アップル、eMacの説明会を開催
~販売店舗の拡大と、教育市場への注力を示唆

6月8日発売



 eMacの日本における発売開始を明日の8日に控え、アップルコンピュータは報道関係者向けに新製品説明会を開催した。

「AppleStore for Education」を皮切りに、教育市場にも積極的に参入していくとコメントする大宮哲夫マーケティング本部長

 冒頭、挨拶にたった大宮哲夫マーケティング本部長は、'98年のiMac販売時に『iMacデモ販売店制度』を導入した経緯に触れ、「iMacという新しい製品の顧客への十分な説明」そして「適正な生産と流通在庫で、アップル側の過剰生産によるリスクと販売店側の機会損失をなくす」という当初の目的にほぼ到達したと考えているとコメントした。

 そのうえでさらにマーケットを広げるため、こうした店舗の拡大を実施。4月の時点で約250店舗だったiMacデモ販売店を、6月末までに約700店舗に拡大するとしている。ただしこの拡大は、販売を行なう会社や店舗と新たに契約を行なうわけではなく、これまで販売チェーン店のなかでも一部の店舗のみでiMacの取り扱いが行なわれていたようなケースを、ほぼ全店舗に広げるような形で行なわれる。

 さらに、こうした一般販売店における数年に及ぶ販売政策の転換に一段落が付いたとして、アメリカで同社が強い市場である「教育市場」に積極的に参入していく意向を示した。その第一歩がeMacと同時に発表された「AppleStore for Education」というわけである。

 例えば米スタンフォード大学などでは、大学側とアップルの折衝で、文系学生向けと理系学生向けにそれぞれカスタマイズされたMac製品を用意。学内のイントラネットから「AppleStore for Education」に接続して学籍番号を入力することにより、学校の基準にしたがった機材発注ができるようなシステムが出来上がっているという。

 もちろん日本ではそこまでの完成度には達しておらず、現状では学生および教職員向けの特別販売サイトという形だが、この「AppleStore for Education」の導入を皮切りに、さまざまなキャンペーンを進めていくことで教育分野におけるシェアを拡大していくとしている。


■一般発売されるeMacが、CD-RWモデルだけの理由は

一般市場向けに販売されるeMacのコンフィグレーション。PowerPC G4搭載モデルとしては最安値となる製品。敢えていうなら、初代iMacがごく一般的に進化したらこうなったという印象 こちらは「AppleStore for Education」を通じて販売される教育市場向け。光学式ドライブの違いと、CD-ROMドライブモデルに内蔵モデムがないことを除き一般向けと共通の仕様だ バンドルされるソフトウェアは、一般市場向けも教育市場向けも共通。スーパードライブモデルはないので、iアプリケーションのなかにiDVDは含まれていない

 元々eMacは、その名称が示すとおり教育(Education)向けに企画された製品である。結果として、全世界的にコンシューマ市場からの強い要望があって一般発売にも踏み切ったというわけだが、一般市場に投入されるのはCD-RWが搭載された1つのモデルに限られる。いっぽう、本来の市場である教育市場には、DVD-ROMとCD-RWのコンボドライブモデル、そしてCD-ROMドライブモデルという一般市場とは異なる2つのコンフィグレーションが投入される。

 同社の説明によれば、教育市場ではDVD-Video視聴とCD-RWによるコンテンツ制作というニーズが強くあると同時に、学内から一切のデータを外に持ち出せないようにというニーズもあるのだという(そのためCD-ROMドライブモデルには内蔵モデムが付いていない)。そのためコンボとCD-ROMオンリーというラインナップになっているのだそうだ。もともと構想になかった一般市場には、ラインナップの差別化と、部材調達の関係からCD-RWモデルを投入するということが全世界的なマーケティングだという。


 しかしそのうえで、日本においてはコンボドライブへの強いニーズは認識しているとして、日本では一般市場へのコンボドライブモデル投入を米本社に対し現在リクエストしているということである。

 また、先月開催されたWWDCのNDA管理下などでは目にする機会もあったeMacだが、日本においては事実上の初披露と言うことで、ニュースリリースベースでは分かりにくかった部分も明らかになった。

 外観では、フロント左右に位置するスピーカーに着脱式のグリルが付いている点。梱包時は銀色のコーンが見える状態とのことだが、小さな子供のいる家庭などリスクのある場合は、同梱されているグリルで保護することができる。アップルロゴは、新iMacなどと同様の銀色。モニタ上部にはeMacのロゴがあり、その左側にマイクが内蔵されている。

 インターフェース類は正面に向かって右側に集中しており、構成は新iMacと同一だ。放熱用のファンが搭載されており、前面下部から吸気し背面から排気する仕組み。騒音レベルはだいたい28dBから32dBということである。

 本体への拡張は、メモリ、AirMacカード、そして7,500円で別売されているeMac傾斜・回転スタンドが用意されている。メモリは、本体下部のパネルを開けて、SDRAMを増設する。メモリスロットは2つで、出荷時には1つのスロットに128MB SDRAMが搭載されている。

 AirMacカードの挿入部分は意外なところに用意されている。光学式ドライブ用のパネルを開け、ネジ止めされているカバーを外すとAirMac用のアンテナとスロットが現れる。作業はカードにアンテナを取り付けスロットに挿入するという手順。カバーをふたたび付ける際に多少ケーブルの処理を行なう必要はあるが、ものの数分もあれば終えられる作業で、これまでのMac製品のなかでももっともAirMac導入がラクな製品といえるだろう。

eMacの表示エリアは1,280×960ドット。15インチCRTとの比較となっているが、実は新iMacの解像度も1,024×768ドット。画面の広さではeMacのほうが上をいく。 CRTのサイズは15インチから17インチへと拡大したが、旧iMacと比べて高さはほぼ同じ。奥行きは8.2mmほど短くなっている 本体の底面パネルを開いて、メモリの増設を行なうことができる。ここにはバックアップ用のバッテリが見えており、こうしたメンテナンス性も向上している
AirMacカードの増設。光学式ドライブのパネルを開いてネジ止めされたカバーを取ると、AirMac用のアンテナとスロットが見える。作業はものの数分。他機種の作業に比べて容易になっている 光学式ドライブのパネル背面には、シリアルナンバーとEthernet IDのシールが貼られている。見やすい位置にあるのは機材管理をしやすくするための工夫とのこと 本体正面に向かって右側に位置するインターフェイス部分。左からヘッドホン、オーディオ入力、USB×3、FireWire×2、内蔵モデム、Ethernet、外部モニタ、電源ボタンと並ぶ。新iMacと同じ構成だ
本体上部に見えるeMacのロゴ。この左側に内蔵マイクが位置している eMac傾斜・回転スタンドは本体底面にネジ止めして利用する eMac傾斜・回転スタンドの有無と、スピーカーグリルの有無


■MPEG-4のライセンス問題に明るいメド。QuickTime 6 Public Preview公開

2月に開催されたQuickTime Live!、5月のWWDCなどでも紹介されているがQuickTime6で導入される新機能。やはり目玉はMPEG-4のサポート

 会場では、先日Public Preview版が公開された「QuickTime 6」に関する説明も行なわれた。現在公開されているのは英語版だけだが、アップルによれば、日本語版のPreviewを公開する予定は今のところないという。そのため、この英語版Previewを日本語OSにインストールすることは、同社として推奨できないと念が押された。Preview版の利用にあたっては、Mac OS Xを英語モードで運用するなどして試して欲しいとしている。

 同社では元々Public Preview版の用意はしていたが、MPEG-4に関するライセンスの問題で公開を棚上げにしていた。同社が最も問題としているのは、コンテンツを配信する側からもライセンス料を取るという方針が、コンテンツの充実を阻害するというものだ。今回の公開にあたっては、詳細こそ明らかにしないものの、この問題が非常に前向きな方向(明るい方向)に向かっていて、じきに解決するという見方(コンテンツ配信側が納得できるライセンス方式の導入?)ができるようになったためだとしている。

 ちなみに、QuickTime 6のPublic Previewには、従来のバージョン同様Pro版が用意されている。現行バージョンでPro版を登録しているユーザーは、同じ登録コードでQuickTime 6 Public PreviewをPro版として全画面表示などすべての機能を利用することができるようになる。ただしこれは、Public Previewのみで、正規リリース後は改めてQuickTime 6用の登録コードの購入が必要になる。購入価格は3,600円に設定されるようだ。

MPEG-4の導入で、やはりクローズアップされることになるストリーミングテクノロジー こちらは「AppleStore for Education」を通じて販売される教育市場向け。光学式ドライブの違いと、CD-ROMドライブモデルに内蔵モデムがないことを除き一般向けと共通の仕様だ バンドルされるソフトウェアは、一般市場向けも教育市場向けも共通。スーパードライブモデルはないので、iアプリケーションのなかにiDVDは含まれていない
配信側の設定画面。これはPowerMac G4上で「QuickTime Broadcaster」を利用している。「QuickTime Broadcaster」もPreviewが公開されているので、実際に試してみることができる 受信側。配信側のPowerMac G4に接続されたDVカメラで撮影されている映像をわずかなタイムラグだけのリアルタイムストリーミングで表示している

□アップルのホームページ
http://www.apple.co.jp/
□製品情報
http://www.apple.co.jp/emac/
□関連記事
【6月5日】アップル、eMacのCD-RWモデルを一般市場で販売
~コンボ/CD-ROMモデルは教育市場専用サイトに限定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0605/apple.htm
【4月30日】米Apple、教育市場向けのCRT一体型「eMac」を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0430/apple1.htm

(2002年6月7日)

[Reported by 矢作 晃(akira@yahagi.net)]

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