れば移行は進みつつあり、Intelも今後はボリュームはPentium 4へという流れになりつつある。 しかし、日本市場はSFFがハイエンドからローエンドまでという特殊な市場である。大手PCメーカー担当者は口を揃えて「現在のPentium 4はとてもではないが、日本のスリムPCケースには入らない」と言っており、実際0.13μmプロセスのNorthwoodまではSFFのPCへ入れるのは難しいと考えているメーカーが多い。さらに、Pentium IIIの0.13μm版であるTualatin-256Kも供給量が十分なものではなく、しかもより上のクロックであるPentium 4よりも高価な価格設定がされている。つまり、IntelのSFF向けCPUは、Northwoodが出回るまで非常に手薄となる可能性が高い。そこで、こうした魅力的なSFF向けCPUを投入することにより、SFFの市場でIntelにうち勝とうというのがAMDの戦略であると考えることができるだろう。 日本市場は、ほかの市場とは異なるやや特殊な市場になりつつある。日本向けに魅力的な熱設計のソリューションを示すことができるか、これがCPUメーカーにとって日本市場で勝ち残るための重要なポイントになってきていると言えるだろう。
□COMPUTEX TAIPEI 2001のホームページ(英文) (2001年6月8日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング] |
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