「ROBODEX2002」プレスプレビューレポート Part2
~ソニーの球体ロボ「Q.taro」やジンジャー風ロボ「ロボビーIII」など

会期:3月28日~31日
会場:パシフィコ横浜
入場料:一般   1,000円
     小中学生  500円
     小学生未満 無料

主催:ROBODEX実行委員会



 パシフィコ横浜で、3月28日~31日の4日間「ROBODEX2002」が開催される。開催時間は28日(木)と31日(日)が10時~18時で、29日(金)と30日(土)が10時~20時。入場料は大人(高校生以上)が1,000円、小中学生が500円。

 ROBODEX(ロボデックス)は「パートナーロボット博覧会」と題するロボット専門イベントで、今回で2回目の開催。前回のROBODEXは2000年11月に開催され、ASIMOやSDR-3Xなどの人型ロボットが話題となり、3日間の会期中に5万人もの一般客が来場した。

 昨日のレポートに引き続き、プレスプレビューの模様をお伝えする。


●パレードにはSDR-4XやASIMOが登場

パレードに参加したロボットたち。左奥から「iSHA」「Robovie II」「同 III」「AIBO」および「SDR-4X」「ASIMO」「Tmsuk 04」「C4」

 ROBODEX開場のメインステージとなる「メガステージ」では、出展するロボットから選りすぐりのロボットたちが一堂に会する「ロボデックスパレード」が行なわれた。

 登場したロボットは、テムザックの「Tmsuk 04」、早稲田大学の「iSHA」、ソニーの「AIBO」と「SDR-4X」、綜合警備保障の「C4」、ATR メディア情報科学研究所の「ロボビーII」と「ロボビーIII」、ホンダの「ASIMO」。それぞれロボットの特徴をアピールしながらステージ上を行進した。

 パレード終了後のプレス向けフォトセッションでは、本イベントのオフィシャルアドバイザーであるタレントの田中麗奈がステージに、ロボットたちの列に加わった。


ソニーのAIBOとSDR-4Xは、ほかのロボットに比べると小さく、移動速度も遅いので、お立ち台の上から自己アピール Robovie IIIはその場で完全静止できない同軸2輪(いわゆるジンジャー型)ロボットなので付き添い同伴

もはやステージイベントのプロフェッショナルなASIMO。パレード参加ロボット中、唯一の等身大の歩行ロボット
【movie】約270KB:ASFファイル
田中麗奈型ロボット、ではなくて本物の田中麗奈。抱いているのはアザラシ型ロボット「パロ」


●ソニーの球型ロボット「Q.taro」

まさしく球の「Q.taro」。写真で本体背後に写る円形のくぼみが充電スタンド
【movie】約255KB:ASFファイル

 ソニーはAIBOやSDR-4Xの他に「ヒーリングクリーチャー」と題した球型デザインのロボット「Q.taro」の試作機を展示した。

 Q.taroは、AIBOなどと同じくペット的な役割を果たすロボットだ。球状の透明なプラスチック外殻内部に、やはり球状の本体が収まっているというユニークな形状をしている。内部の本体は下面に重心があり、移動時には本体が外殻を回すことで移動する。本体左右に1個ずつタイヤがあり、クロウラー(キャタピラ)と同じように前後移動とその場旋回、それらを同時に行なう曲線的な移動が可能。

 Q.taroはリモコンなどで操縦するタイプではなく、内部に搭載したコンピュータで動作する自律型ロボットだ。前後に搭載された4つの焦電センサで温度差を検知することで、目の前にかざされた手などを追って動く、といった動作をする。この他にも10単語程度の音声に反応して動いたり、オーディオ機器を接続して踊る、などの機能もある。また、Q.taroは顔に当たる部分の色を変えたり、音を発するなどの感情表現をとる。人とコミュニケーションをとることで感情表現のバリエーションが増えるといった、成長の要素も搭載する。さらに人とのコミュニケーションだけでなく、Q.taro同士の赤外線通信で、協調動作も行なえる。

 本体の直径は17cmと、バレーボールよりもさらに一回り小さいくらい。外から触れられるのは真ん丸の外殻だけなので、試作機にもかかわらず、展示は来場者がQ.taroに自由に触れる形式で行なわれている。展示スペース上には数台のQ.taroが思い思いに動いていて、来場者が時折かざす手に反応していた。

 Q.taroは非接触充電にも対応していて、自動的に充電スタンドに戻る機能もある。常に動作しつづける環境でも、バッテリは3時間程度持つという。また、体温によって人間を感知し、電源をON/OFFするバッテリーセーブ機能も搭載している。

 自宅の床に転がしておくだけで面白そうなロボットだが、残念ながら現時点ではQ.taroの商品化の予定はない。多関節ロボットのAIBOに比べると、Q.taroの動作部分は非常にシンプルだが、価格的にはそれほど安くはならないようだ。なお「Q.taro」は「Quansi-stable Traveling and Action Robot」(準安定移動行動ロボット)の略とか。

Q.taroは何色かのモデルが展示されている。展示台には段差があるが、Q.taroは段差を認識して上から落ちることはない
【movie】約295KB:ASFファイル
Q.taroの外殻をはずした状態。こちらは前面で、色の変わる顔(?)の周りに各種センサが並んでいる

外殻をはずしたQ.taroの背面。バッテリや制御プログラムユニットのスロットがある 外殻をはずした下面。左右にある白い丸が外殻を回すタイヤ代わり。所々にある黒い穴は障害物センサ


●ジンジャー風同軸2輪の「ロボビーIII」

ロボビーIII。こうしているあいだにもフラフラと動いている
【movie】約181KB:ASFファイル

 ATRメディア情報科学研究所は自律型のコミュニケーションロボット「ロボビーIII」を出展している。ロボビーシリーズとしては、ロボビーIIがすでに様々な展示会に登場しているが、ロボビーIIIはその発展タイプだ。新たに同軸2輪の移動機構を採用したのが最大の特徴となっている。

 同軸2輪とは、自転車やバイクのように前後にタイヤがあるのではなく、同じ軸線上にタイヤがある、いわばリヤカー型の車輪形式。制御をかけないと前後に倒れてしまうが、倒れそうになったとき、そちらに移動するという「手の上にほうきを立ててバランスを取る」的な制御を行なう。

 同軸2輪形式を採用した製品としては、昨年インターネット上で話題になった「ジンジャー(Segway)」などがある。この形式は古くから研究されているもので、担当者によると「枯れた技術で安定している」という。実際にロボビーIIIを目の前にすると、多少前後にフラフラするものの、同軸2輪とは思えない安定性を感じさせた。

 同軸2輪を採用するメリットとしては「姿勢を制御できること」があるという。ロボビーシリーズは人間とのコミュニケーションを研究するために開発されたロボットで、子供とのコミュニケーション時には目線を低くする必要がある。ロボビーIIIでは、上半身を前かがみにする機構があるが、そのとき下半身を後ろに傾けることで、重心を保つことができるわけだ。また同軸2輪は「押されるとその方向に動く」という性質もあるため、人間に誘導されるような動作もできる。さらに大きなタイヤ2個だけで地面に接しているため、不整地での走破性も高い。

 ロボビーシリーズは対人コミュニケーション研究を目的に開発されているため、コミュニケーションに必要と思われる要素に特化して設計されている。たとえば腕には何かを掴むためのハンドはついておらず、基本的に身振りをするための設計になっている。また顔には大きな目玉が搭載され、対話相手に視線を送れるようになっている。これらの要素を駆使して、ロボビーは100種類以上の感情表現動作を行なえるという。ATRメディア情報科学研究所では、こうした感情表現がどのように心理的影響を与えるかという、いわばロボットの人間らしさを研究している。

Robovieの目玉はちゃんと動いて相手を見つめる。口はちゃんとスピーカーになっている Robovieの背中に突き出ているのはアンテナではなくて全方位撮影カメラ。これで声をかけてきた相手の位置を正確に感知する 会話をするロボビーII。ロボビーIIは同軸2輪ではないので、付き添いなしでも安定する


●4月1日から実用販売されるガードロボット

標準デザインのC4の大きさは640×710×1,330mm(幅×奥ゆき×高さ)で重さは90kg。某パ○レイバーに似たデザインだが武装はない(公表スペックでは)

 綜合警備保障は4月1日より受注販売を開始する実用ガードロボット「C4」を出展している。他の多くのロボットが「癒やし」や「コミュニケーション」といったエンターテイメントを目的としているのに対して、C4は警備システムの一環として開発された実用ロボットだ。

 C4は主に大型建造物内部の巡回警備を行なう。CDDカメラや障害物や煙などを感知する各種センサを搭載し、24時間体制で巡回して異常がないかを監視する。C4自身には問題解決能力はなく、C4の役目は異常を人間に通達すること、となっている。移動は車輪で行ない速度は秒速50cmほど。エレベータと通信することで階層移動することもできる。C4は自律的に巡回するだけでなく、リモートコントロールで動作することも可能な設計だ。

 この種の移動ロボットは、搭載バッテリによる稼働時間の制限が問題となるが、C4は自分で充電スポットに行って充電できるため、最小限のメンテナンスのみで24時間運用できる。また、C4は巡回警備だけではなく、昼間は本体のタッチパネルと音声により、施設案内や受付も行なえる。

 綜合警備保障ではC4を同社が販売している警備システム・サービスの一環として提供する。運用コストは担当者によると「昼間の案内役と終夜警備をあわせれば、従来の警備形式に見合うレベル」だという。なお、C4は警備サービスの一環とした年間契約などでの販売以外にも、システム自体の販売も行なわれる。価格は充電装置や制御パソコンなどを含めて950万円。このほか、施設によって無線LANの敷設やエレベータなどの改造費用と、施設案内や受付のソフト開発費用が必要となる。

 決して安価なロボットではないが、デモンストレーション的な役割しか果たせないASIMOなどに比べると、警備システムを兼ねるC4は実用性が高いといえるだろう。ASIMOも懐中電灯を持たせれば夜間警備くらいはできるだろうが、C4は自己充電できるので、メンテナンス要員を減らすといったコスト面で有利な点が多い。

 また、C4は中身だけの販売も行なわれる。すでに3月より浜松科学館では、日本電気が企画・デザインした「グリ夢ちゃん」という名前のロボットがデビュー済みだ。「グリ夢ちゃん」の中身はほぼC4だが、施設にあわせて外見やコンテンツを日本電気がカスタマイズしている。博物館などでは「グリ夢ちゃん」のようにカスタマイズされたC4が納入される可能性のほうが多いかもしれない。

ロボデックスパレードでは付き添いのお姉さんにタッチパネルで案内をするデモを行なった 充電装置は据置型。C4の連続走行時間は約2.5時間で、充電には約3時間かかるが、充電中も施設案内や警報送信が可能 C3(左)とグリ夢ちゃん(右)に囲まれてデモをするC4。グリ夢ちゃんは子供が操作しやすい角度でタッチパネルディスプレイが装備されている


●バンダイは歴代のBNシリーズを展示

 バンダイは、今回のROBODEXに先駆けて発表した新型ロボット「BN-7(仮称)」を出展している。BN-7は画像認識による人物判断や音声認識・会話機能など、家庭の中で使われることを前提とした自律型ロボットだ。

 コミュニケーション系の機能に重点が置かれているが、将来的には子供に勉強を教える、料理のレシピを伝えるなど、インターネットからの情報の仲介役をするいわゆるエージェント機能の搭載も検討しているという。

 バンダイブースのステージ上では「姉妹がいる家庭」というシチュエーションで、BN-7が言葉で言われたとおりにテレビのチャンネルを変える、というデモが行なわれている。プレスデーでのデモでは、BN-7は電源ケーブルらしきものでつながれていて、卓上でしか動いていなかったが、実際には車輪を搭載し、自走することができる。

 今回出展された試作機は、本体の大きさが500×400×680mm(幅×奥行き×高さ)で重さは20kg。商品化の予定については発表されていない。

 なお「BN-7」の「BN」は、バンダイのロボット開発チーム「バンダイ ニュープロパティ開発チーム」の頭文字から取った開発コードネーム。実際に商品化される場合は、別の愛称がつけられるという。バンダイブースでは発売されているネコ型ペットロボット「BN-1」から最新の「BN-8」まで歴代のBNシリーズが展示されていた。

BN-7。Pentium IIIの1GHzとWindows 2000を搭載。片腕だけで6自由度ある デモ風景。起きてきた妹がアニメを見るというシチュエーション いちばん最初の「BN-0」は商品化名称「ワンダーボーグ」として有名なコレ

BN-1は愛称「わがままカプリオ」として発売中。毛の生えたモデルも展示されている 「BN-3」と「BN-4」はロボット競技大会「マイクロメカニズムコンテスト」出場用のロボット。500円玉に乗る大きさの有線操縦ロボットだ 「BN-2」と「BN-5」。いずれもワンダーボーグの次期商品開発のための試作品

「BN-6」はBNシリーズ最大級の恐竜ロボ。サーボ(角度制御できるモータ)システムの研究のために開発された 「BN-6」の胴体部。関節部の白いパーツがサーボと思われる。組換えが容易で犬型デザインも製作されたとか 「BN-8」は昨年の国際ロボット展で「NET-BORG」という名称で展示された、九州松下製のウェブカメラを搭載するロボット。パネル展示のみ

□バンダイ ロボット研究所のホームページ
http://www.roboken.channel.or.jp/
□関連記事
【3月27日】バンダイ、顔と声を認識する自律型ロボット「BN-7(仮称)」を試作 (GAME Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20020319/bandai.htm


●タカラは6,980円の飛行船ラジコンを展示

 タカラは昨年発売された人型ラジコンロボット「ドリームフォース01」と共に、新作の飛行船ラジコン「ドリームフォース02 スカイシップ」の展示も行なっていた。

 ドリームフォース01は戦闘志向の人型ロボットだったが、ドリームフォース02は非常にゆったりとした動きが可能な室内用のラジコン飛行船だ。風に弱いらしく、会場ではあらぬ方向に飛んでいく光景も見られた。

 ドリームフォース02は4月末発売予定。本体価格は6,980円で、別途3,000円のヘリウムガスが必要だ。コントローラー側の電池から充電マスト経由で飛行船側の充電池に充電する仕組みになっている。1回10分の充電で約15分の飛行が可能。



会場を飛ぶドリームフォース02。たまに風に煽られてブースのハロゲンランプにあたりそうになったり ドリームフォース02は写真の2種に加え広告付きの「コラボレーション号」の3種類で発売される 会場で密かにドリームフォース02を操縦する田中麗奈


●有名ロボットから個人参加までいろいろ

 このほか、ROBODEXではASIMOなどの有名なロボットから個人参加のロボットまで多彩なロボットが出展していた。

ソニーブースでは「SDR-4X」軍団がステージを熱演。一般公開は初めてとあって大盛況。不思議な歌声を聴ける ホンダブースの主役はもちろん「ASIMO」。様々なイベントでステージをこなすASIMOはまさにプロのエンターテイナー 製造科学技術センターのブースでは人型ロボット「HRP-2P」のデモが行なわれた……が、この日最後のデモではバッテリー切れで、貧血のごとく膝から崩れ落ちてしまった

昨年のCEATECでは村田製作所ブースに展示された「morph」は、今回は北野共生プロジェクトブースで展示。実働デモはないが、様々なアクションのビデオを流している テムザックの4足歩行ロボット「T7S TYPE2」。重量40kgの大型犬サイズで「夜中に襲ってきたら失禁するかも」というくらいの大きさがある 個人でブースを出展した高橋智隆氏。手にしているのは電磁石を使って鉄板に張り付くことで歩行するロボット「マグダン」

「マグダン」はラジコンメーカー京商のラジコンロボット「ガンウォーカー」のベースになっている 高橋氏と同じブースで展示をしている佐藤豊氏。台の上に乗っているブリキっぽいロボットは、2足歩行ロボット格闘大会ROBO-ONEで3位に入賞した「毘夷零号機」


□ROBODEX2002のホームページ
http://www.robodex.org/
□関連記事
ロボット関連記事リンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/link/robo02_i.htm
【2000年11月28日】ROBODEX2000レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/link/robo00_i.htm

(2002年3月28日)

[Reported by 白根雅彦]

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