|
eMEX 2002レポート【各社ブースレポート編】
|
会期:10月15日~10月18日(現地時間)
会場:蘇州南亜国際会展中心
中国蘇州で電子デバイス関連の総合展示会「eMEX (electronic Manufacturer EXpo )」が10月15日(現地時間)より開幕した。
蘇州は上海の西に位置し、約2,500年前に呉の国の首都が築かれた都市。日本人にはなじみが薄いが、今でも街中には当時の様子をしのばせる歴史的な園林が数多く存在し、観光名所として名高い。
その一方で、工業都市としての発展も目覚しく、台湾メーカーはもとより、日本の大手メーカーも、安い労働力を求めて数多く進出しており、巨大な工場も立ち並ぶ。
eMEXは、IT産業の一層の発展を目指し、行政も積極的に支援を行なっている展示会。その基本的な趣旨は電子デバイスメーカーや商社などの商取引の場となっている。そのため、PC Watchで普段取り上げている展示会と比較すると、コンシューマ向けの展示は少なく、地味な感じが否めない。
だが、各社の展示内容の方向性は各社各様で、そこにはそれぞれの今後の活動方針などを窺い知ることができる。今回のレポートでは、大手メーカーのブースレポートを中心にお伝えする。
会場から道路をはさんだ反対方向の風景。地平線が見渡せるほど広大な土地が広がる。その中に工場と思しき建物が散見される | 蘇州に進出している大手メーカーがリストアップされた看板。我々にもなじみの深いメーカー名が多くある | 展示会の趣旨は商談が中心であるため、いずれのメーカーもブース中央に商談スペースを設けている。これは一風変わった富士フイルムの商談スペース |
■逆見本市で部材調達を狙うキヤノンブース
キヤノンは、販社のキヤノン中国と、複写機の製造を手がけるキヤノン蘇州が共同で出展。ブースには大小さまざまなパーツが所狭しと並べられている。しかし、これらはいずれも同社製のパーツではなく、また販売を狙った展示でもない。同社によると、これらの展示は同社が製造する複写機で使用している部材で、現在同社が調達先を捜し求めている部材なのだという。
同社いわく、今回のブースは“逆見本市”。中国内での部材調達先を探し、部品の現地化を行なうことで、部材コストの引き下げや、調達時間の短縮化を図るのが狙い。同社にとってもこのような趣旨の展示は初めて。本日は開催初日のため、まだその反応はなんとも言えないとのことだが、非常にユニークな試みだ。
ズラリ並べられたパーツは、キヤノンが売りたいパーツではなく、買いたいパーツという、逆見本市となっている同社ブース | こちらが同社が製造する複写機 |
■華中でのプロモーションに専念の松下
松下電器は、中国内にいくつもの生産拠点を構え、中国でのセールスも積極的に行なっている。ブースでは電子デバイスを中心に展示。展示物を説明するポップは、どれも大きな日本語で説明が書かれており、ここだけ日本の展示会と見まがうような様相を呈している。
展示説明が日本語であるため、日本人向けのセールスを狙っているのかと思うと、そうではないらしい。担当者によると、同社が中国で生産する製品のほとんどは、中国内での販売がメインで、日本を含めた海外への輸出の割合は低いという。今回の展示も華中地域におけるプロモーションを狙ったものだそうだが、説明に日本語を使ったことで、来場者のウケはあまり芳しくないらしく、次回は改善したい、と担当者は語っていた。
中国にあって、なぜかほとんどの製品説明を日本語で行なっている松下のブース。IT関連ということで英語をメインにして、そこに日本語説明を少し付け加えてみたとのことだが、中国市場でのアピールという意味では逆効果気味だったようだ |
■液晶パネルの展示を中心とした日立ブース
日本での展示会では、商品が映えるようにと、見やすくて、かつ目立つ展示が行なわれるのが常だが、eMEXが商談向けの展示会であるからか、それとも中国のお国柄がそうなのか、多くのブースではおざなりな展示が目立つ。
そんな中、日立ブースは、携帯端末用/PC用/TV用が取り揃えられた液晶パネルを中心に展示。外光の反射を考慮して、覆いのついた展示スペースを用意するなどし、商品を見てもらおうという意気込みが感じられた。展示数こそ少ないが、多くの来場者が足を止め、商品を見物していた。
■FinePixシリーズの実機展示を行なう富士フイルムブース
富士写真フイルムは、コンシューマをターゲットとした展示を行なう数少ないメーカーの1つで、FinePixシリーズやフォトプリンタ、レンズ付きフィルムなどを展示/デモ。FinePixは「A303/F401/S602 ZOOM/S304」の4機種が展示され、手にとって触れるようになっていた。
触れる実機は各機種1台と少なかったため、人気機種には順番待ちの列ができていた。それぞれの中国での店頭価格は、A303が3,500元(1元=約15円)、F401が4,500元、S602が6,500元、S304が4,500元。中でも、S602とS304の人気が高いという。
富士フイルムはFinePixシリーズの実機を展示。来場者が自由に触れるようになっていた。デジカメを展示するメーカーはほかにもあるが、ユーザーが触れるところは同社を除いてはほとんど見受けられなかった | 展示台の前でも来場者がしきりに係員に質問を投げかけており、デジカメに対する関心の高さが伺える | レンズ付きフィルムも大々的に宣伝されていた |
■中国専用(?)ブランドを展開するエプソンとシャープ
エプソンとシャープは、コンシューマ向け製品とビジネス向け製品をそれぞれ展示/デモするなど、非常に似たコンセプトのブースを設けていた。また、両社とも日本とは異なるブランド展開を行なっているという共通点を持っている。
日本で「Colorio」で知られるエプソンのプリンタのブランドは「STYLUS」となっている。展示やカタログから察するに、A4カラーインクジェットで最上位となるモデルは「STYLUS PHOTO 950」で、日本では昨年の10月に発売された「PM-950」と同じ製品と思われる。
シャープにいたっては、ブランド自体を製品につけていない。ブースに展示されていた「Mebius」ノートには、製品上にもカタログ上にもMebiusやMURAMASAのブランドは見受けられず、同モデルおなじみのリング状のロゴの下には「M・e・b・i・u・s」の代わりに、「M・o・b・i・l・e」と書かれていた。液晶TVにも「AQUOS」のロゴは見受けられなかった。
このあたりのブランド戦略については、残念ながら詳しい話を聞くことはできなかったが、ブランドをつけないということも含め、各社の海外でのブランド展開も様々といった感じだ。
エプソンブース | 「Colorio」ならぬ「STYLUS」シリーズのプリンタが展示。ラインナップは日本のモデルより1年遅れているようだ |
ずらり展示されたメビウスノート、と思いきや…… | ロゴの下には「M・o・b・i・l・e」の文字 | 液晶TVにもブランドは見受けられない。ちなみにシャープのブースは、展示機の数などは多いのだが、日本のそれとは対照的にかなり閑散としていた |
■台湾系メーカーブース
日本でもメジャーな台湾系メーカーとしては、BENQ、ASUS、ECSなどが比較的大きなブースを構え展示を行なっていた。BENQは入り口のすぐそばに最大級のブースを構え、非常に多くの種類のパーツや製品を展示。また、BENQは定期的にダンスパフォーマンスを開催し、ECSはコンパニオンを用意するなど、会場全体でも際立った存在となっていた。
BENQは日本では液晶ディスプレイあたりが有名だが、ブースではそれ以外にも、携帯電話/無線ルーター/DVD-RWドライブ/スキャナ/複合機/キーボード/デジタルカメラ/マウス/液晶プロジェクタなど、さまざまなジャンルの商品をいっせいに展示。
ASUSは、展示の数こそマザーボードが圧倒的な量を占めるが、ブース全体ではノートPCを前面にアピール。Pocket PC搭載PDAのサンプル展示なども行なわれていた。
ECSは、マザーボードやVGAなどのほかに、液晶一体型PCなどを展示。同社担当者によると、中国でのシェアは、GPUでは1位NVIDIA、2位ATIで、3位がSiS。AthlonとPentium 4では圧倒的にPentium 4のシェアが大きく、人気チップセットはIntel 845GL/GE/PEなどで、ハイエンドのものが好まれているという。
会場内で最大級を誇るBENQブース。展示する商品のジャンルも多種多様 | 受付はチャイナドレスを着たコンパニオン。時折ダンスパフォーマンスを行なうなど、派手さでも随一 |
モバイル系の展示に力を入れていたASUSブース | ECSはおなじみのパーツ系のほかに、液晶一体型PCを強くアピールしていた |
□eMEXのホームページ
http://www.goemex.com/jp/jpdefault.asp
(2002年10月15日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]
|