リニューアル直後のT・ZONE.本店店長に聞く
「秋葉原の大きな変化に気づいた」



秋葉原T・ZONE.本店
 東京、秋葉原のT・ZONE.本店が2月8日にリニューアルオープンした。

 初日には、開店前から約50人が並んだほか、初の土日となった9日からの3連休も、リニューアル前に比べて、30%増という集客を達成、好調な出足を見せた。今回のリニューアルで新たに美少女ゲームソフトコーナーを1階に新設するなど、新たな取り組みを見せたのに加え、経営再建に乗り出している同社の今後の行方も気になるところだ。

 T・ZONE.本店の武内豊美店長に、T・ZONE.本店のリニューアルの狙い、そして今後の方向性などを聞いた。


武内豊美店長
--今回のリニューアルの目的はどこにあるのですか。

【武内】2つの狙いがあります。1つは、T・ZONE.が本来得意としていたPCパーツをはじめとするマニア向け商品を中心にした店づくりにリソースを集中するという点です。8階のPCパーツコーナーを4階に拡張する形で移動させ、1フロアとしては秋葉原最大規模のパーツ売り場を作りました。

 そしてもう1つは、秋葉原の顧客層として多くのユーザーを占めはじめた、美少女ソフトコーナーを新設するということです。これも、1階の入口付近に配置し、T・ZONE.の新たな顔と位置づけました。もちろん、CSKエレクトロニクスの傘下から抜けるということで、CSKとのシナジーによって実現していた中小企業向けのコーナーなどを見直す必要があったという点もリニューアルの背景の1つといえます。

--T・ZONE.が美少女アニメソフト分野に本格参入することに対して、社内のコンセンサスはすぐに取れたのですか。

【武内】賛否両論がありました。T・ZONE.のブランドにはそぐわないのではないか、あるいはこれまでのユーザーの方々から拒否反応があるのではないか、といった議論もありました。

 しかし、秋葉原の街に立ってみると、大きな変化に気づいたのです。例えば、売り出しのビラを配ると、1~2年前は、T・ZONE.が得意とするPCパーツ系のユーザーが多かったせいもあって、すぐにそれを受け取ってくれて、その広告効果もあった。しかし、最近では、7割ぐらいの人たちが受け取ってくれない。彼らを見てみると、メッセサンオーや虎の穴の紙袋を持っている。美少女アニメソフトには興味があるが、T・ZONE.には興味がないユーザーたちばかりなのです。

 そして、残りの3割のユーザーを見ても、その多くが家族連れだったり、外人だったりで、ビラを配る効果がない。秋葉原の中央通りを歩く客層が変わってきているのです。こうした動きをみて、秋葉原で商売をやる限り、美少女アニメソフトを扱うことは必須である、という認識が根底にはありましたね。

--しかし、1階の入り口に美少女アニメコーナーを置くということは、T・ZONE.としてはかなりチャレンジングな取り組みですね。家主のミナミ電気からも反対されたのでは?

【武内】ミナミ電気さんも、最初はいい顔はしなかったですね(笑)。でも、やると決めたからには徹底的にやるべきだと。最初は、3階でやろうか、8階でやろうか、という議論もあったのです。だけど、後発で参入するんだから、1階の入り口に置かない限り、認知度はないだろうと。T・ZONE.が片手間で美少女ソフトを始めたぞ、っていうんじゃ、お客さんが集まらないのは当然です。だから、1階の入り口にこだわったんです。1階に置けば、これらのユーザーがグルッとまわる巡回コースのなかにも入るんじゃないか、という読みもありましたしね(笑)。

--もともとT・ZONE.には美少女アニメソフトを売る土壌があったのですか。

【武内】所沢や大阪・日本橋では扱っていましたから、そうした点での経験はありました。また、CSKエレクトロニクスの連結対象会社に、美少女アニメソフトの流通を行なっているジェイ・ノードがありますから、ここを通じてのノウハウを持っています。そうした意味では、参入しやすい環境がありました。

--武内店長は、この分野には明るいのですか。

【武内】実は、私はよく知らないんですよ。いま、勉強中です。ただ、売り場担当には、所沢で取り扱った経験者などを配置しています。この商品は、あまりお客さんと話をして売るというものではないようですね。むしろ、イベントなどの企画力の方が重要だと認識しています。本社の企画チームと連携して、サイン会などを随時やりたいと考えています。

--初の土日の成果はどうでしたか。

【武内】サイン会を開いたのですが、毎回50~60人の人が集まってくれました。売り上げとしては、目標の8割程度だったのですが、まずまずの出足だと思っています。しかし、まだまだ改善しなくてはならないこともありますね。

--どのあたりを改善しますか。売り場を拡充することも考えているのでしょうか。

【武内】現在32坪の売り場に、3,000アイテムを用意していますが、当面は、あの規模でいきます。ただ、マニアのお客さんを惹きつけるような商品の品揃えが出来ていませんね。これからは、小物などを取り揃えていきたいと思っています。

--ところで、本業の(笑)パソコンショップとしての展開ですが、今回のリニューアルによって、本体ビジネスからの脱却を明確に打ち出したと捉えていいのですか。

【武内】優先順位が大きく変わりました。これまでは、第1番目がメーカー製のパソコン本体。それから周辺機器、そして3番目にパーツ。しかし、今回のリニューアルで、1番目がパーツと自作パソコン、2番目が周辺機器。最後にパソコン本体です。

 もともとT・ZONE.本店には、マニアが集まっていたという経緯がありました。アップルはT・ZONE.でしか買わないというお客さんや、ThinkPadも40万円以上の高機能モデルを購入していくといったユーザーが多かった。メーカー製のパソコン本体はこうした方々に絞っていこうと。正直いって、ボリュームゾーンの売れ筋パソコンは、郊外型の量販店やカメラ専門店には太刀打ちできない。価格やポイントでこられたら勝負にならないんです。それならば、T・ZONE.が強みを発揮できる部分にリソースを割こうというわけです。

--当然、DIYショップと社内競合することになりますね。

【武内】一部ぶつかるところはあると思います。しかし、DIYショップは、ハイエンドユーザーが中心ですし、取り扱い製品も本当にとんがった商品ということになります。バルク品が中心だったり、場合によっては、試作品などもドンドン展示するでしょうし。それに対して、T・ZONE.本店では、自作パソコンの初心者、中級者がターゲットとなります。取り扱い製品もバルク品よりもリテール品が中心になりますよ。当店のスキルの高い店員が、パーツ売り場をお客さんと一緒にまわって、1周すれば自作パソコンが出来上がってしまう、という店を作りたいんです。

--しかし、主力のパーツ売り場が、なぜ4階なのですか。

【武内】もともとT・ZONE.本店では、4階にメイン商品を置くという店づくりをしてきました。従来の稼ぎ頭のノートパソコンも4階でしたし、DOS/Vパソコンを始めたときも4階でした。

--テレビ番組でいうゴールデンタイムのような売り場だと。

【武内】そうですね。従来は、パーツ売り場が8階でしたし、本店にはエレベータがないですから、みなさんに8階までエスカレータであがってきていただいた。でも、今度の4階は上からも下からも一番行きやすいフロアなんです。

--失礼を承知で言うと、リニューアルした割にはあまり店がきれいになっていませんね。

【武内】リニューアルは1カ月でやりましたし、予算もT・ZONE.ミナミのオープンのときの10分の1程度じゃないでしょうか。まだ、バックヤードが見えたりというところもありますから、これから、改良を加えてきれいにしていきます。

--経営不振の報道や、CSKからヴィーナス・ファンドへの経営権移行などが伝えられたことで、流通商社が取引を絞り込むという動きが見られましたね。その結果、品揃えが悪化したという事実もありますが。

【武内】確かに、そうしたことがありました。しかし、今回、T・ZONE.本店のリニューアルや7店舗の閉鎖などを明確に打ち出したことで、流通商社の方々も戻ってきてくれています。今後は、品揃えの問題は解決されると思います。

 さらに、直輸入品にも改めて力を入れたいと思っています。もともとT・ZONE.の特徴の1つに直輸入品というのがあったわけですが、これがしばらくできていなかった。ぜひ復活させて、T・ZONE.でしか売っていない、という商品を揃えたいですね。実現するのは今年4月以降でしょうが、すでに準備に入っていますし、直輸入品コーナーのスペースを大きく取りますよ。週替わりで新しい直輸入品商品の紹介もしていきます。

--そうした意味で、T・ZONE.ならではの品揃えが復活するのは4月頃になりますか。

【武内】そうですね。実は、3月一杯は7店舗の閉店に伴う在庫処分を、本店とDIYと日本橋でやらなくてはならない。各店舗でも閉店セールをやったのですが、それでも売れ残っているものがある。これを2月から3月にかけて売りつくします。これを処分してから、積極的に品揃えを強化します。

--言い換えれば、処分品の目玉商品を買えるチャンスということですか。

【武内】そうですね。3月にかけて、これからドンドン目玉商品が出ますよ。ある店ではピピン@アットマーク(バンダイ)の在庫も出てきましたよ(笑)。なにが出てくるか、私も予想がつかないですよ。

--もう1つ気になるのは、一連の騒動にあわせて人材の流出があったという点です。店員のスキルが下がっているという指摘もありますが。

【武内】それには2つの理由があります。1つは、ローコスト経営を目指してアルバイトを増やしたことによるスキルの低下です。昨年の4月にはアルバイトの比率は15%ぐらいでしたが、今年初めには40%ぐらいまで拡大していました。しかし、これも今後は改善を図っていきます。

 それともう1つは、新店舗の開店や、テコ入れすべき店舗へ優秀な人材を投入したことでのスキルの分散です。これに関しては、7店舗の閉鎖によって、秋葉原に優秀な店員が戻ってきている。だから先週の土日も、店長としては安心して店員の接客を見ていられたんですよ。私は、人材の流出というのはなかったと思っています。むしろ、これからはスキルの高い店員が対応できるというメリットが出ると思いますよ。

--ニュースリリースでは、秋葉原、日本橋、そしてまだ出店はしていませんが、大須地域にリソースを集中させるという話になっていますね。例えば、渋谷や吉祥寺の店舗はどうなるのですか。

【武内】これに関しては、社内では正式な話は出ていません。ただ、吉祥寺にしても、渋谷にしても、アップルやバイオの熱烈なユーザーがいますから、これを維持しながら、PCパーツなどを強化するということになるかもしれません。繰り返しになりますが、私の立場では、これらの店舗がどうなるかはわかりません。

--今回のT・ZONE.本店のリニューアルは、自己採点するとどうですか。

【武内】65点ぐらいでしょうか。せっかくパーツ売り場を1フロアに、ワンストップで買えるようにしたのですから、ここの品揃えを強化したい。店の作り込みももっとやりたいですね。DIYショップの3フロア分と、本店の4階の1フロアはほぼ同じ売り場面積なんです。ですから、まずは、DIYショップの売り上げを抜くことが目標です。まだ差はありますからね。本店については、まずは、4階が評価を得られるかどうか次第だと思っています。

--PC Watchの読者にメッセージはありますか。

【武内】ぜひ欲しい物があればリクエストしてください。何でも揃えます。マニアの方々に来ていただける店づくりを目指したいのです。生まれ変わった新生T・ZONE.本店をぜひ応援してください。

□T・ZONE.のホームページ
http://www.tzone.com/
□関連記事
【2月8日】秋葉原T・ZONE.本店がリニューアルオープン
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0208/tzone.htm
【2月1日】CSKエレ、T・ZONE.本店を2月8日にリニューアル
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0201/csk.htm

(2002年2月15日)

[Reported by 大河原克行]

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