個人向けパソコンのリサイクル費用徴収の基本方針が固まる
~既販パソコンは廃棄時、新品は販売時徴収で合意へ

委員会は霞ヶ関の中央合同庁舎第5号館の環境省第1会議室で行なわれた

2月21日発表



 既販パソコンは廃棄時徴収、新品パソコンは販売時徴収に --2月21日午前10時から行なわれた産業構造審議会の「環境部会廃棄物・リサイクル小委員会パソコン3RWG及びパソコンリサイクル検討会合同会合」において、個人向けパソコンのリサイクル費用の徴収方法が、制度施行前に販売されたパソコンに関しては廃棄時徴収を採用、制度施行後に販売されるパソコンについては、販売時にリサイクル費用を上乗せして徴収する販売時徴収方法を採用する方向で合意した。経済産業省と環境省は、これに基づいて、パプリックコメントの作成にとりかかることになる。

 ただし、同制度の実施時期については、1.回収、リサイクル実施のためのメーカーなどによる詳細な検討、体制構築、2.販売店、自治体などとの調整、3.消費者に対する周知、広報などに、それぞれ半年間ずつの期間を必要とすることから、当初予定されていた2002年度中の実施は、事実上難しいといえそうだ。

 12月に開催された前回の審議会では、パソコンメーカーなどが参加する業界団体のJEITA(電子情報技術産業協会)が、当初提示していた全製品の廃棄時徴収を「苦渋の決断」(JEITA)で取り下げ、販売時徴収に歩み寄った。しかし、既販パソコンについては、廃棄時徴収ですすめたいJEITA側と、無料で回収し、それにかかわる費用を今後販売する新品パソコンに上乗せする手法をとりたい環境関連団体との間で意見がわかれ、今回の審議会では、この行方が焦点となっていた。

 今回の審議会では、経済産業省、環境省から提示された報告書案のなかで、「メーカーはできるだけ多くの場所に指定回収場所を設けるとともに、宅配便サービスなどを準備することにより、回収にあたっての消費者の利便性を向上させること」、「メーカーなどとの連携を図る自治体との協力をすすめることや、販売促進活動などを通じて、消費者からの既販品の回収が促進されるよう積極的な取り組みを行なうこと」、「メーカー、自治体、国など関係者が協力して、消費者に対して、メーカーなどへの排出を呼びかけていくこと」を条件として、既販品の廃棄時点での費用回収制度をとった。

 既販品を廃棄時徴収とした理由としては、1.制度実施前に販売されたパソコンの排出量が少ない、2.自治体の処理困難性が必ずしも高くない、3.自治体の継続可能性もあり、また、既存の廃棄物処理業者などによる収集も存続する、4.回収量が確保されないとメーカーなどが構築した回収、リサイクルの仕組みが無駄になることからメーカーなどによる積極的な回収努力が期待される、5.中古市場が拡大しつつあることで、メーカーなどや販売店による市場における有償買い取りが出現しつつあり、今後も拡大が期待できる、6.以上を考慮すると不法投棄の増大懸念は大きくない-- とした。

 だが、委員の間では、「この制度では、既販パソコンについては不法投棄が増える可能性がある」ことや、「今回の制度をとることで、販売時徴収だけを強調することは危険。今後10年程度は、既販パソコンの廃棄時徴収が中心になることから、廃棄時徴収の意識を徹底させることが必要」との意見も出ていた。

 一方、回収方法に関しては、パソコンとディスプレイのメーカーが異なるなどメーカー個別の回収が難しいことから、共同での問い合わせ窓口や回収窓口の設置、全国約2,000カ所の宅配便の集配拠点、約400カ所のメーカーの保守サービス拠点などの活用も提示された。

 徴収される費用に関しては、報告書案のなかで、推定値として、デスクトップパソコン(ディスプレイ含む)で、リサイクル費用3,000~4,000円、収集運搬費用が1,500円の合計4,500~5,500円。ノートパソコンで、リサイクル費用1,000~1,500円、収集運搬費用が1,000円の合計2,000~2,500円になるとされた。

 だが、これまでの回収方法であった自治体の粗大ゴミ処理にかかる費用は、東京23区の場合、デスクトップパソコンで3,405~6,475円程度、ノートパソコンで448~852円程度の処理費用がかかると算出している。これと比較すると、ノートパソコンは粗大ゴミでの処理の方が安く済むことから、報告書案では、自治体とメーカーがリサイクルコストに関して協力する必要があることなどを指摘している。

 また、新品パソコンに上乗せされるリサイクル費用に関しては、メーカー側でリサイクル時点まで管理することから、これが利益の内部留保と見なされ、40%の法人税が加算され、これがリサイクル費用に上乗せされる可能性が指摘されていた。これについては、「消費者負担を軽減するという意味でも、ぜひ国や関係機関で検討していただきたい」(JEITAのPC3R推進事業委員会・富田克一委員長=NEC)と税制優遇策の検討を求めた。

 一方、自ら輸入したパソコンや自作パソコンについては、可能な限り、回収、リサイクルを進められるようにしたいとし、ユーザーに対して、引き取り、リサイクル業者への引き渡し、費用の支払いなどの協力を求めていくとした。

 永田勝也座長(早稲田大学教授)は、「議論のなかでは、実効性、効率性、永続性、周知のしやすさなどで、さまざまな意見が出て、結果として矛盾するものがあったり、ベストな案とはならなかったところもあるだろう。だが、今回の会合で、いま考えられるものとしての全体的な流れは大方決まった。今後は、これを評価していく必要がある。成果をあげられるように努力していくことが必要」とまとめた。

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(2002年2月21日)

[Reported by 大河原克行]

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