メルコ、逆風の中、8億7千万円の黒字を確保
~社長の給料半減など、厳しいリストラが効を奏す

株式会社メルコ
牧誠 代表取締役社長

5月16日発表



 株式会社メルコは16日、2002年度決算説明会を開催した。これによると、売上高は699億6,700万円(前年比21.3%減)、当期利益は8億6,900万円(前年比7.9%減)、営業利益は6億5,500万円(前年比62.2%減)の黒字。

 同社は4月5日に、営業利益マイナス13億円、当期利益マイナス3億5,000万円の大幅な赤字予想を発表していたが、厳しいリストラ策とDRAM価格の上昇により、黒字確保となった。

●手持ちの現金を減らして経費削減

固定費圧縮、在庫管理強化、事業部再編に取り組んだ結果、黒字を確保した

 同社は業績悪化予想に際し、前期中に緊急対策委員会を設置、ローコスト経営を実現するためのリストラを敢行した。その内容は、固定費圧縮、在庫管理強化、事業部再編など。

 固定費圧縮の内容は、名古屋駅前オフィスを引き払って自社ビルへ統合、販管費を14.8億円削減、退職社員の不補充(755人から661人へ削減)、臨時社員の削減(200人から137人へ削減)といった厳しいもの。その中には牧誠社長の給料半減も含まれるという。

 また、前期に33億円あった現預金を4億円まで削減。公には「ペイオフ対策・安定運用及び資金効率を高める」ためとなっているが、牧社長は「すぐに使える現金を減らして社員の無駄遣いを防ぐため、というのが現実」と述べ、「無借金経営を続けてきたことで気の緩みがあり、資金調達にコストがかかるということを知らないような体質が社内に浸透していた。在庫を多めに持ったり、売掛金が増えたり、無駄遣いをしていた。(これらを引き締めるために)現場のキャッシュフローを厳しくしたのが本音」とした。

 こうした経費削減策と原価低減策によりコスト競争力が高まり、販売力の強化にも繋がったとしている。

●事業部をメモリ&ストレージとネットワークの2つに統合

成熟市場では利益を、成長市場では成長力を確保

 事業部再編では、米国子会社の清算のほか、5つあった事業部を昨年11月に2つに統合した。

 統合後の2つの事業部はメモリ、ストレージ、アクセラレータなどを扱う「M&S事業部」と、ネットワーク製品を扱う「ネットワーク事業部」。前者は「成熟市場」としてコスト削減などにより収益性を改善し、同社収益の柱とするとした。後者は「成長市場」と位置付け、無線LAN、ルータ市場の拡大に努めるとした。

 こうした再編の前提には、当期の製品別売上高が、メモリが48%減の186億7,100万円、ストレージが10.7%減の241億1,800万円、ネットワークが15.8%増の220億5,100万円となり、メモリ、ストレージの収益構造改革が急務となっていることがある。


●厳しい市場環境を予測

 2003年度の見通しは、売上高759億円(前期比8.4%増)、当期利益12億円(前期比38.1%増)、営業利益21億円(前期比220.6%増)と、ローコスト体質実現による利益増を見込んでいる。

 また、国内経済環境とPC市場の回復は当面ないとする一方、ネットワーク市場の大幅な拡大を見込み、製品別売上高ではメモリ220億円(前期比17.8%増)、ストレージ240億円(前期比0.5%減)、ネットワーク260億円(前期比17.9%増)と、メモリとネットワーク製品での売上増を期待している。

●ソリューション提案/付加価値創造型事業を復活、法人市場を開拓

これまでメルコが提案してきたソリューション

 発表会において牧社長は、“プリンタバッファで印刷待ち時間を短縮”、“増設メモリに設定ソフトを同梱し、初心者にも扱いやすくする”、“省スペースPCと液晶ディスプレイによりオフィス空間を有効活用”といった、これまでメルコが提案してきたソリューションを紹介。「台湾製品を購入して付加価値を付けるだけの価格競争の時代があったが、これからは再びソリューション提案と付加価値創造の時代になる」とした。

 とくに成長が見込まれるネットワーク製品では、企業などへの無線LAN及びVPNの導入、ホットスポット事業用のアクセスポイントなど、コンシューマ市場での高シェアを背景に、法人市場を開拓するとしている。ここでもやはり、無線LANの設定サービスや、VPNによる“どこでもオフィス”などのソリューションを提案していくという。

 なお、高速無線LAN規格については、「IEEE 802.11aのみの機器ではなく、11aと11b、または11aと11gのコンボを投入する。11gについては規格化が遅れており、導入は微妙」としている。

●メモリ市場は混乱が続く

 決算の黒字化に貢献したメモリ価格の上昇に関しては、DDR SDRAMへのシフトが進行中であること、128Mbit製品の価格が下落しても、256Mbit製品は高止まりするとの予測を明らかにした。また、Hynixの動向が価格を決定するとし、「HynixとMicronの競争が泥沼化したときに1ドル割れする可能性があるが、そうした競争は避けられるだろう。また、今年の第4四半期から来年の第2四半期にかけて、供給がタイトになる可能性がある」との見方を披露した。

 メモリ市場の混乱に備え、4月末で20億円の在庫を確保、調達先もMicron、Samsung、Infineonなどを確保しているという。

□メルコのホームページ
http://www.melcoinc.co.jp/
□決算短信
http://www.melcoinc.co.jp/guidance/news/2002/0514_1/index.htm
□関連記事
【4月30日】Hynix、Micronとの合併交渉を打ち切り
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0430/hynix.htm

(2002年5月16日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]

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