ロボット達のワールドカップ「ロボカップ2002福岡・釜山」
~ヒューマノイド型ロボット競技を初実施

会期:6月20日~23日

会場:福岡ドーム



 ロボカップ国際委員会は、ロボットのサッカーワールドカップ大会とも言える、「ロボカップ2002福岡・釜山」を6月20日より福岡ドームで開催する。今回の大会でははじめて「2足歩行ロボット同士による競技」が予定されており、注目される。

 ロボカップは「2050年までに人間のサッカー世界チャンピオンに勝てる自律型ロボットチームを作ること」を目標として'92年に発足した、ロボット工学・人工知能の研究推進のための国際研究プロジェクト。サッカーをプレイできるロボットを開発する過程で得られたノウハウを産業・社会に反映させていくのが狙い。

Jリーグ・川淵チェアマンもビデオで激励。「最初は失敗の連続であると思いますが、少しずつ技術が向上し、楽しいゲームが開催できるようになると期待しています。一緒に頑張っていきましょう」とコメント

 発足当初から世界規模での展開を目指すことを念頭に構想され、第1回となる'97年の大会から、世界大会として開催された。サッカーのワールドカップと異なり、毎年1回開催となっている。

 運営委員会となる非営利科学文化法人の「ロボカップ国際委員会」はスイスに設置され、日本、オランダ、フランス、ドイツ、イタリア、スカンジナビア、シンガポール、アメリカなどそれぞれに国内委員会をもつ。非営利団体のため、国家プロジェクトや民間企業のプロジェクトとは違い、研究者が自発的に集まって活動をしている。今大会には30カ国193チームが参加し、1,000人以上の研究者が集まるという。

 ロボカップの活動は大きく分けて「ロボカップサッカー」、「ロボカップジュニア」、「ロボカップレスキュー」の3つの活動がある。また、各リーグの上位入賞者のロボットはオープンアーキテクチャとして公開され、研究者たちの間で情報が共有される。

 競技は6月19日~23日まで開催される(一般公開は20日~23日)。予選は19日~22日まで行なわれ、23日に決勝戦が行なわれる予定。

・ロボカップサッカー

 従来から小型、中型、4足歩行ロボットなどのロボットによるリーグと、シミュレーションのみによるリーグの合計4リーグが開催されていた。今回新たに2足歩行ロボットによる競技も加わり、現在6カ国12チームがエントリーしているという。また、本田技研工業株式会社のASIMOが特別参加し、模範演技などを実施する予定。

 シミュレーションリーグは、物理的なロボットは存在せず、コンピュータ上に仮想フィールドを設け、独立して動くプレイヤー(エージェント)同士が競技をする。試合は5分ハーフで行なわれる。'96年に大阪で開催された「preRoboCup-96」で初めての競技が行なわれ、ロボットのサッカー競技としては最古のものという。45チームが参加予定。

 小型ロボットリーグは、直径18cm以内に収まるサイズのロボット5台以内で行なわれる。オレンジ色のゴルフボールを使用し、フィールドの大きさは卓球台程度。試合時間は10分ハーフで、20チームが参加予定。

 中型ロボットリーグは直径50cm以内に収まるサイズのロボット4台で1チームとする競技。フィールドは卓球台9台分程度の大きさとなり、オレンジ色のサッカーボールを使用して行なわれる。試合時間は10分ハーフで、18チームが参加予定。

4足ロボットリーグはAIBOを使用して行なわれる。写真は会場で実施されたOPEN-Rのデモに使用されたAIBO

 4足ロボットリーグはソニーのAIBOを使って争われる競技。すべて同じ機体を使って試合が行なわれるため、プログラミングの優劣が勝敗を左右する。4対4で行なわれ、試合時間は10分ハーフ。選抜チームに貸与されるAIBOによって行われる競技のため、一般の参加はできない。19チームが参加予定。

 ヒューマノイドリーグは今回初の試みとなる、2足歩行ロボットによる競技。今大会ではエキシビジョン的な扱いのものになるという。最初に参加資格競技として片足立ち競技が行なわれた後、各ロボット×5倍の距離を往復する時間を競う歩行競技やシュートを行なうソロゲーム、複数のロボットでチームを組み、5本のシュートでゴール数を競うペナルティーキックなどの競技が行なわれる。また、フリースタイル競技として、各チームごと5分間のデモンストレーションも実施される。12チームが参加予定。


ヒューマノイドリーグに参加予定のロボット達。各国から12チームが参加する

・ロボカップジュニア

 ロボットに興味を持つ子供達を対象に開催される競技。韓国・釜山やオーストラリアなどの地区予選を勝ち抜いてきたチームと、日本チームを合わせた60チームにより競技される。協議内容は、サッカーだけでなく、子供たちがロボットにダンスをさせるという競技も開催される。また、子供達が相互に情報交換をする「ワークショップ」とよばれる場も提供される。60チームが参加する予定。

 サッカー競技は直径22cm以内のロボット2対2、または1対1で行なわれ、ボールは赤外線を放射する特殊なものが使用される。試合時間は10分ハーフ。

 ダンス競技は、音楽に合わせて、ロボットに2分以内のダンスをさせ、プログラミングレベルや創造性、エンターテイメント性などを争う競技。

・ロボカップレスキュー

 ロボカップではもっとも実用的な成果が期待される競技で、シミュレーションリーグとロボットリーグが実施される。

 レスキューシミュレーションリーグでは、コンピュータ上に用意された、地震災害などを想定した仮想の大規模災害空間内で、救助戦略の優劣を争うもの。14チームが参加予定。

 レスキューロボットリーグでは、模擬的に用意された倒壊家屋を実際に捜索し、中のマネキンを捜し出すスピードや精度を競う競技。10チームが参加予定。

 このほか今回の大会では、新たな試みとしてロボット展示会「ROBOTREX」(ロボトレックス)も同一会場で開催する。50の企業および団体が出展し、早稲田大学の新型2足歩行ロボット「WL-15」などをはじめ、各種ロボットの展示・デモを実施する。

 発表会場では、協賛企業各社から挨拶があったほか、富士通の2足歩行ロボット「HOAP-1」を使ったシュートのデモなども行なわれた。

デモの準備をする富士通のHOAP-1。会場ではボールを蹴るデモを披露した キックのスピードは意外に速く、ボールは勢いよく飛んでいく
【MOVIE1】MPEG-1 約4MB
【MOVIE2】MPEG-1 約1MB
無事にボールを蹴ると、喜びのポーズ

Posyはロボカップの閉会式にプレゼンテータとして登場する。写真右はロボット達を囲んで記念撮影する協賛メーカー代表



ロボカップ日本委員会会長 浅田 稔氏

 質疑応答では、「ソニーのSDR-4Xはなぜ2足歩行競技にでないのか?」という質問もされたが、「現在、まずは家庭内で楽しめるロボットにするための開発をしている。現時点では方向性が少しちがっている」とコメントされた。

 また、「人間のチームと試合をさせたいということだが、どんな試合展開になるかイメージがあれば教えて貰いたい」という質問には、ロボカップ日本委員会会長 浅田 稔氏が「現在行なわれているワールドカップの試合を見ていると絶望的な気分になることもある」と苦笑しながら、「もちろん勝つことが目標だが、勝つまでの過程そのものをみんなと共有することが重要。それを実現するためのチャレンジこそがロボカップスピリッツ。そのためにロボカップジュニアも開催して、次世代に夢を掛ける」と答えた。

 同様の質問にロボカップ国際委員会会長の北野 宏明氏もコメントし、「人間のチームに勝つというのが判りやすいので掲げている。ただ、人間とロボットの混成チームなども面白いと思う」、「サッカーができる高性能なロボットというだけでなく、安全なロボットを作ることも重要。人間を蹴散らすロボットなら現在でもできる。相当安全なロボットでないと試合などしてもらえないはず。だから、試合が実現するというだけでも重要なこと。そのためにサッカーを選んでいる。例えばこれが野球ならば、時速200kmの投球ができるロボットなど簡単にできるが、そういう技術では役に立たない。人間を傷つけないことが重要」などと述べた。

 また、得点シーンとしては「ロボットはイエローカードもレッドカードも貰わないように作られると思う。だから、得点するとしたら、人間側の反則でPKをもらって得点するかもしれない」などと答えて笑いを誘った。

□ロボカップ2002のホームページ
http://www.robocup2002.org/japanese/index.html

(2002年6月12日)

[Reported by kiyomiya@impress.co.jp]

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