アップル製1Uサーバー「Xserve」を国内初公開
~メンテナンス性の良さとコストパフォーマンスを強調

6月下旬出荷予定



 アップルコンピュータ株式会社は12日、報道関係者向けの「Xserve」説明会を開催した。「Xserve」は5月に開催されたWWDC(世界開発者会議)で製品の存在と発表日をアナウンス。同月14日(現地時間)に正式発表された、アップル初のラックマウント式1Uサーバー製品である。

 同社はこれまでもサーバー製品は出荷していたが、ほとんどがデスクトップ向け製品をストレージの増量などでサーバー仕様にカスタマイズし、AppleShareIPやMac OS X ServerといったサーバーOSをインストールした製品。サードパーティ製のラックマウントキットなども発売されているが、純正のラックマウント製品は初めてとなる。

 説明会の冒頭に挨拶した大宮哲夫マーケティング本部長は、同社製のラックマウント製品の発売はWWDCに参加するデベロッパの声に応えたとコメント。特に社内情報システムの管理・運営者や高等教育機関における学内サーバーの運営者といった特定のデベロッパを中心に強い要望があったことを明かした。そのうえで、現状のサーバー市場が30万台を超えるPCサーバーと数万台のUNIXサーバーが中心であると説明。Linux導入などによりダウンサイジングが進行するなかで、「Xserve」は性能的にも価格的にも十分な競争力を持つ製品と説明した。

 また市場のサーバー製品に対するニーズは二極化しているとして、販売チャネルの多様化にも言及した。ひとつは、導入から運用までコストの負担をいとわない層に対するチャネル。これは従来から同社のサーバー製品を取り扱ってきたApple Solution Experts各社が受け持ち、導入時のアドバイスから技術的な支援まで行なう。

 いっぽうで、販売店によるサポートは不要で(社内などに導入技術を保持しているなど)コスト優先というチャネルに対してはiMacデモ販売店をはじめとする全国のMacintosh販売店やAppleStoreが中心となる。大宮氏によれば、実際に家電量販店などでXserveがiMacなどと並んで展示されるかどうかは不透明で、かなりのチャレンジとなるが、将来のマーケットトレンドを先取りするつもりで展開するという。こうした層をサポートするのが、24時間の電話サポートや原則4時間以内の出張修理サービスなどを提供する「AppleCare Premium」というわけだ。

 Xserveの製品説明は、プロダクトマネージャの鯉田潮氏によって行なわれた。製品スペックなどは発表時にすでに公開されているとおりなのでここでは割愛するが、一連の説明やデモをとおして強調されたのは、Xserveのメンテナンス性の良さとそのコストパフォーマンスということになる。

 Xserveに搭載されるCPUはPowerPC G4の1GHz。上位モデルはデュアルプロセッサとなる。競合する1U製品はPentium III Xeonによるシングルプロセッサが主流であるとして、性能面での優位性をアピールするとともに、1U内に最大480GBが収容できるストレージもSCSIを中心とする競合製品に比べて2倍以上のアドバンテージがあると説明した。Xserveで採用されているストレージは4つのデバイスが独立動作するATA/100のインターフェースだがホットスワップに対応。コスト的にも有利であるという。

 また、前述したとおり同社によるサポートはXserve向けに用意された「Apple Care Premium」によって行なわれる。124,800円で提供されるこのサービスは、製品保証の2年延長に加えて、24時間体制の電話、メールによるサポート。原則4時間以内の出張修理サービスを中心に構成される。質疑応答では、地方においてこの4時間という基準が守れるかという質問が出たが、サポート会社との協力体制によって実現するという回答があった。ただし、具体的な提携先については非公開としている。

 さらに現時点のAppleStereではまだ提供されていないが「Apple Care Service Parts Kits」(129,800円~149,800円)の販売が行なわれる。これは、ロジックボード、電源ユニット、ブロアー(冷却ファン)、ハードディスクユニットという4つのパーツをキットにしたもので、運用中のXserveにトラブルが発生したらそのユニットを交換することで復旧するというもの。サーバーダウンの時間を最小とするのが目的だ。

ダウンサイジングしながら拡大する国内サーバー市場で、Xserveは性能的にも価格的にも十分な競争力を持つ製品になりうると、大宮氏 これは同時にアナウンスされたファイバーチャネル対応のハードウェアRAID製品「Xserve RAID」。北米地域と同様に年内の正式発表と発売を予定 サーバーのモニタはリモート運用にも対応。ストレージの状況や、ネットワーク負荷、CPU温度、筐体内温度、ブロア(冷却ファン)、システムロックの状態などを視認できる

Ultra 160 SCSI採用の競合する1Uサーバー製品に比べて、1U内に収まるストレージにアドバンテージがあると説明 転送速度もUltra 160 SCSIの理論値以上に確保できるとして、コストパフォーマンスの良さを強調した ハードディスクユニットは「Apple Drive Module」として60GBと120GBの専用品が販売される。ホットスワップに対応

販売されるふたつのコンフィグレーション。違いはシングル/デュアルプロセッサと初期搭載メモリ量 Xserve向けに提供される「Apple Care Premium」。24時間体制の電話、メールによるサポートと原則4時間以内の出張修理サービスが目玉 事前に交換用のパーツを手元に保持する「Apple Care Service Parts Kits」。サーバーのダウン時間を最小にするのが目的だ

■Xserveの各ユニットは5分を経ず交換可能。サーバーダウン時間は最小に

Xserve担当プロダクトマネージャの鯉田潮氏。APC製の42U対応ラックからXserve本体を抜き取ってトラブル発生時のメンテナンスの容易さをデモ

 Xserveの実機を使ったデモンストレーションは、サーバーの運用ではなくメンテナンス性を中心に行なわれた。ラックより抜き取ったXserveを机上に置いて、電源パーツを皮切りに次々とユニットを取り外していく。ものの5分と経たないうちに、主要パーツは机上に並ぶことになった。

 Xserveの電源を入れると、正面パネルに位置するインジケータが次々と点灯する。ハードウェアの状態は基本的にこれらのインジケータの点灯色で判断できるようになっていて、前述のリモートメンテナンス用アプリケーションの表示と共通になっているようだ。正常に動作している部分は緑の点灯となる。

 ハードディスクユニットのインジケーターは、通常状態の緑色に加えてトラブル発生時のオレンジ、さらにホットスワップのために、アンマウント状態に移行しているときは赤に点灯する。消灯すれば抜き取ることができる。ディスクアクセス時はもうひとつのインジケータが青色で点灯する仕組みだ。

 電源ボタン横にあるロック用のスイッチは、六角のアーレンキーを使ってロックすることで、Xserve自体やハードディスクユニットなどの引き抜きなど、ハードウェアのロックをかけるとともに、ソフトウェア的なロックも行なう。例えばこの状態では、CD-ROMドライブになんらかのディスクを挿入してもマウントされないようになっている。

 なかにはXserveを自宅でデスクトップ的に運用しようと考えているコアなMacユーザーもいるかと思うが、アップルによればラックに入れる以外の設置方法、およびMac OS X Server以外での動作保証は行なわないとしている。またこればかりは耳にしないと実感できない部分だが、サーバーとしては一般的な部類かもしれないが、デスクトップ機としてとらえればとんでもないほどの動作音が発生する。冷却ファンを敢えて「ブロワー」と表記していることからも想像できるように、その騒音の大部分はここから発生しているようだ。自宅導入を目論むコアなMacユーザーは、この点にも気を付けた方がいいだろう。

日本に到着した最初の1台という「Xserve」。まだプロトタイプの面影を残していて少々立て付けが悪い。正面右上には薄型のCD-ROMドライブが搭載されている 正面左側の様子。左から電源ボタン、六角のアーレンキーによりユニットの抜き取り防止などハードウェアとソフトウェアの操作を同時にロックするスイッチ、システムID、FireWireポート、Ethernetインジケータ、システムインジケータの順に並んでいる 背面インターフェース。左から電源、電源ブロワー、Gigabit Ethernet(オンボード)、Gigabit Ethernet(PCIカード)、FireWire×2、システムID、USB×2、シリアルポート(ネットワークトラブル時にターミナルを繋いでXserveにアクセスするため)、VGAポートの順に並んでいる

「Apple Drive Module」は前面下部に4個並んで収める。脱着は、フロントパネルを軽く押し込むとハンドルがポップアップするので、そのまま引き抜けばいい。これは、G4 Cubeで採用されていた仕組みと同じ。ハンドルを出すと前面のインジケータが通常状態の緑から赤(アンマウント準備状態)へと変わり、消灯したらホットスワップすることができる メンテナンス作業中のXserve。こうして見ると思いのほか大きい。収納するラックの選択は最近の主流である1,000mm超のものを選ぶ必要がある。また、冷却ファンでなく「ブロアー」と表現されるだけあって、冷却装置は大きい。手前がCPU冷却用で、奥が筐体内部の冷却用 メンテナンスが容易なように、パーツは上下には重ならず平らに並んでいる印象。分解と組み立ては、普通の通常のプラスドライバー1本あれば可能

PowerPC G4プロセッサはドーターボード形式。アップルでは言及していないが、PowerPC G4の高速化などによる製品ラインの更新などを考慮した設計と思われる Xserveのマザーボード。4スロットが用意されたメモリはMacintosh製品としては初めて、DDRメモリ(PC2100)を採用している。右にある高密度コネクタはCPUのドーターカードとのコネクタ Xserveから取り外されたユニット。左上から右下に、電源ユニット、整流用のカバー、Gigabit Ethernet(PCIカード)、ヒートシンク、ストレージ部分とマザーボード間のブリッジ、CPUカード、VGAカード

□アップルのホームページ
http://www.apple.co.jp
□関連記事
【5月17日】アップル、1Uラックサーバー「Xserve」の価格を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0517/apple.htm
【5月15日】Apple、Mac OS X Server搭載の1Uサーバー「Xserve.」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0515/apple.htm

(2002年6月12日)

[Reported by 矢作 晃(akira@yahagi.net)]

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