NVIDIA開発マネージャChris Seitz氏インタビュー
来年末にはGeForce3コアの統合チップセットが登場

Manager of Developer Tools担当Chris Seitz氏


 NVIDIAのManager of Developer Tools担当Chris Seitz氏が7日に開催される技術者向けセミナーに参加するために来日した。PC Watchでは、5日にCOMPUTEX TAIPEIで発表されたGeForce2コアを統合したチップセット「nForce」について、お話を伺った。


Chris Seitz氏:まず最初に、NVIDIAの戦略とロードマップについてご説明します。米Mercury Research Dataの調査によれば、現在PC用のスタンドアロングラフィックス分野で、当社は65%のシェアを持っています。過去数年に当社は著しい成長を遂げ、XBoxのGPUとMCPに技術を供給しています。これは我々にとって新しい市場です。

 SGIでは、最大8~12人の開発者で新チップの開発を行なっていましたが、当社では現在60人が開発に携わっています。NVIDIAでは、ムーアの法則の3倍を開発の目標としています。具体的には、6カ月で新アーキテクチャの開発、12カ月後には同じコアを汎用の製品に投入し、18カ月後には統合型のチップセットに投入します。また、その製品群を個々のドライバで動かしていたのでは、開発者にとっての負担になることから、NVIDIAではすべての製品群を1つのドライバで動かすUnifiedドライバアーキテクチャを採用しています。これらが今日現在のポジションを維持していくためのNVIDIA全体の方向性です。

 GeForceでは、おかげさまで、ワークステーション、通常のPC、Macintosh用に加え、モバイル向けの低消費電力のコアも開発できました。GeForceシリーズで更に展開すると共に、ゲームコンソールやインターネット関連で展開分野を増やしていく予定です。

 出荷ベースでは、オンボードのグラフィックス市場は、市場全体でもっとも大きく、55%を占めています。我々は、その市場にXboxで培った技術とバンド幅の広いメモリをインテグレートしたチップセット「nForce」を作りました。搭載マザーボードは、この秋に出荷され、ASUS、Gigabyteなどから発売されます。

 nForceは、まったく新しいアーキテクチャです。今までPCはインターネットやEメールなど比較的簡単なものに使われていました。しかし、現在ではビデオ編集や3Dグラフィックス、TV/HDTVやホームネットワーク、MP3リッピングなど多くの用途が要求されます。

nForceを搭載したデモ機 nForce搭載のリファレンスボード。上に刺さっているのはドルビーデジタル出力用カード

 今までのPCのアーキテクチャは、さまざまな機能を単にくっつけただけのものでした。nForceでは全く異なり、IGP(Integrated Graphics Contoroller)プラットフォームと、MCP(Media and Communications Processor)プラットフォーム、CPUプラットフォームで構成されます。それぞれは並列して動作し、世界でもっとも速いアーキテクチャと言え、ほかのオンボードグラフィックスソリューションに比べ、5~10倍のパフォーマンスを持ちます。また、我々は初めて、リアルタイムに5.1chステレオを生成するドルビーデジタルエンコーダを内蔵しました。

 IGPは、内部にGeForce2コアを持ち、TwinBankメモリアーキテクチャを搭載しています。TwinViewではマルチパスメモリコントローラを備え、CPUやグラフィックスと同時に通信することが可能です。マルチパスメモリコントローラは、SGIのワークステーション「Octane」などにも採用されていましたが、我々はそれをメモリコントローラに内蔵しました。

 また、DASP(Dynamic Adaptive Speculative Pre-Processor)と呼ばれる技術を採用しています。DASPでは、CPUが次に読み込むメモリを推測して、あらかじめキャッシュしておくことにより、同じCPUでも20%効率を向上することができます。

 これらにより、nForceのメモリパフォーマンスのベンチマークでは、現在もっとも高速で、Intel 850とPentium 4 1.4GHzの組み合わせよりも、nForceとAthlon 1.2GHzの方がパフォーマンスが優れています。nForceは、内部ではAGP 8Xモードで接続されているほか、外部AGPスロットも備え、GeForce3などの高速なビデオカードを使用することも可能です。nForceには、420Dと220の2つのラインナップが用意され、420の方がバンド幅の広いメモリバスを備えます。

 IGPとMCPの接続には800MB/secのバンド幅を持つAMDのHyperTransportを採用しました。

ヒートシンクが装着された状態のIGP コミュニケーションとオーディオ機能を統合したMCP

 MCPは、コミュニケーションポートやオーディオを担当します。USB×6ポート、100Base-TX対応Ethernet、HomePNA、UltraATA/100、ソフトモデムなどのコミュニケーションインターフェイスに加え、APU(Audio Processing Unit)を搭載しています。

 APUは、もっとも進んだオーディオと言えます。最大256音、64 3Dボイス、129 2Dボイスの同時発音が可能で、多すぎるくらいです(笑)。また、ドルビーデジタル5.1chをリアルタイムエンコード可能です。ゲームをするときの背後の音や、リバーブ、ドップラーエフェクトなどを表現可能でXboxと同じ機能を持ちます。

3Dオーディオを使用したゲームデモ。40個の薬莢の音が個別にレンダリングされているという NVIDIAが無償で公開予定のWinamp用3Dプラグイン。音楽にあわせて人が踊る


編集部:nForceに搭載されたMCPと、XboxのMCPは異なるものなのでしょうか?

Chris Seitz氏:製作プロセスが異なるため、厳密には同じものではありませんが、コンセプトは同じですし、ほとんど同じものと考えていただいて結構です。

編集部:nForceは次世代のPalominoコアには対応できますか?

Chris Seitz氏:我々はAMDと親密に開発を行ないましたので、対応はできるはずですが、現状ではなんとも言えません。

編集部:nForceはAMDベースのチップセットですが、Intel向けの統合チップセットの予定はあるんでしょうか?

Chris Seitz氏:現在、公式には何もお答えすることはできません。我々はPentium 4のバスライセンスを持っておりませんので、公式にはお答えすることができないのです。

編集部:MCPは非常に高機能ですが、MCPとほかのノースブリッジを組み合わせて使うような事は可能なのでしょうか?

Chris Seitz氏:ご存じのようにXboxはIntelベースですし、AMDとはエクスクルーシブライセンスではありませんが、そのような組み合わせを検討したことはありません

編集部:nForceはSiSやVIAとは異なるところを目指しているので、競合はしないとCOMPUTEXで言われていましたが、本当にそうでしょうか?

Chris Seitz氏:nForceは異なるプラットフォームですし、戦略も異なります。しかし、それらは統合チップセットですから、市場での競合はありえますが、技術の方向性としてはまったくちがうものを目指しています。

編集部:チップセットの価格は明らかにされていませんが、もし可能でしたらお教えください。

Chris Seitz氏:申し訳ありませんが、我々から価格を申し上げることはできません。価格はOEM先のマザーボードメーカーにお尋ねください。

編集部:今までは、統合チップセットといえば価格重視だったと思うのですが、今までは異なるコンセプトということで、どのような戦略を取られるのかをお教えください。

Chris Seitz氏:NVIDIAの見方としてはいいお客様を見つけて大量に出荷するということです。すでに我々はマザーボードでトップベンダーに出荷しています。彼らが採用していただけるのは、コストに対してパフォーマンスが非常に良いという事です。大量に買っていただけるお客様を優先するのが戦略と言えるでしょう。

編集部:マザーボードメーカーが、nForceの供給を受けるには、特別な条件などを必要とするのですか?

Chris Seitz氏:我々は普通の方法で営業をしています。現在、ASUSやGigabyteなどトップベンダーに採用されており、我々はそこへの供給を優先していきたいと考えています。

編集部:nForceに統合されているのは、GeForce2 MX相当ということですが、GeForce2 MXと比べて追加されている命令などがあるのでしょうか?

Chris Seitz氏:違いは主にメモリインターフェイスのみで、コアは変更されていません。メモリインターフェイスの変更によりパフォーマンスが改善しています。同じコアで64bitメモリインターフェイスを持つ220では、ほとんど同じパフォーマンスですが、128bitの420Dでは30%以上の改善が見られます。

編集部:それはつまり、今まではメモリのバス幅がボトルネックになっていたということなのでしょうか?

Chris Seitz氏:アプリケーションによっても異なりますが、そういうことになります。

編集部:GeForce2 MXの機能のひとつにTwinViewがありますが、nForceではTwinViewはサポートされるのでしょうか?

Chris Seitz氏:はっきりした事は申し上げられませんが、確かサポートしていなかったと思います。今回の製品ではサポートはされていませんが、次世代製品ではサポートされるでしょう。

編集部:内部AGPと外部AGPの同時使用には対応できますか?

Chris Seitz氏:今回の製品では対応していませんが、次世代製品では対応します。

編集部:nForce用のドライバもUnifiedドライバで供給されるのでしょうか?

Chris Seitz氏:最終的な決定はまだされていないのでわかりませんが、Unifiedドライバで供給される予定です。ただ、MCPのドライバは頻繁に更新が必要になるため、ドライバは2つに分けられるかもしれません。

取材協力 シリコンスタジオ 株式会社

□NVIDIAのホームページ(英文)
http://www.nvidia.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.nvidia.com/view.asp?IO=IO_20010601_4331
□関連記事
【6月4日】NVIDIAがNV-CrushことnForceを発表。Athlon/Duron対応
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010604/comp02.htm

(2001年6月6日)

[Reported by taira@impress.co.jp]

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