日本人は人間型ロボットに浮かれすぎ?
~ROBODEX2002記者会見レポート

3月27日



右から講談社の山野常務、ソニーの土井上席常務、本田技研工業の平井常務、ニッポン放送の亀渕社長

 28~31日の3日間、人間共存型ロボットの博覧会「ROBODEX2002」がパシフィコ横浜で開催される。一般公開に先立つ27日、報道関係者向けのプレスプレビューにおいて、記者会見が開かれた。

 会見にはロボットメーカーからソニー株式会社の土井上席常務と本田技研工業株式会社の平井常務が、また協賛企業から株式会社講談社の山野常務とニッポン放送の亀渕社長が出席、ロボット産業の展望を語った。約30分の会見は終始、報道陣からの質問に答える形で進行した。


●現在のロボットはApple II

 ソニーの土井氏と本田技研工業の平井氏はまず、現在のロボット産業が事業として成立しておらず、「種まき段階」(平井氏)であるとの認識を明らかにした。

 ソニーの土井氏はロボット市場の現状を、PC市場の成立過程と重ね合わせて説明。「Apple IIが数万台売れたところで、世の中がPCというものを新しい産業と認識し、MacintoshやIBM PCが登場して事業として成立するようになった。ロボットはApple IIの段階をすでに越えているが、MacやIBM PCに当たるものはまだ登場していない」とした。

 さらに「SDR-3Xは動くものをお見せできれば、と作った。SDR-4Xは商品として売るために作っており、年内にはなんとか発売できそうだ。かなり高額になるが、なんの役にも立たないエンターテインメント・ロボットを買ってもらえるかどうかは見当もつかない。だが市場を開拓するためのトライアルとして、積極的に挑戦する」と、これからのロボット市場にかける意気込みを語った。

●ロボット事業の成立に必要なもの

 本田技研工業の平井氏は「エンターテインメントロボットはともかく、ASIMOのようなロボットが家庭に入り込むような需要は今のところ無く、ニーズよりもシーズ先行型の事業になっている」と現状を説明。「市場の扉を叩いて開きたいのだが、扉がいっぱいあって、どれをどのように叩けばいいのか研究している段階」と、ロボット市場開拓における「産みの苦しみ」を表現した。

 また、ソニーの土井氏はロボット事業がさらに発展するために必要な要素として「参加企業が増えること」をあげた。同氏は現在のロボット市場は「カンブリアン・エクスプロージョン(5億7千万年前、爆発的に生物の種類や数が増えた時期のこと)以前の状態」と表現、「これから多様なロボットが登場し、やがて淘汰され、大きな産業に育つ」と展望を語り、「カンブリアン・エクスプロージョンを起こす努力もしなければならない」と述べた。

●海外でも、子どもなら人間型ロボットに抵抗を感じない

「ニューヨーク証券取引所でも、トレーダーたちのASIMOに対する反応はよかった」(平井氏) 写真はROBODEX2002のホンダブースで上映された、ニューヨーク証券取引所のASIMO
 日本人がロボット好きである理由を問われた本田技研工業の平井氏は、「定かな理由はわからないが、鉄腕アトムや鉄人28号などのアニメで、子どものころから刷り込まれてきたのが大きいかもしれない」と述べた。そのおかげで「日本では人間型ロボットにも抵抗が無く、製造ラインにロボットを入れる際にも、海外では組合が反発したのに対し、日本ではそのようなことがなかった」とした。

 だが「ドイツやパリ、ニューヨークにASIMOを連れて行って、見た人にアンケートをとったところ、子どもたちは抵抗を感じていなかった」と、海外でも日本式の人間型ロボットが受け入れられる可能性があることを明らかにした。

 2000年に開催された前回のROBODEX2000から、ロボットについての世の中の受け止め方は変わったか、という質問については、講談社の山野氏が「講談社の媒体での反応など見ていると、ロボットが社会の中で人間と共存するのは当たり前、といった受け止め方をされている。ロボットに使われている技術、どのように進化していくのか、といったことに関心が移っている」と答えた。

 ソニーの土井氏は、「20世紀後半から21世紀にかけて、技術の進歩は緩やかになっている。例えばリンドバーグの大西洋横断からジャンボジェット機の就航まではわずか30年だったが、その後の飛行機の進歩は緩やかになった。そんな時代でもロボットは急速に進歩している。今勢いがあるのはロボットだけだ。大学の出展が増えているのもそれをあらわしている。大学による展示をぜひ見てほしい」と述べた。

●日本は人間型ロボットに注力しすぎているのか

 最後に韓国の報道関係者から「日本は人間型に力を入れすぎているのではないか、お金になるタイプのロボットの開発に遅れを取る恐れはないのか」という質問が出た。

 これに対し本田技研工業の平井氏は、「ロボットの開発には“要素の開発”と“全体の開発”という2つの側面がある。要素としての技術は優れたものが海外にもたくさんあるが、それらを形あるものにまとめあげるのが日本の特徴」「どんな形であれ、ロボットを形にするということに技術をつぎ込んでいる。要素技術もおろそかにはしていない。全体を形作るために要素にも力を入れている」と述べ、人間型/非人間型に関わらずロボット技術を開発していく姿勢を明らかにした。

 またソニーの土井氏は「ソニーはロボット産業の中で、エンターテインメント・ロボットが大きなパーセンテージをしめると考え、エンターテインメント・ロボットに賭けている。しかし、エンターテインメントロボット以外のロボットがお金になる可能性もある。答はあと何年もたたないとわからない」として、ソニーが人間型ロボットに注力する理由を説明。

 さらに「機能を追及すれば2本足や4本足で歩くものになる必要は無く、車輪や無限軌道で動くほうが合理的だ。だが、要素の技術は(エンターテインメント・ロボットと)共通するものが多い」とした。


鉄腕アトムの誕生日である2003年4月7日に向けて、鉄腕アトムのTVアニメ化や、ハリウッドでの映画化をソニーピクチャーズが進めている。「同じソニーグループが手がけているのは単なる偶然」(ソニーの土井氏)。写真のポスターは会場内で販売されている 会場内には手塚プロダクションも出展。アトムやヒゲオヤジと記念撮影ができる 欧米での人間型ロボットに対する抵抗感を考えると、意外な出展者といえる英The Shadow Robot Company。会場内の説明には'87年の創立と書かれている

□ROBODEX2002のホームページ
http://www.robodex.org/
□関連記事
【3月27日】「ROBODEX2002」プレスプレビューレポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0327/robodex1.htm
ロボット関連記事リンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/link/robo02_i.htm

(2002年3月28日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]

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