ソフトバンク、2002年は887億円の赤字
~ブロードバンドインフラへの初期投資が主因

ソフトバンク 孫正義 代表取締役社長

5月10日発表



 ソフトバンク株式会社は、2002年3月期連結決算を発表した。

 売上高は、前年比2.1%増の4,053億1,500万円、営業損失はマイナス239億100万円、経常損失は333億200万円、当期純損失は887億5,500万円となった。

●赤字の主因はブロードバンドインフラへの投資

 部門別の売上高は、イーコマース事業が前年比257億円増の2,842億円、イーファイナンス事業が71億円減の243億円、メディア・マーケティング事業が48億円減の484億円、放送メディア事業が9億円減の121億円、インターネット・カルチャー事業が188億円増の320億円、テクノロジー・サービス事業が41億円増の185億円、ブロードバンドインフラ事業が92億円などとなった。「イーコマース事業、インターネット・カルチャー事業が売上げを順調に拡大しているが、グループをあげて取り組んでいるブロードバンドインフラ事業における創業時投資が赤字の主因」(笠井和彦 取締役)とした。

 部門別での営業利益は、イーコマース事業が前年比14億円増の32億円、イーファイナンス事業が184億円減のマイナス49億円、メディア・マーケティング事業が33億円減の26億円、放送メディア事業が11億円減のゼロ、インターネット・カルチャー事業が52億円増の99億円、テクノロジー・サービス事業が7億円増の11億円、ブロードバンド・インフラ事業が169億円減のマイナス180億円などとなった。

2002年3月の連結業績 部門別の売上高 部門別の営業損益

 投資有価証券の評価損、関係会社の株式評価損として1,184億円、Key3Media Groupなどのノレン代一括償却で200億円(税引後130億円)を計上、それに対して、米Yahoo!の株式売却などによる投資有価証券売却益で514億円を差し引き、866億円の特別損失となった。

●保有株式の売却などで安全性を確保

保有株式を売却することで、手元流動資金を確保した

 だが、笠井取締役は、財務戦略として、有利子負債が昨年9月に比べて1,200億円以上圧縮され3,656億円となったこと、手元流動資金として1,336億円を確保、保有する主要株式の持ち分時価総額が7,794億円、含み益が5,850億円となっていること、自己資本比率が40%に高まっていること、D/Eレシオが0.79、ネットD/Eレシオが0.49と改善していることなどから、「財務戦略として、安全性確保の第1フェーズは完了したと判断しており、第2フェーズとして経営資源を集中させているブロードバンド事業の発展、安定した営業キャッシュフローの追求をすすめたい」とした。

 なお、2002年度の業績予想については、為替および株式市場の影響を大きく受けるため現時点では予測が困難として公表しなかった。

●バックボーン構築への投資は終了、利益確保を目指す

 一方、孫正義社長は、今後の事業戦略について触れ、冒頭、「ソフトバンクが目指すのは、デジタル情報革命。私自身が、一番やりたいことをできる時代に入ってきて、毎日わくわくしている」とコメント、「ブロードバンドNo.1企業集団の1点を目指す」とした。

 ブロードバンド戦略として、

 1)ブロードバンドインフラNo.1になる
 2)ブロードバンドインフラに各種No.1プラットフォーム集団を創出、連携させる
 3)各種プラットフォームのサービス・コンテンツ集団のNo.1のシェア

を掲げており、「群戦略による展開をすすめる」とした。

ビービーテクノロジーの今期業績

 インフラ技術を担うビービーテクノロジーは、売上高61億円、営業損失123億円。これまでの投資額は約870億円となり、「バックボーンに対する投資はほとんど終了したと考えている」と話した。

 また、申し込み者数は約53万件、期末接続回線数は約49万件、期末開局済局舎数約1,200に達したとしており、「今年下期のどこかで黒字化に転換したい。月間の固定費は20数億円、損益分岐点は百数十万ユーザーと見ている。インフラビジネスは一度黒字化すると、あとは高収益体質になる」とした。

 さらに、孫社長は、「世界のIPバックボーンを1,200局舎をつなぐネットワーク構築を実現したことで、IPの様々なサービスが可能になるなど、低コスト構造が実現できる。また、1Gbit以上のダークファイバーを張り巡らせたことで、他社が1車線、2車線の高速道路であるのに対して、100車線の道路を持っていようなもの。ADSLだけに留まらず、IP電話などのIPネットワークを利用したサービスが高品質に提供できる」と話した。

ビービーテクノロジーのバックボーン 開通までの期間短縮をアピール ビービーテクノロジーの収益モデル

 問題として指摘されていた申し込みから開通まで時間がかかることについては、直近の実績として10日間以内に工事が完了した比率が98.4%に達していることをあげ、「すでに申込者の増加にも対応できるようになっている。24時間のサポート体制も構築し、競合他社と比較しても誇れるレベルにまで達している」と、これを改善していることを強調した。

 また、ビービーテクノロジーの収益モデルとして、「他社がADSLのためにインフラコストがあるのに対して、当社の場合は、ADSL収入に加えて、VoIP収入、無線LAN収入、法人サービス収入などがある。この収益モデルをこれまで明かさなかったのは、競合他社に一日でも永く安心してもらいたかったため。他社に比べてADSLだけでも1,000円程度安く、さらに、IP電話も無料で利用できるという構造的な差別化が可能になった」などとした。

□ソフトバンクのホームページ
http://www.softbank.co.jp/
□財務情報
http://www.softbank.co.jp/ir/index.htm

(2002年5月10日)

[Reported by 大河原克行]

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