COMPUTEX TAIPEI 2001レポート

Intel副社長ビル・スー氏グループインタビュー
~プライスポイントを増やすためPentium 4のクロックグレードを拡張する

Intelアーキテクチャグループ ジェネラルマネージャ兼副社長 ビル・スー氏

会期:6月4日~6月8日
会場:Taipei International Convention Center(TICC)
   Taipei World Trade Center(TWTC) Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center(TWTC) Exhibition Hall 2




 COMPUTEX TAIPEIが行なわれている会場近くのホテルにおいてIntelアーキテクチャグループ ジェネラルマネージャ兼副社長のビル・スー氏が日本のプレスとのグループインタビューを行なった。このレポートでは、その中でもPentium 4に関する内容をピックアップし、COMPUTEXで集めたPentium 4に関する最新情報を交えつつお伝えする。


●Pentium 4は必ずスリムPCにも入るようになる

マザーボードベンダのブースなどに展示されている478ピンのFC-PGA2パッケージのモックアップ。黒い部分がスー氏の話にでてくるヒートスプレッダのIHS(Integrated Heat Spreader)
Q:Pentium 4の消費電力は非常に大きく、日本のOEMベンダはSFF(Slim Form Factor)プラットフォームのPCにPentium 4を搭載するのは難しいと言っています。Pentium 4の消費電力は今後下がるのでしょうか?

スー氏:確かに、Pentium IIIに比べ、Pentium 4の消費電力が高いのは事実です。その代わりパフォーマンスも高い。おっしゃるとおり、SFFのPCに搭載する場合に、若干の問題に直面するというのも事実です。もちろん、長期的には問題を解決していこうと思っています。最初の取り組みは、0.13μmプロセスの導入です。0.13μmプロセスを導入することにより、ダイサイズも小さくなりますし、同じクロックであれば消費電力は下がります。

Q:製造プロセス以外にはどのような取り組みがされるのでしょうか?

スー氏:もちろん、プラットフォームの側でより熱設計を高める工夫をしていきます。今回のCOMPUTEX TAIPEIにおけるIntelのデモショーケースでは0.18μmプロセスのPentium 4をSFFで動作させるデモを行なっていますし、複数のベンダーも同じようなデモを行なっています。そういう意味では、必ず解決できる問題であると思っています。

Q:ダイサイズが小さくなると、熱抵抗値が向上し、これが大きな問題としてクローズアップされてくると思います。これにより、より熱設計が難しくなりますが、この問題に対してはどうお考えですか?

スー氏:おっしゃるとおり、ダイサイズが小さくなればなるほど、熱抵抗値はあがり放熱は難しくなります。しかし、当社のPentium 4では既にIHS(Integrated Heat Spreader)と呼ばれるヒートスプレッダを導入済みです。ヒートスプレッダを導入することにより熱抵抗値を下げることが可能になります。Intelでは今後もダイサイズを小さくしていきますが、それにヒートスプレッダを導入することにより熱抵抗値を下げていこうと考えています。確かに熱抵抗値の問題は非常に頭の痛い問題であり、今後なんらかの新しい技術を導入することにより解決しようと考えています。


●Intel 845かIntel 850のどちらがメインストリームになるかはメモリのコスト次第

Q:昨日のキーノートでは新しいPentium 4用のSDRAM対応チップセットであるIntel 845の導入について言及されておられましたが、Intel 845のバンド幅は1.06GB/secと、Pentium 4のシステムバスのバス帯域幅である3.2GB/secとアンバランスになり、メモリがボトルネックになることも考えられます。Pentium 4はマルチメディアに焦点を当てているCPUであるのですが、これはPentium 4の魅力を損なうものではないですか?

スー氏:話は非常にクリアです。RDRAMベースのIntel 850チップセットはハイエンド向けです。3.2GBのメモリバス帯域幅はユーザーに高い性能を約束します。これに対して、SDRAMベースのIntel 845は、確かに性能という観点ではIntel 850に劣るでしょう。特にメモリのバンド幅が性能に影響をうけやすいアプリケーションではさらにです。しかし、これはユーザーの使い方とコストとの相談になるでしょう。例えば、現在のPentium IIIやCeleronの環境においても同じようなことが言えます。メインメモリにはクロックの異なるPC100 SDRAMとPC133 SDRAMがあり、すべてのユーザーがPC133を選択しているわけではありません。どちらを選ぶかは使い方次第です。例えば、ビデオ編集をやるようなハイエンドユーザーにとってはIntel 850がよい選択肢となるでしょう。

Q:それではIntel 850とIntel 845、どちらがよりメインストリームとなるでしょうか?

スー氏:どちらのボリュームが大きくなるのかという意味であれば、それはより低コストのメモリをサポートするものが大きなボリュームになると考えています。これはメモリ供給を行なっているデバイスメーカーがどの程度のコストでメモリを供給するかにもよると考えています。例えば、現時点ではSDR SDRAMに比べてDDR SDRAMは若干高コスト、Direct RDRAMは高コストとなっています。来年になればこの差もなくなると考えていますが、少なくとも現時点ではそうではありません。

Q:それではメモリの価格が近づけば最終的にはIntel 850が選択されるとお考えですか?

スー氏:Intelの見解としては非常にクリアです。Direct RDRAMが低コストになれば、性能面でみなDirect RDRAMを選択するだろうというものです。Intelの戦略としては非常に明確で、Intelは選択肢を顧客に提供するというものです。あとは、メモリデバイスメーカーや市場が、メモリの価格を決定し、顧客がどちらを選ぶかは価格次第です。

Q:現在Pentium 4にはビデオ機能が内蔵されていないスタンドアローンのチップセットしか用意されていません。しかし、もしPentium 4をメインストリーム市場にも普及させたいのであれば、統合型チップセットは必要になると思いますが、いかがですか?

スー氏:ご存じのように、我々はIntel 810、Intel 815という大成功を納めたPentium III用の統合型チップセットを持っています。このため、我々もPentium 4をより普及させて行くには統合型チップセットは必要であると考えています。ただ、具体的な計画に関しては現時点ではお話できません。


●来年にはPentium 4のコアがバリューPCにも拡大される

Intelが9月に導入を予定しているmPGA478ソケット。0.13μm版のPentium 4であるNorthwood(ノースウッド)は、mPGA478に対応した478ピンのパッケージのみ用意される
Q:Pentium 4システムが高コストになっている原因の1つにマザーボードのコスト高が挙げられます。これを解決するために4層基板やRIMMスロットの数を減らすなどを実現したデザインガイドを提供する予定はありますか?

スー氏:あります。特にIntel 845ではそうした低コスト向けのデザインガイドを出していて、コスト削減のための努力をしています。マザーボード自体を小さくしたり、ソケットを小さくしたり、またメモリ自体のコストも安くなりますからトータルで大きなコスト削減になると思われます。いくつかのマザーボードベンダーはPGA423ソケットの4層基板Intel 850マザーボードをこのショーに展示していますが、当社としては478ピンのソケットに力を入れていきたいと考えているので、特にPGA423でそうしたソリューションを提供する予定はありません。Intelとしては、今後も小さなパッケージ、小さいソケットをなどを導入し、マザーボードメーカーと協力していくことによりマザーボードコストの削減を図っていき、ここ半年の間に劇的にそれらにかかるコストを削減していけると信じています。

Q:現在のところPentium 4はバリューPC向けには利用されていませんが、これを将来バリューPC向けに拡張する計画はありますか?

スー氏:P6アーキテクチャのコアがそうであったように、Pentium 4のアーキテクチャを採用したCPUコアも将来的にはバリューPC向けに下りてくるでしょう。ただし、今年はないと思います。おそらく、来年ぐらいではないでしょうか。Pentium IIIやPentium IIがそうであったように、最新のCPUコアが普及してくるとコスト削減が進み、多くのソフトウェアがその最新のソフトウェアに最適化が進んでいくと思います。

 その時に、誰もがその最新のCPUコアの機能を必要とするようになります。このショーではIntelのショーケースだけでなく、あちこちの会場でPentium 4の関連製品を見ることが可能です。これに象徴されるように、我々はPentium 4の立ち上がりは非常に速いものであると考えています。


●システムバスライセンスはビジネスベースで行なう

Q:Pentium 4システムバスに関するライセンスポリシーはどうなっていますか? 既にIntelは、ALi、SiS、ATI Technologiesの3社にライセンスしていますが、Pentium IIIで多くのチップセットを提供しているVIA Technologiesはこれに含まれていません。これはなぜですか?

スー氏:Intelにとって、Pentium 4バスのライセンスに関する見解は明快です。IntelはATI、SiS、ALiなどのチップセットサプライヤーにPentium 4のシステムバスライセンスを供与できたことを喜んでいます。特定のチップセットサプライヤーとの交渉内容に関してはお話できませんが、Intelとしてはこうしたチップセットサプライヤーにライセンスを供与することは、Pentium 4の普及に重要なものだと考えています。

Q:AMDはAthlonのシステムバスをオープンスタンダードにしてチップセットベンダに供与しています。Intelはなぜシステムバスをオープンスタンダードとしないのですか?

スー氏:Intelはさまざまな技術を開発するためにリソースを割いたり投資を行なっています。それをふまえ我々のライセンスに関する方針はビジネス的な話し合いに基づいて行なうというものです。我々のライバル企業は別のモデルを採用しているわけですが、それに関して私から特にコメントすることはありません。


●プライスポイントを増やすためPentium 4のクロックグレードを拡張する

Q:OEMメーカー筋の情報によれば、Intelは1.6GHz、1.8GHzのPentium 4を導入する計画を持っていると聞きます。これは事実ですか? 事実だとすれば、なぜこうした間を埋めるようなクロックの計画がでてきたのでしょうか?

スー氏:我々は現在はないPentium 4のクロックグレードの製品を検討しています。その理由としてOEMメーカーがより多くのPentium 4の製品を必要としているからです。既にPentium 4はかなりのスピードで普及を開始しており、OEMメーカーはより多くの価格帯を必要としているのです。


●Intelは7月に1.8/1.6GHz、9月に2.0/1.9GHzのPentium 4を計画!

 今回の話で最も注目したいのは、一番最後のクロックグレードの拡大という話だろう。複数の情報筋の情報によれば、Intelは第3四半期の早い時期にPentium 4 1.8GHzとPentium 4 1.6GHzを追加する。さらに、元々9月に予定されていた2GHzの投入に併せて、1.9GHzが追加されることになるという。つまり、下記の表のように、徐々にラインナップを増やしていくことになる。

4月7月9月
クロックグレード2.0GHz
1.9GHz
1.8GHz1.8GHz
1.7GHz1.7GHz1.7GHz
1.6GHz1.6GHz
1.5GHz1.5GHz1.5GHz
1.4GHz1.4GHz1.4GHz
1.3GHz1.3GHz1.3GHz
パッケージ423ピン423ピン423&478ピン

 特に、9月の2.0GHzのタイミングではこれまでの423ピンのパッケージに加え、FC-PGA2と呼ばれる478ピンの新パッケージも用意されることになるという。Intelが元のプランにはなかった(以前のロードマップでは1.7GHzの後は2GHzがでるだけだった)、1.6GHzなどのクロックグレードを追加した理由は、スー氏が述べているようにOEMメーカーに対して多くのクロックグレードを用意することで、価格帯を増やしていくという理由と、もう1つはクロックグレードを増やし隙間を埋めることにより、実クロックで1.4GHzを実現したAMDのAthlonがつけ込む隙をできるだけ減らすという目的があるものだと考えられている。

IntelのPentium 4マザーボード。型番は不明 ABIT ComputerのTH7II ASUSTeK ComputerのP4T-LE

 また、スー氏はPentium 4のマザーボードコストについて、今後は削減できる方向だと述べているが、これについては実現される可能性が高い。特にIntel 845は4層基板を実現し、CPUソケットも小型のmPGA478ソケットへと変更される。また、これまでは少なかったPentium 4マザーボードを製造するマザーボードメーカーも飛躍的に増えているなど、SDRAM自体が低コストであるのと併せて、9月のIntel 845のデビューでそれが実現できる可能性が高い。また、IntelブースではIntel 850チップセットにmPGA478ソケットを搭載したマザーボードも数例展示されており、今後はRDRAMベースのIntel 850マザーボードでも若干のコストダウンは期待できそうだ。さらに、サードパーティからPentium 4チップセットが登場すれば、それもコスト削減に一役買うことになるだろう。

MiTACの6812TX MiTACの6812TU

 こうしたPentium 4普及にかけるIntelの戦略を見ていると、年末までにIntelがもくろむメインストリーム市場にもPentium 4を普及させるという計画が現実味を帯びてきたといっていいだろう。

IwillのPentium 4マザーボード。型番は不明 MSIのMS-6504

□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□COMPUTEX TAIPEI 2001のホームページ(英文)
http://www.computex.com.tw/comp2001/
□COMPUTEX TAIPEI 2001のホームページ(和文、TCA対日輸出促進センター)
http://www.ippc.com.tw/comp2001/frontpage1.asp

(2001年6月6日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]

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