IDF 2002 Spring Japan基調講演レポート2

microATX拡張の新フォームファクタ「Tidewater」などを解説

会場:ヒルトン東京ベイ

会期:4月16~18日



 Intelの開発者向けカンファレンス「IDF Spirng Japan 2002」が4月16日開幕、2日目となる17日には、同社のモバイルコンピューティングやデスクトップPC戦略などに関する基調講演が行なわれた。

 まず、同社上席副社長兼ワイヤレス・コミュニケーションズ & コンピューティング事業本部長のロナルド・スミス氏が壇上に立ち、「ワイヤレス・データ・ビジネスに照準を当てた新しい取り組み」と題し、講演を行なった。


■0.13μm製造プロセスのフラッシュメモリを発表

ロナルド・スミス氏

 スミス氏はまず、TVやVCR、PCの普及率の推移などと比較し、デジタルデバイスのワイヤレス化は、まだ始まったばかりで、特に日本ではインターネット対応の携帯電話などでかなりの普及をみせており、今後有望な市場であると述べた。

 そして、「Anytime/Anywhere(いつでも/どこでも)」ネットワークに接続するというコンセプトの重要性は、これからますます大きくなっていくという見解を示した。



 その後、ワイヤレス市場へのIntelの取り組みとして、17日に発表したばかりのフラッシュメモリの新製品とXScaleアーキテクチャの製品について解説した。

 この新フラッシュメモリは、0.13μm製造プロセスで製造された最初のフラッシュメモリとなる。消費電力は半分になり、性能は最高4倍になったという。

 新メモリでは、「フレキシブル・パーティションアーキテクチャ」を採用し、4Mbitブロックごとにメモリ使用を最適化することで、読み出しと書き出しを同時に行なえるようになったほか、1.8V駆動と低電圧であり、大きなメリットがあると説明した。また、「ワイヤレス・スタックドCSP」などの技術によりパッケージングの選択肢も増加したという。同氏は、「他社は0.18μmで四苦八苦している。われわれにアドバンテージがある」と業界の現状を解説した。

新フラッシュメモリの概要 新フラッシュメモリの特徴 ワイヤレス・スタックドCSPの解説

Intel PCA開発キット

 その後、XScaleの解説が行なわれた。2000年秋のXScale発表以降、さまざまなバリエーションが登場し、10mW以下の低消費電力のものから1,200MIPS以上の高性能プロセッサまで用意されていると述べ、最近発表したPDAや携帯電話向けの「PXA250/210」について解説した。また、開発ツール/サポートの充実についても解説した。



■Baniasはスケジュールどおり

アナンド・チャンドラシーカ氏

 続いて、同社モバイル・プラットフォーム事業本部 副社長兼モバイル・プラットフォーム事業本部長のアナンド・チャンドラシーカ氏が「モバイル・コンピューティングの将来像」と題し、講演を行なった。

 最初にモバイルPCを取り巻く環境について解説し、「経済の低迷の中でも2001年のノートPC市場は、出荷ベースで前年を上回った」と述べ、ノートPC市場の今後に楽観的であるという見通しを明らかにした。


 その後、3月に投入したモバイルPentium 4-Mについて、Deeper Sleepモードなどの特徴を解説した。そして今年中にノートPCの70%がモバイルPentium 4-Mになるとし、Thin & LightなどのレンジにもモバイルPentium 4が採用されるという見込みを説明。また、クロック周波数は今年中に2GHzを超えると宣言した。また、NetBurstアーキテクチャのモバイルCeleronも年内に投入するほか、低電圧版モバイルPentium III-Mも年内に1GHzを超えると解説した。


年内にノートPCの4割がモバイルPentium 4-Mに。低電圧版モバイルPentium III-Mも1GHzへ デモでは未発表のモバイルPentium 4-M 2GHzとモバイルPentium III-M搭載ノートPCで、1080iの動画を再生するというもので、モバイルPentium IIIではコマ落ち/音とびなどが頻発していたが、モバイルPentium 4-Mではスムーズに再生されていた

モビリティに特化したプロセッサとしてBaniasを紹介

 また、ノートPCが生活の中に入ってきて、いつでもどこでも使うものになると、バッテリ駆動時間が重要になるし、軽量なものが必要になる。そうしてポータブル性を向上したPCは、「自分らしさを表すもの」という点でも重要になってくると述べ、そうした要求を満たすプロセッサとして「Banias」を紹介した。

 Baniasは2003年発表予定の次世代モバイルプロセッサ。2月のIDFからの大きなアップデートはなかったが、会場ではBanias用のチップセット「Odem」のデモが行なわれ、「スケジュール通りに進んでおり、2003年に登場する」と説明した。


デモに使われたOdemチップセット CPUについては「Baniasをシミュレートしている。これ以上の詳細はなんともいえない(チャンドラシーカ氏)」とのこと

□関連記事
【2月28日】【IDF】インテルがBanias用チップセットのOdemをデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0228/idf05.htm

 その後、現在のワイヤレス環境では場所を変わるごとに設定を変える必要があるなど、数々の不便がある。有線/ワイヤレスの切り替えや、自動的にアクセスポイントの切り替えをするなどの努力が必要と、現在のワイヤレスに関する問題点を指摘した。

 また、CPUやチップセットはノートPC全体の電力消費の約30%を占めるが、残りの部分の改善によって低消費電力化を実現する方法をOEMメーカーやMicrosoftなどと協力していくとし、モビリティに関する問題を改善していくための「モビリティ・イネーブリング・プログラム」を段階的に実施すると述べ、デモを行なった。

 デモは、Microsoftなどと協力し、Intel Labsが製作した「skamania(スカメニア:コードネーム)」というソフトウェアを利用し、ビデオを流しながら有線/無線を自動的に切り替えるというもの。有線で接続していたケーブルをはずすと自動的に無線カードに切り替えて通信が行なわれ、その際にも、ビデオのフレーム落ちなども発生しないなど完成度の高さが伺えた。

 「モビリティ・イネーブリング・プログラム」については、9月までに各社と協力して、プログラムの指針を策定し、9月のIDF Fallまでにプログラムの詳細をまとめ、2003年の上半期には最初の成果を反映した製品が投入されるという。

「モビリティ・イネーブリング・プログラム」の概念図 有線/無線を自動的に切り替えるソフトウェア「skamania」のデモが行なわれた 「モビリティ・イネーブリング・プログラム」の今後の展開について


■新フォームファクタ「TideWater」などについて解説

 最後に壇上に立った、同社副社長兼デスクトップ・プラットフォーム事業本部長のウイリアム・スー氏が「時と場所を選ばないコンピューティング」と題し、講演した。

ウイリアム・スー氏

 前に行なわれた講演を引き、「パーベイシブコンピューティングやワイヤレスといった要素は、今後のデジタルデバイスではとても重要な課題だ。それらがデスクトップでどのように展開されるのか、われわれの考えるプラットフォームを紹介する」と切り出した。

 まず、「3GIO」について触れ、この1年で大きなアップデートがあったとし、PCI-SIGにバージョン1.0仕様書を提出するなど前進している述べた。また、3GIOを幅広いセグメントでサポートし、2003年後半には3GIOを採用した製品を出荷すると説明した。


 続いて2003年のプラットフォームについて説明した。まず次世代デスクトップCPU「Prescott」について、NetBurstアーキテクチャを用いたプロセッサで、Hyper-Threadingに対応すると説明した。また、Prescottベースの2003年のコンセプト・プラットフォーム「Lecta」を紹介し、IEEE 802.11a/b 無線LAN、GbE(Gigabit Ethernet)、USB 2.0、Serial ATAなどのフィーチャーを搭載し、リファレンスプラットフォームを今年9月のIDF Fallで、2003年後半にLectaに基づいた製品が発表されるというロードマップを示した。

Prescottの概要 3GIOの今後の展開 Lectaの概要

 また、次世代のフォームファクタとして、課題となる点を、1.熱設計の許容範囲の拡大、2.静音性の向上、3.EMI(電磁波障害)の対策、4.コスト効率に優れた電源の4点となると説明し、新たに同社が開発したファンなどの解説を行なった。

同社の次世代フォームファクタへの取り組みとして、ファンやヒートシンクの改良や前面吸気などへ取り組んでいると説明した レジェンドの小型PCによるデモでは、ハイビジョンビデオをソフトウェアデコードで2/3ストリームの同時再生を行ない、そのパフォーマンスの高さをアピールした。

 そして、こうした検討の成果としてmicroATXを拡張した「Tidewater」と3GIOベースのフォームファクタ「Big Water」の2つの新フォームファクタを紹介した。

 「Tidewater」は、microATXをさらに小型化し、電源や熱設計ソリューションや筐体サイズなどを定義したもので、性能やサイズを多様化させるアプローチとしている。詳細については明らかにせず、リファレンスデザインを4月に公開すると述べるにとどまっているが、熱設計に配慮したデザインになるようで、スー氏は講演後のプレスセッションで「TDPはTidewaterでは80W程度まで」と説明し、SFF(TDP 45W)などに比べて、よりハイパフォーマンス化が可能なデザインとなるようだ。

 また、「Big Water」は、3GIOをシステムに用いたフォームファクタで、2003年に仕様を策定し、2004年に製品化するという。

2つのフォームファクタを新たに提唱 Tidewaterの概要 Big Waterの概要

Tidewaterのモックアップ Tidewaterの背面 通気性を高めるのダクトを採用している

 最後にスー氏は、「Intelはこれらの機能を開発しているだけでなく、業界に呼びかけている。3GIOも順調に進捗しており、デスクトップ分野でのリーダーシップを引き続き保っていく」と業界標準化作業に大きな力を注いでいくことをアピールし、講演を締めくくった。

□Intel Developers Forum 2002 Spring Japanのホームページ
http://www.intel.co.jp/jp/developer/idf-j/

(2002年4月18日)

[Reported by usuda@impress.co.jp]

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