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モー娘。のステージを360度再現するPS2ソフト
「スペースヴィーナス」
~独自のMPEG-2圧縮で8画面分を一度に再生~

2001年1月11日 発売

価格:5,800円

 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント (SME) は、アイドルグループ“モーニング娘。”をフィーチャーしたプレイステーション2用ミュージック・ビジュアルソフト「スペースヴィーナス」を2001年1月11日に5,800円で発売する。モーニング娘。のライブ映像の他、独自に収録された数多くの映像で各メンバーの魅力に迫っている。

 今回収録されたコンテンツで特に注目されるのは、8台のカメラを使い360度全方位を同時に撮影したMPEG-2映像。この8画面分の映像を繋がりが不自然にならないように1ファイルに結合し、SMEが開発した独自のMPEG-2データにオーサリング。TV上で表示されている画像は1画面分だが、常に8画面分の巨大なMPEG-2データが一度に再生されていることになる。ユーザーはリアルタイムな操作で、QuickTime VRのように360度グルッと見渡すことが可能。また、画像の一部をズームアップすることもできる。
 同ソフトの開発を担当したSME信濃町スタジオの開発ディレクター兼松幸一氏は、同ソフトの発表会席上で「MPEG-2のデータを8画面分再生するのは転送レートの問題もありプレイステーション2でも難しかったが、奇抜な方法を駆使してクリアした。再生に関しては、画質を落としたりコマ数を落とすなどの方法も考えられるが、アーティストの激しい動きを伝えるためにもコマ数を落とすことは考えられず、今回も秒間30コマにはこだわった」と新技術の完成までの難しさについてコメントした。
 同ソフトには360度見ることができる映像が数本収録されているほか、同種の技術を使い横長のステージを3画面分のデータに収録した映像や、縦にスクロールする映像も収録されている。発表会会場に設置されていた試遊台で試したところ、360度横にスクロールさせると画像に若干のジャギーがかかるほか、ズームアップすると画像が荒れる。これは収録データがデジタルズームによって収録されたことなどが要因で、「スペースヴィーナス」ではこのまま収録されるが、今後画質のクオリティアップは追求していくとしている。

このような横長で巨大なMPEG-2データが再生され、TV上で表示されているのはその一部だけと言うこととなる スペースヴィーナスに収録されている唯一のゲーム。ソニー・コンピュータエンタテインメントが発売している「TVDJ」がベースとなっている

 360度撮影するカメラはソニーのプロジェクトチームが開発。8台のデジタルベータカメラを中央の支柱の周りに上に向けて設置。上には斜めに取り付けられた鏡が取り付けられており、この鏡に映った映像がカメラに収録されることになる。
 ソニーはこの360度の撮影システム、DVDオーサリングなどの技術に関して、来春を目処にビジネス化する予定でいる。現在は8台のカメラで360度しか収録されないが、今後の技術開発で上下を含めた球状のデータを収録 (2001年秋、提供予定) 。この特殊カメラを複数台ステージ上に設置することで、ユーザーが透明人間となりステージ上を自由に歩いているような感覚を再現したいという。また、コンサートだけでなくスポーツやHow to、ドキュメンタリーやゲームにも応用していきたいとしている。
 再生環境に関しては「現在、最もパワフルな再生環境がプレイステーション2」ということでプレイステーション2用ソフトとして制作されているが、今後はPCも視野に入れていきたいという。さらに現在は大容量データを扱える媒体がDVDだけということだが、ブロードバンドも視野に入れており、「どんなに高い入場料を支払ってもユーザーは舞台に上がることは絶対にできない。今後、通信などで前述したようなステージのデータをリアルタイムに配信すれば、まるでステージ上にいるようなヴァーチャルリアリティが実現する」とかなり夢のあるコメントも聞かれた。

360度撮影用のカメラ。各部がガムテープなどで張り合わされており手作り感が漂う。実際、3回ほど撮影するとバラバラになるんだとか。右側の写真は今回の撮影現場での写真

 発表会で登壇者が何度も繰り返していたのが「これはゲームではなくミュージックソフトである」という点。SMEという立場からプレイステーション2を見た場合「DVDなど次世代のメディアが登場してきたがあくまで固定された画面上での品質の向上で、全く新しいものを作ることはできなかった。だが、プレイステーション2の登場で、“観る”から“プレイする”ソフトの制作が可能となった。プレイステーション2はアーティスト性を発揮できるDVDに匹敵するメディアとなりうる」とコメントしており、従来のゲーム中心のラインナップでは考えられない新しいソフトが今後プレイステーション2を支えていくこととなるかもしれない。

ソニーの「全方位映像プロデュース事業」に関するスライド 左端の“既存メディア”とはHDTVなどを含むインタラクティブではない“観る”メディアを指す。ソニーはより自由な映像メディアを送出すことで新たなビジネスを展開したいとしている


(C)Sony Music Entertainment (Japan) Inc. /zetima inc.

□ソニー・ミュージックエンタテインメントのホームページ
http://www.sonymusic.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.world.sony.com/JP/News/Press/200011/00-055a/
□製品情報
http://www.sonymusic.co.jp/VisualStore/SpaceVenus/

(2000年11月2日)

[Reported by funatsu@impress.co.jp]

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