年末にはパソコンの価格が下がる?
~JEITAのパソコン出荷需要予測、2002年度4%増へ

パーソナルコンピュータ事業委員長 篠崎雅継氏(日立製作所)
4月24日発表



 「4~6月は、3%の価格上昇。年末以降には、一転して4%の価格下落へ」-社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、2001年度のパソコン出荷実績および2002年度の需要動向について発表した。そのなかで、5月以降値上がると見られているパソコン本体価格が、今年末には下落する見通しであることを明らかにした。

 同協会パーソナルコンピュータ事業委員会の篠崎雅継委員長(日立製作所)は、「部材の価格上昇が、パソコン本体の価格上昇に転嫁されるといった報道が相次いでいるが、価格が下がる部材もあり、年度末にはわずかに価格が落ちる。年度を通じて見た場合、価格が上がることはない」とした。

 その理由として、5月にも発売される夏モデルでの値上げ要因とされているメモリ、液晶のコスト上昇について、「現在は、供給体制が悪く、それが価格の上昇につながっている。各社が増産体制を敷いていることから、今年中には、需要と供給のバランスが一致し、価格が下がり始める」と予測する。

 また、DRAMがMicronとSamsungの2社の寡占状況にあることについては、「2社以外にも、1桁のシェアを持っているメーカーが2~3社あり、これが低価格戦略を仕掛けてくる可能性もある。さらに、SDRAMは上昇していても、DDR SDRAMは値下げの傾向にあるなどの技術トレンドも影響してくるだろう」とした。

 さらに、マザーボードの価格下落も、年末の値下げにつながるとしている。

 2001年度第4四半期(1~3月)の平均単価は、ノートパソコンが16万9千円、デスクトップが16万円。全体で16万5千円となっている。2002年度第1四半期(4~6月)には、3%程度単価が上昇すると予測しているが、第4四半期(2003年1~3月)には、4%下落すると予測している。

 さらに、パソコンの価格動向が需要にどう影響するかという点では、「2001年度第3四半期(10~12月)は、第2四半期(7~9月)に比べてパソコンの単価が上昇しても、販売台数は増加した。4~6月も単価上昇による需要への影響はないと考えている」とした。

 一方、2001年度(2001年4月~2002年3月)の国内パソコン出荷実績は、前年比12%減の1,068万6千台と、金額で前年比17%減の1兆7,692億円となり、'78年の調査開始以来、初の2桁のマイナス成長となった。

 「7~9月以降、パソコン需要が低迷したが、年明け以降、需要は回復すると見込んでいた。しかし、業界全体が冷え切っていること、期末需要が増えていないこと、Windows XPがカンフル剤にはならなかったこと、などがマイナス成長の要因」(篠崎委員長)とした。

 機種別の内訳では、ポータブル(ノートパソコン)が前年比7%減の582万4千台(うちサブノートが111万2千台、前年比3%増)。デスクトップが17%減の486万2千台(うちオールインワンが281万2千台、前年比27%減)。

 ノートパソコンとデスクトップパソコンの構成比は55%対45%となった。

 また、ビジネスとコンシューマの比率は、59%対41%となり、「コンシューマ向けは、メーカー出荷ベースで2割程度、減少している計算になる」という。

形状別出荷台数推移 平成14年度 出荷予測

 2001年度のマイナスの実績に対して、2002年度の需要予測は、前年比4%増の1,110万台、金額では3%増の1兆8,245億円と、前年比プラス成長を予測した。

 「企業の設備投資の回復や、欧米、中国の需要が上向いていることも影響する」として、「上期は、全出荷量の45%程度を占める程度に留まるが、第4四半期(2003年1~3月)には需要が一気に上向くだろう。早ければ年末商戦での回復を期待したい」と予測している。

 同協会では、需要拡大に向けたキーワードとして、以下のような要因をあげている。

 「コンシューマでは、家庭内での2~3台目需要の拡大が見込まれる。とくにシニア層の購入促進や、新学習指導要領の施行により小中学生のパソコン購入が加速すると見込んでいる。一方、ビジネス分野では、'96~'97年に導入された大・中企業でのリプレース需要の本格化、e-Japan構想の進展、中小規模企業での情報化投資への期待などが見込まれる」とした。

 また、ブロードバンド環境や、ホットスポットでのワイヤレス需要をはじめとするモバイル環境でのネット利用環境の整備/普及も需要拡大のキーワードになるとした。

 2002年度は、コンシューマ分野が前年比7%増になると予測、構成比は前年よりも1ポイント上昇し、42%になると見込んでいる。また、ノートパソコンの構成比率は57%に達すると見込んでおり、過去最高の構成比率になる見通しだ。

 「モバイルパソコンについては、薄型化、軽量化、バッテリの長時間化などが市場で認知されれば、B5サイズパソコンの需要がさらに拡大するだろう。また、昨年はカンフル材にならなかったWindows XPも、MiraやXP Companionなどの2台目、3台目需要を喚起する製品が登場することで、年末に向けて期待できる」とした。

 投資意欲や個人消費が低迷しており、さらにパソコン単価上昇を余儀なくされる上期は、厳しい数値が見込まれるのは間違いない。前年度第2四半期が、かなりの低迷ぶりだったことから、第2四半期でのプラスを期待する声もあるが、実際には、年末から第4四半期に需要回復を期待することになりそうだ。

□JEITAのホームページ
http://www.jeita.or.jp/
□ニュースリリース
http://it.jeita.or.jp/statistics/pc/h13_4q/
□関連記事
【2月5日】JEITA、2001年の国内パソコン出荷は前年割れと発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0205/jeita.htm

(2002年4月24日)

[Reported by 大河原克行]

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