MIPS Technologies、日本オフィスを開設
~NECと東芝が自社製MIPSチップのロードマップを発表

MIPS Technologies
ジョン・ボーゴインCEO

1月17日発表

連絡先:日本ミップス・テクノロジーズ
     Tel.03-5733-9544



 組込用プロセッサベンダーの米MIPS Technologiesは、17日、日本オフィスの開設を発表した。都内で行なわれた発表会には、同社のジョン・ボーゴインCEOも来日、MIPS Technologiesのビジネスモデルと日本市場への取り組みについて説明した。

■独自のライセンス戦略をとるMIPS

 MIPS Technologiesは「プレイステーション 2」のCPU「エモーション・エンジン」や、PDA「シグマリオン」のCPU「VR4131」など、いわゆる「MIPSアーキテクチャ」プロセッサのコアを提供しているファブレス企業。同社のビジネスモデルのキーワードは「IP(Intellectual Property=知的財産)」で、自社で設計したプロセッサコアやアーキテクチャ、命令セットを他社にライセンスすることで、ライセンス料と、製品の出荷量に応じたロイヤリティにより利益を得るというもの。ライセンスを受けている企業(ライセンシー)は、現在65にのぼる。

 ライセンス形態は2つあり、1つはプロセッサアーキテクチャや命令セットを利用した製品を開発・製造するライセンス。ライセンシーはアーキテクチャに基づいたプロセッサコアやチップを設計し、付加価値を加えた製品を製造できる。現在、NEC、東芝を始めとした14の企業がこの形態のライセンシーとなっている。

 もう1つはMIPS Technologiesが開発したプロセッサコアやSystem On Chipを製造するライセンス。スマートカードや自動車の制御プロセッサとして、このライセンスが利用されている。

 ボーゴインCEOはこのビジネスモデルのメリットを、「研究開発コストを各メーカーで分散でき、世界中で最良の設計を手に入れることができる」ことなど、と語った。また、Strong ARM、PowerPC、SHなどの競合製品と比較してのメリットとして、命令セットやコアを改変できる柔軟性や、ライセンス可能な64bitテクノロジーをあげた。

MIPSベースのチップが採用されている製品。ゲーム機、PDA、デジタルカメラ、STBのほか、AIBOやエアボードの姿も見える MIPSのライセンスが製品になるまで。MIPSの知的財産(IP)でコアを製造し、ライセンシーやサードパーティーがカスタムロジックやI/Oなどを付加してSystem on Chipを製造し、製品に組込む

■MIPSの業績と日本・アジア市場への取り組み

CATV用STBにおけるシェアを表すグラフ。競合製品としてPowerPCや68000、SHといったチップがあげられている
 同社製品のシェアについては、CATVのセットトップボックス(STB)で43%、衛星放送のSTBで37%、ハイエンドのOAで48%、ケーブルモデムで79%のシェアを獲得しているとした。また、Cisco製ルータの80%でMIPSベースのチップが使われていることも公表した。

 日本市場への取り組みについては、Nintendo 64やプレイステーション/プレイステーション 2により、日本でもっとも大きな業績を得たことを挙げ、さらに自動車やプリンター、OA機器など、日本とアジアのコンシューマ製品において、MIPSプロセッサが成功する機会があると述べた。

 なお、発表会に先立ち、MIPS Technologiesは2002年度第2四半期の業績を発表している。これによれば、第2四半期の売上高は1,200万ドル(前年同期は1,900万ドル、37%減)、純利益は350万ドル(前年同期は420万ドル)、1株当たり純利益は0.09ドル(前年同期は0.10ドル)で、「MIPS Technologies史上最悪の業績」としている。

 売上の内訳は、ライセンス料が730万ドル、ロイヤリティ収入が470万ドル。特にロイヤリティにはNintendo 64関連のロイヤリティ減少が響き、前年のロイヤリティ収入920万ドルから49%の減収となった。

 発表会の席上では、「ライセンス料とロイヤリティの比率が半分ずつになるのが目標」との発言がボーゴインCEOからあったが、今回の業績を受けてのものと思われる。

■東芝とNECがMIPSチップのロードマップを発表

 発表会にはSystem on Chip設計に関するIP企業であり、MIPS Technologiesとパートナーシップを結んでいる日本シノプシス株式会社、ライセンシーである日本電気株式会社 NECエレクトロンデバイスカンパニー、株式会社東芝 セミコンダクター社からも関係者が出席、日本オフィス開設を賛助するスピーチを行なった。

 この中で、東芝は同社のMIPSアーキテクチャチップである「TX」シリーズのロードマップに触れた。これによれば、2003年にはMIP64アーキテクチャベースのTX99シリーズを0.1μmプロセスの660MHzからリリース、2005年には0.07μmプロセスに移行し1.2GHzを達成するとした。また、高速化の一方で、DSPと融合した製品も開発、マルチメディアやネットワーク処理に適したチップを製造するとした。

 またNECも「VR」シリーズのロードマップを発表。現行製品のVR55xxシリーズにおいて、2003年には現在の0.13μmプロセスから0.10μmプロセスに移行、銅配線技術を利用して800MHzまで高速化すると同時に、消費電力を1.5Vから1.2Vに削減するとした。また、VR55xxのコアにL2キャッシュとPCI-X、100Base-TX対応EthernetなどのI/Oを統合、DDR-SDRAMに対応したVR77xxシリーズを今年リリースすると述べた。

 両社とも、ARMやPowerPCに対抗するため、MIPSチップのプレゼンスを拡大し、マルチメディアやネットワーク機能を強化することをMIPS Technologiesに訴え、賛助を終えた。

東芝TXシリーズのロードマップ NEC VRシリーズのロードマップ VR77xxシリーズの内部。統合されたI/OやDDR-SDRAMコントローラが見える

□MIPS Technologiesのホームページ(英文)
http://www.mips.com/
□日本ミップス・テクノロジーズのホームページ(和文)
http://www.mips-japan.co.jp/
□ニュースリリース(英文)
http://www.mips.com/pressReleases/011702.html

(2002年1月17日)

[Reported by tanak-sh@impress.co.jp]

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