コンパック、グリッド・コンピューティング事業に参入
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同社ショールームのAlphaServer(グリッドのデモに使われたものではありません) |
6月18日発表
連絡先:ソリューション企画推進本部HPTC推進部
Tel.03-5495-2016
コンパックコンピュータ株式会社は18日報道関係者向けの説明会を開催、グリッド・コンピューティング事業への参入を発表した。説明会では、米Compaqの日、米、仏のコンピュータで構築したグリッド・コンピューティングシステムを使い、アプリケーションを実行するデモンストレーションが公開された。
■ありとあらゆるコンピュータが共同してスーパーコンピュータに
コンパックコンピュータ株式会社 テクニカルサポート本部兼HPTC推進部の中野守氏 |
同社はグリッド・コンピューティングシステムについて、「大規模分散コンピューティング環境を、ネットワーク越しに使えるシステム」と説明。複数のコンピュータリソースをネットワークで統合し、“仮想スーパーコンピュータ”として利用できるというもの。
統合されるコンピュータはアーキテクチャ、OS、性能などを問わない。また、高速なネットワークで接続されていれば、遠隔地に置かれたリソース同士を統合し、遠隔地から利用することもできる。したがって、例えば「大阪のスーパーコンピュータ+名古屋の中規模サーバー+東京オフィスのデスクトップPC全て」といった組み合わせを統合し、利用することもできる。
同社テクニカルサポート本部兼HPTC推進部の中野守氏は「最終的な目標は、グリッドをWebブラウザから利用できる次世代ITインフラとすること」と述べた。また同社関係者は、「将来はPDAや、iモード端末を始めとするインターネットアクセス機能付き携帯電話からでも、インターネット経由で大規模分散コンピューティング環境を利用できる」と述べている。
なお、「グリッド」とは「Electric Power GRID(電力網)」に由来する。大規模コンピュータリソースをどこからでも利用できることを、大規模な発電所の電力をどこからでも(どの発電所の電力なのかを気にせず)利用できる電力網に例えたもの。
■日・米・仏を結び、グリッド・コンピューティングを実演
説明会では、同社のグリッド環境を実際に動作させるデモンストレーションが公開された。使用されたグリッド環境は、東京、大阪、つくば、米、仏のコンピュータをグリッド接続したもの。米、仏のコンピュータは、海外7サイトで構成されるCompaqのグリッド環境「GRID Iron(グリッド・アイロン)」に属する。グリッド環境構築のためのソフトとして、オープンソースの「Globus(グローバス)」を使用している。
グリッド環境の操作画面は、Webブラウザ上に表示される。デモで使われたインターフェイスでは、まず利用したいコンピュータがある地域を選び、利用したいコンピュータをCPUやメモリ、OSの種類などから絞り込むことができた。こうした指定をせず、グリッド接続されたすべてのコンピュータのうち、利用できるものを自動的に割り当ててもらうこともできる。
利用するコンピュータを指定したら、利用するアプリケーションを選び、コマンドを送信して実行する。利用できるアプリケーションは、利用できるコンピュータにインストールされているものが自動的にリストアップされ、その中から選べる。
デモでは3DCGレンダラーの「x-povray」を起動し、3DCGの描画を実演した。このデモでは、パラメータを変更すると、リアルタイムでオブジェクトの色が変わるのを確認できた。
また、フラクタル図形(マンデルブロー図形)を描画するアプリケーションで、分散処理のデモを行なった。このデモでは、遠隔地にあるCPUやOSもさまざまなワークステーションやサーバーが、1つの図形を分割して計算を分担し、描画した。
さらに、これらのデモにおいて、どんなコンピュータがどのように動作しているかを、ブラウザ上のほか、同社のPDAであるiPAQ Pocket PC上からワイヤレスでモニタリングできる様子も公開された。
また、リモートコンピュータ上のフォトレタッチソフト「GIMP」やエディタ「Emacs」などを起動する様子も見ることができた。これらのUNIXアプリケーションは、Windows用のXサーバーを利用して起動されたが、将来はすべてのアプリケーションを、Javaを利用してWebブラウザ内で表示するのが目標という。
■パフォーマンスやセキュリティでは問題も
グリッド・コンピューティングは、既存のコンピュータリソースを統合して有効活用できる。例えば社内の遊休PCや小規模サーバーを統合してグリッド環境を構築すれば、大型コンピュータと代替できる。仕事に使われているコンピュータでも、「電源が入っていても使われていないアイドル時間」だけグリッド環境に統合されるようなシステムを作ることもできる。これにより、安価にスーパーコンピュータなみの処理能力を得られる。
また、遠隔地のコンピュータを結ぶことで、システム全体の冗長性向上や、負荷分散を容易に実現できる。さらに、例えば大阪にある大きなデータを、東京の高性能コンピュータで処理したいとき、長時間をかけてデータをコピーすることなく、大阪のストレージ上で東京の処理能力を使って処理することができるといったことも可能になる。
さらに、ユーザーは、分散環境であることを意識することなく、様々な端末からリソースを利用できる。
これらのメリットの一方、様々なコンピュータシステムを結合することから、セキュリティを堅牢にする必要があり、システムによる運用ポリシーを乗り越えるような仕組みを装備する必要がある。また、これらの実現によりソフトウェアが重くなるため、グリッド接続ソフトのチューニングなど、パフォーマンスの向上も問題点となっているという。
■グリッド・サポートセンターを設立、事業に本格参入
発表会の冒頭に流された、ピッツバーグ・スーパーコンピューティング・センターを紹介するビデオ。センター内のスーパーコンピュータを、グリッド技術により全米から利用できる |
同社は現在は科学技術分野、とくにライフ・サイエンスでの利用が主流のグリッド・コンピューティングだが、今後は製造業や創薬に利用が広がり、金融業や流通業でも基幹業務をグリッド環境で行なうようになるという観測を示し、グリッド事業への本格的な参入を発表。これにあたり、専任のエンジニアと環境を用意した「コンパック・グリッド・サポートセンター」を設立するなどの具体策を発表した。
また、米Compaqがすでにピッツバーグ・スーパーコンピューティング・センターのシステムなどでグリッド技術の実績を持っていることなどをあげ、グリッド事業における同社の優位性を強調した。
なお、同事業は、AlphaServerを扱うHPTC(ハイパフォーマンス・テクニカルコンピューティング)事業部が担当する。米Hewlett-Packard(HP)との合併ロードマップでは、RISCベースのサーバー事業はHP主導で新規ビジネスを展開し、AlphaServerは既存のHPTC市場にフォーカスするとしている。
□コンパックコンピュータのホームページ
http://www.compaq.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.compaq.co.jp/press/press828.html
□グリッド・コンピューティングのホームページ
http://www.compaq.co.jp/solution/hptc/grid/
□関連記事
【5月8日】HP、合併後の製品ロードマップを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0508/hp2.htm
(2002年6月18日)
[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]
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