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大手カメラ・プリンタメーカー6社がデジカメの新プリント規格「DPS」を策定

12月2日発表



 デジタルカメラがこれほど普及し一般化した今日だが、その割に増えていないのが、デジタルカメラの画像をプリントするための規格だ。こうした規格としては、プリント注文がメインの「DPOF」、クォリティー面は「ExifPrint」があるが、今回、大手プリンタメーカーが中心となって、カメラとプリンタを接続して、PCを介さずにプリントするための新規格「DPS」が策定された。

 この規格は、キヤノン、富士写真フイルム、HP、オリンパス、セイコーエプソン、ソニーの6社が協同で提唱したもの。もともとは、キヤノン、HP、エプソン、ソニーの4社で協議されていたものに、富士フイルムとオリンパスが加わり、この6社での共同発表となった。

 この「DPS」の趣旨は、デジタルカメラから、より容易に、直接、ホームプリンタからのプリントを可能にするものといえる。

 今回公開されたVer1.0(正確には現時点ではVer.0.9となる)では、現在、デジタルカメラとプリンタのインターフェースでポピュラーなものとなっているUSBを使い、データ転送にはPTP( Picture Transfer Protocol )を使用するもの。この際、この規格ではカメラ側はUSBデバイスとして、プリンタはUSBホスト機器として動作する。

 これは先にエプソンが提唱した「USB DIRECT-PRINT」のような双方がホストになることができる規格とは根本的に異なる。また、キヤノンやHPもすでに独自規格でカメラからのダイレクトプリント機器を発売しているが、それらとの互換性もない、全くの新規格である。

 ただし、今回の説明会では3社とも、今後、独自規格でのダイレクトプリントもDPSとともにサポートすることを明言している。

 また、同規格に対応したカメラやプリンタでは、互いにきちんとした互換性を備えており、どのメーカーのものと組み合わせても機能する。そのため、機種選択時の自由度が広がるという大きなメリットもある。

●プリント率が低いデジタルカメラ

 この「DPS」という規格では、将来的にストレージへの保存なども視野に入れたものとなっているが、今回のVer.1.0では、デジタルカメラとプリンタをダイレクト接続する、ダイレクトプリントにフォーカスしたものになっている。

 規格内容の説明に先立って、技術説明会では、Web調査による銀塩カメラ・デジタルカメラそれぞれのプリント率が紹介された。それによると、銀塩カメラの場合には、平均的なユーザーの場合、年間約300ショットを撮影し、そのプリント数は300枚強。ショット数と同等以上の枚数がプリントされているという。

 一方、デジタルカメラでは、年間約800枚を撮影と、ショット数は多いが、実際に保存するのは約560枚。プリントするのはわずか65枚程度という。

 銀塩に比べて、プリントする比率が極端に少ないわけだが、その理由としてデジタルカメラでは「プリントする必要がないから」「プリントが面倒だから」という理由でプリントする機会が少ないとしている。

 もちろん、上記はWeb調査のため、基本的にはパソコンを持っているユーザーが対象になる。そのため、どこまで一般性のある数値かどうかは、やや疑問を挟む余地もあるが、少なくとも、銀塩時代に比べてプリント比率が減っているのは確実だ。

 したがって、撮影した画像をプリントして楽しんでもらうには、プリント操作をより簡単にする必要があり、そのために規格化されたのが、今回のDPS規格というわけだ。

デジタルスチルカメラ市場規模とプリント プリントしてもらうには操作の簡易化が必要

●カメラの液晶でプリンタを操作

 この「DPS」をごく簡単に説明すると、まず、カメラとプリンタをUSBケーブルで接続する。ここまでは一般のUSB接続によるPTPと同じだ。その後、「DPS」ではカメラとプリンタとの接続確認後、カメラ側からプリンタ側の能力(プリントサイズや解像度など)を問い合わせる。

DPS機器の接続 DPSプロトコルのアーキテクチャ

 カメラ側はその内容に基づいて、DPSアプリケーションを設定、ユーザーは、カメラの液晶モニターを見ながら、プリントするコマや枚数を指定する。その指示を受けて、プリンタ側はカメラ側から必要なデータを取得し、実際のプリントが行なわれるという仕組みになっている。

 もちろん、カメラによっては、シンプルなモデルもあり、液晶モニターは備えていても、操作ボタンが少ないモデルも存在する。また、システムリソースが限られているため、高機能なものを搭載しにくいといった部分もあり、DPSではこれらの点も考慮したものになっているという。

 具体的な機能としては、デジタルカメラの液晶モニターで表示している画像の印刷や、カメラ側で複数の画像を選択し、複数枚のプリントを一括指定することもできる。もちろん、DPOF(プリント注文フォーマット)を使えば、DPOFによる自動プリントも可能だ。このほか、サムネール画像の一覧プリントや全画像プリントにも対応できる。

 また、画面の一部分だけをプリントするトリミング指定、Exif情報を使った日付入りのプリントも可能だ。また、プリンタによっては、印刷時のクォリティー(高画質、高速など)をカメラ側で設定することもできるという。

 一方、プリント時に必要になる、プリンタ側のステータス情報も、カメラ側の液晶で確認できる。具体的には接続確立やエラー表示、プリントの進行状況、プリント終了、USBケーブルの取り外し時期などについての表示が可能になるという。

 そのためDPSでは、プリンタ側の準備さえ整っていれば、プリンタ側の操作を一切せず、デジタルカメラ側だけの操作でプリントもできる。

 カメラ側のモニターにプリンタ情報を表示できるため、プリンタ側のステータス表示用液晶やLEDなどを省くことも可能で、プリンタ側のコストを抑えられるというメリットもある。

 さらに、USB接続であることを利用して、カメラ側からプリンタに電源を供給することも可能なため、シンプルで低価格なモバイルプリンタを作る際にも有効な規格といえる。

基本使用例。液晶に表示した画像を印刷するイメージ 複数の画像を印刷する場合のイメージ

トリミング画像印刷のイメージ エラーメッセージや印刷状況もデジタルカメラ側で見られるようになる

●今後ユーザーインターフェースも統一方向に

 DPSでは、DPS対応のデジタルカメラやプリンタでの互換性をきわめて重視したものになっており、きちんとしたロゴ認証が行なわれる。

 さらに今回は、単なる機器間での互換性に留まらず、一歩進んで、カメラ側のUI(ユーザーインターフェース)についても、できるだけ統一する方向で考えているという。技術説明会では、自動車の例をあげ、どんな自動車でも基本的に同じ動作で運転できるように、このDPSのUIについても、できるだけ機種間で共通したものにしたいという意向を持っているという。

 もっとも、今回のものはVer.1.0ということで、時間的な問題もあり、残念ながら、初代のものについては、UIの統一までは手が回らないという。

 だが、今後、DPSがうまく進化すれば、カメラ側での基本的なUIが統一されるため、どの機種でも、ほぼ同じ操作でプリントができるようになる可能性もある。

●ロゴ認証による業界統一規格へ

 今回のDPSは、プリンタ系メーカー大手6社が共同して策定したものであり、ホワイトペーパー(規格書)も本日よりWeb上で公開されている「 http://www.camera-direct.info/ 」(PDFによるダウンロード)。

 来年2月にはVer.1.0として、正式な規格として制定されるという。

 そして、来年6月を目処に具体的な認証内容などの制定を行なう予定。また、現在はまだロゴマークができていない状態だが、同規格に準拠した製品にはDPSのロゴが添えられることになる。

 もちろん、現時点で6社以外のどのメーカーが賛同するのかはわからない。だが、おそらく、大半のメーカーがこのDPS規格に賛同するものと思われる。

 もともと、DPSはポピュラーなUSB接続をベースにしたものであり、現行のデジタルカメラでも場合によっては、ファームアップだけで対応できるケースもあるため、対応はそう難しくなさそうだ。

 ただ、独禁法の関係もあり、同規格を採用したカメラやプリンタの発売時期については各社同時期のスタートになることが予想される。その時期は未確定だが、早くても2003年夏以降になることだろう。

 今回のDPS説明会では、デジタルカメラとプリンタのダイレクトプリントという「DPS Ver.1.0」ベースでの紹介に終始した。

 だが、このDPSは、デジタルカメラとプリンタ間のUSBダイレクトプリントだけの規格ではない。説明会では、将来的な展開として、BluetoothやIEEE 802.11、IrDAといったワイヤレスでの接続やEthernetへの対応についても検討中という。

 また、この技術をベースにすれば、デジタルカメラからDVDなどへのデータ保存といったストレージにも応用できる。また、デジタルカメラだけでなく、カメラ付き携帯電話への採用も十分考えられるわけだ。これらについては、今後対応する方向で検討するということだが、現時点で具体的なものを語れる段階ではないという。

 ただ、この規格は基本的に、デジタルカメラのメモリーカードからプリントすることをベースにした規格といえる。そのため、一度、パソコンに保存した撮影データからのプリントが容易になるわけではない。

 その意味では、デジタルカメラのメモリーカードのデータをパソコンに保存して利用したり、パソコンからのプリントが何の苦もなくできるユーザーにとっては、利用価値が少ない規格ともいえる。

 一方、パソコンが苦手だが、気軽にホームプリントしたい人にとってはなかなかの朗報だ。また、今後、大容量メモリーカードがより手頃な価格になれば、撮影したデータをいちいちパソコンにコピーせず、カメラに512MBや1GBクラスのメモリーカードを入れておき、カメラを電子アルバム代わりに利用し、そこから直接プリントする、といった使い方にも向いているかもしれない。

 このほか、薄型化や低価格化のためにメモリーカードを搭載しない、内蔵メモリー専用のカメラ付き携帯電話からのプリントにも威力を発揮することだろう。特にこの分野は、内蔵メモリーからのデータ転送方式も各社まちまちの状態なので、DPSを採用し、USBインターフェースのPTPベースで画像データを転送するという方向もありそうだ。

 そもそも、デジタルカメラからプリントがいくら容易になっても、銀塩カメラのように撮ったものを100%プリントすることはあり得ない。だが、デジタルカメラで撮影した画像は、プリントすることにより、新しい価値を持つという側面もある。

 たとえば、デジタルカメラで撮影した大切な写真を、HDDやCD-R、DVD、Webアルバムなどで保存しておいたとしても、未来永劫、そのデータが確実に再生できる環境があるとは限らない。今年生まれた赤ちゃんの写真をデジタルカメラで撮っても、その子の結婚式まで、それをデータのまま確実に保存できる人がどれだけいるだろう? と考えると、なかなか不安なものがある。

 その意味で、大切な写真はプリントして保存しておくのは、意外に確実で安全な保存方法でもある。特に、家族の記録写真などでは、パソコンが扱えない家族のためにも、誰でも簡単にプリントできる環境が整うことは大いに歓迎すべきことだろう。

□DPSのホームページ
http://www.camera-direct.info/
□ニュースリリース(キヤノン)
http://web.canon.jp/pressrelease/2002/dps2002.html
□ニュースリリース(富士フイルム)
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj1007.html
□ニュースリリース(HP)
http://www.jpn.hp.com/info/pr/fy2003/fy03-019.htm
□ニュースリリース(オリンパス)
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/Info/n021202a.html
□ニュースリリース(セイコーエプソン)
http://www.epson.co.jp/osirase/2002/021202.htm
□ニュースリリース(ソニー)
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200212/02-1202/

(2002年12月2日)

[Reported by 山田久美夫]


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