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Creative Technology本社でラウンチイベント開催
~ HDD搭載MP3プレーヤー NOMAD Jukeboxを公開 ~



 去る7月28日、シンガポールのCreative Technology本社において、同社ポータブルオーディオプレーヤーの新製品「Creative NOMAD Jukebox(以下Jukebox)」のアジア・パシフィック地区におけるラウンチイベントが開催された。

 このイベントには日本を含むアジア・パシフィック地区の報道陣100名近くが集まり、Creativeの社長自らによるコンセプトや製品説明などのプレゼンテーションを受けるとともに、ショールームに多数展示されたサンプル機でその機能・性能を体感した。Creativeは、節目となる大きな意味を持つ製品においては、今回のような本社でのラウンチイベントを催している。前回の製品は2年前のSound Blaster Live!であったが、今回の新製品Jukeboxがラウンチイベントに値する製品であるということは非常に興味深い。

 同社が「Sound Blaster」の名のもとに、PCのインナーパーツとなるサウンドカードやチップでデファクトスタンダードの地位を築いていることは、古くからのPCユーザーには周知の事実だろう。その同社が、これからの“オーディオ”において、PCのインナーではなく、個体としてのコンシューマライクな製品を節目として掲げたことは、これまでのNOMADで築いた新境地が軌道に乗りはじめたことの証であると同時に、PCのインナーとしての“サウンド”を、今までとは違う方向・次元まで発展させようという意思表示とも取れる。このJukeboxを「パーソナル・デジタル・エンターテイメント(PDE)インターネット周辺機器の一つ」という位置付けにしていることからも、その意思は見て取れるだろう。

 Jukeboxの日本での発表はこれからだが、これまでPCのサウンドを牽引してきた同社が、これからのサウンドソリューションをどう発展させていくか楽しみだ。

●次代を担う「NOMAD Jukebox」の製品仕様

 Jukeboxは、これまでの携帯型NOMADのシリーズとは一線を画し、その見た目はポータブルCDプレーヤーのようだ。しかし、実際には本体内に6GBの2.5インチHDDを搭載した純粋なデジタルオーディオプレーヤーだ。これまでのNOMAD、NOMADIIが携帯性を強く意識した製品であるのに対し、今回のJukeboxは、どちらかと言うと、ヘビーに持ち運ぶことよりも、容量重視でシチュエーションに合わせて移動することもできるといった程度の可搬性を意識した製品と言うことができるだろう。

 Creativeのアナウンスでは、「CDクオリティのオーディオを100時間以上(CDアルバム150枚分に相当)、音声なら最高2,600時間収録可能」としている。また、ポータブルプレイヤーとして初めて同社のEAXオーディオテクノロジーが導入され、パラメータによるイコライザーや残響音のシミュレートによる3D空間の再現はもちろん、リアルタイムで再生速度を調整する機能(Easy Riff)も持っている。

 PC用のアプリケーションとして「Creative PlayCenter 2」がバンドルされ、これにより、CDトラックのMP3ファイル変換や、PCからJukeboxへの曲の転送を行なう。転送された音声ファイルは、Jukebox側でも分類分けや並べ替えなどが可能となっており、液晶で確認しながらオペレーション可能だ。PCとJukeboxはUSBでの接続となるが、このCreative PlayCenter 2経由でしかJukebox側のストレージは見えないようになっている。

 扱える音声ファイルフォーマットはMP3、WAVで、SDMI準拠のコンテンツにもアクセスできるようになる予定だ。重量は約390gで、単3型ニッケル水素電池4本で4時間以上の再生が可能と言う。HDD内蔵ということで、可動時のデータの保全性に問題があるように感じるかもしれないが、再生に関しては5分間のショックプロテクション機構を搭載、HDD自体も耐性40G(PC用は普通5~10G)という特殊なものを採用しているので、通常の使用では何の問題もないとのことだ。

 気になる価格だが、今回のシンガポール本社でのラウンチ時のアナウンスでは、小売価格499ドル、オンライン価格399ドルとのこと。日本でいったいいくらの値付けになるのかは分からないが、この価格を見る限り、驚くほど安くはないと予想される。

今回ラウンチイベントで紹介されたCreativeの新製品「NOMAD Jukebox」。見た目はポータブルCDプレーヤーそっくり!? カラーはシルバー+ブルーと、このシルバー+グリーンの2種類 写真左側にあるのは、ボディがトランスルーセントになっているタイプ。Mac向けに試作したものだそうだ

NOMAD Jukeboxの基板部分。このように、2.5インチHDDが直付けされており、ちょうどその裏側に液晶があるような構造となっている

液晶は、単独でのオペレーションのしやすさや、視認性を考え、大きめのものが搭載されている 当日は、本社内のショールームもNOMAD Jukebox一色。Macintoshでのデモ機も用意されていた

【NOMAD Jukeboxの主な機能】
  • リアルタイムのEAXオーディオテクノロジー搭載
     最高の音質を再生し、オーディオ体験を拡張するカスタマイゼーションが可能
     可聴性やピッチを変えることなく再生の速度が調節可能
     音声なら最高2倍速、0.5倍の減速、音楽なら最高1.4倍速、0.5倍の減速再生が可能
     パラメータによるイコライザー機能と3D空間を再現する臨場感あふれるリスニング環境を実現
     外部音源のアナログ録音用Line-Inと、Cambridge SoundWorks FourPointSurroundなどの4チャンネルサラウンドスピーカー接続用に2つのLine-Outを搭載
  • SDMI対応で、今後登場するSDMI準拠コンテンツにアクセス可能
  • 5分間のショックプロテクションで移動も安全
  • リモコン機能搭載(第4四半期を予定)
  • USB接続ケーブルで、高速デジタル転送と素早い接続が可能
  • 単3ニッケル水素電池4本で4時間以上の再生が可能。ACアダプタで充電可能
※この仕様はラウンチ時にリリースされた概要であり、本製品発売時には変更されている可能性もあります

■CreativeのCEOが語るJukebox戦略

SIM WONG HOO(沈望傅)氏

Creative Technology Ltd
(創新科技有限公司)

Chairman Chief Exective Officer
(主席/首席執行官)

 ユーザーのみなさまのおかげで、Sound Blasterも出荷数が1億を突破しました。Creativeのこれまでの10年はSound Blasterとともにありましたが、これからの10年は、今回のNOMAD Jukeboxが代表するようなオーディオソリューションをメインに、新たな方向にも挑戦していきます。

 そうした中で、日本の市場はワールドワイドで見ても1つの大きなマーケットと認識しています。今回のNOMAD Jukeboxの日本における最初のターゲットユーザーは、すでに国内に10数万人も存在するSound Blasterユーザーと考えています。今までの携帯型NOMADを購入していただいた方も、実はSound Blasterユーザーの方が圧倒的に多いので、まずそうした方々に訴求したいと思っています。とくにSound Blaster Live!のユーザーは、PCでもハイエンドな環境の方々になるかと思いますし、そうした方々が、非常に優れたエバンジェリストであることも、われわれはよく理解しています。また、今回のNOMAD JukeboxはMacにも対応しますので、既存のWindows PCのユーザーだけではない広がりも狙っています。そういった意味では、今までのPCショップでの販売は当然として、オンラインや家電量販店のポータブルオーディオ機器売り場での展開も考えていかなければいけないと考えています。

 今回のNOMAD Jukeboxは、PCからファイルを転送しなければいけない純粋なプレーヤー機能しか搭載していません。それが、なぜかといいますと、インターネットを利用したデジタルミュージックのマーケットにおいて、通信インフラやコンテンツサービスはまだ脆弱で、ユーザーの大半がダウンロードよりも自分のPCでエンコードする方法を選んでいる以上、PCとの連係は必須条件と考えられるからです。

 また、ファイルのフォーマットもまちまちですし、とくに日本は通信費が高いですから、よりそうした傾向は強いかと思います。そうした中、今回記憶媒体にHDDを選んだのは、メモリースティックやSDカードなど、新たなデファクトを狙うものも出てきてはいますが、まだまだ高価で容量も少なく、コストパフォーマンスの観点からすれば、現時点ではHDDが最適と判断したからです。耐性において不安視される方もいらっしゃるでしょうが、HDD自体は40Gのショック耐性を持ったものを採用していますし、読み出しやウェイト、プラッタの回転制御、内蔵キャッシュやアルゴリズムの解析など、採用HDDを前提にさまざまなチューンもかけていますので、再生に関してはほとんど問題はありません。むしろ、電源に既存の市販品を使うように設計したため、対容量的に見た場合、可搬時の再生時間に対して不満をおぼえる方もいらっしゃるかとは思います。これに関しては専用の新しいものも現在研究中ですので、将来的にはより再生時間の長い環境も提供できると思います。

 幸い、Sound Blaster Live!は、こうしたPCとコンシューマのオーディオ機器とのシナジーを産む橋渡し的な位置にいます。PCにエンコードベースがある以上、PCオーディオはサテライトとなり、Sound Blaster Live!のようなベースとなる製品は不可欠になります。そういう観点から見れば、Sound Blaster Live!にも次世代製品は確実にあると言えます。カテゴリコンバージェンスは今後この業界では必至でしょうし、それはPCとコンシューマエレクトロニクス機器にも同様に言えることです。ただし、そこには乗り越えなければいけないさまざまなインフラの壁があります。たとえばネットワーク、OS、インターフェイスといった部分は非常に大きなウェイトを占めるでしょう。

 ただ、現状で考えると、PCはビジネスモデルがオープンで、かつそのキャパシティはますます増加傾向にありますので、サービスのベースとなり得るのは当面はサーバーなどのPCであると考えています。そうした面からも、PCとのシナジーは、オーディオシステムを考える上でももっとも有効であると思います。PCのソリューション自体は、大きな流れの変化期にありますが、その中においてもオーディオはなくなっていません。PCオーディオに関して言うならば、ソフト、ハード、加えてファンクションもキャパビリティチェンジが起きていて、以前のSound Blasterと新しいSound Blaster Live!がその真っ只中にいる製品であると言えるでしょう。そして、今後を考えるにあたり、新しい形式に対応したり、われわれから新しいものを生み出していかなければならないのは確かです。

 今回、EAXの技術をこのNOMAD Jukeboxにも入れ込みました。Sound Blaster Live!のユーザーの方々から見れば、EAXはAPI的なものだったのでは? と思われるかもしれませんが、EAXはそもそも技術のブランドであり、固定された1つのアプリケーションのような概念ではありません。さまざまなファンクションの集合体と見ていただくのが正解で、これらファンクションは今後もどんどん追加していく予定なのです。そういう手法を取ろうとする上でも、PCにつながることはやはり大きな意味を持つことになります。インタラクティブ性を含めて、容易な機能のアップデートを提供したいと考えた場合、PCのWindowsプラットフォームは非常に便利なのです。これがCEだったりした場合、簡単にはアップデートできませんから。

 このように、PCを軸に、さらに言えばSound Blaster Live!のようなニュージェネレーションをベースに、今までのNOMADや今回発表したNOMAD Jukeboxなどで、オーディオにおけるパーソナルなデジタル・エンタテイメントの幅を広げていくことがCreativeのこれからの方向です。

□Creative Technologyのホームページ(英文)
http://www.creaf.com/
□「NOMAD Jukebox」の製品情報(英文)
http://www.nomadworld.com/products/jukebox/

(2000年8月10日)

[Reported by DOS/V POWER REPORT編集部]

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