レビュー

6コアになってコスパが向上したCore i7-8700Kをベンチマーク

 10月5日より、Coffee Lake-Sのコードネームで知られるIntelのデスクトップ向け第8世代Coreプロセッサのグローバル販売が開始される。このたび、待望される国内での販売開始に先立ち、Core i7-8700KとCore i5-8400をテストする機会を得られたので、ベンチマークテストで第8世代Coreプロセッサの実力をチェックした。

最上位のCore i7-8700KとCore i5-8400をテスト

 Coffee Lake-Sことデスクトップ向け第8世代Coreプロセッサは、Kaby Lake-Sの後継にあたるメインストリーム向けのCPUであり、CPUソケットにはLGA1151を採用する。

 LGA1151はKaby Lake-SやSkylake-Sでも採用されたCPUソケットだが、Coffee Lake-Sでは電源設計が変更された関係で、既存のLGA1151対応マザーボードでは動作せず、新チップセットである「Intel Z370」を搭載したマザーボードが必要となる。

Core i7-8700K(左)とCore i7-7700K。いずれもLGA1151に対応しており、切り欠きの位置に違いはない
Core i7-8700K(左)とCore i7-7700K。CPU裏面の電極にも違いが無いように見えるが、電気的な互換性はない

 今回テストするCoffee Lake-Sは、最上位モデルとなる6コア12スレッドCPU「Core i7-8700K」と、中位の6コア6スレッドCPU「Core i5-8400」の2モデル。1,000個ロット時の単価はそれぞれ359ドルと182ドルとなっており、それぞれのスペックは以下の通り。

【表1】テストするCofee Lake-Sの主なスペック
モデルナンバーCore i7-8700KCore i5-8400Core i7-7700K
製造プロセス14++14+
マイクロアーキテクチャCoffee Lake-SKaby Lake-S
コア数664
スレッド数1268
L3キャッシュ12MB9MB8 MB
ベースクロック3.7 GHz2.8 GHz4.2 GHz
ブーストクロック4.7 GHz4.0 GHz4.5 GHz
内蔵GPUIntel UHD Graphics 630Intel HD Graphics 630
対応メモリDDR4-2666 (2ch)DDR4-2400/DDR3L-1600 (2ch)
TDP95 W65 W91 W
対応ソケットLGA1151 (Z370のみ)LGA1151
価格(1,000個ロット時)359 ドル182 ドル339 ドル
Core i7-8700K(ES品)
Core i5-8400(ES品)
Core i7-8700KのCPU-Z実行画面
Core i5-8400のCPU-Z実行画面

テスト機材

 Coffee Lake-Sのテストにあたっては、Intel Z370 チップセットを搭載したASUS製マザーボード「ASUS PRIME Z370-A」を借用した。CPUソケットにLGA1151を採用しているが、Intel Z370チップセットを搭載したマザーボードはCoffee Lake-S専用であり、Kaby Lake-SやSkylake-Sなどの従来のLGA1151対応CPUは利用できない。

ASUS PRIME Z370-A
CPUソケットのLGA1151。Kaby Lake-SやSkylake-Sなどとは電気的に互換性がない

 Coffee Lake-Sの比較対象には、Kaby Lake-Sの最上位モデルである4コア8スレッドCPU「Core i7-7700K」と、Core i7-8700Kと同価格帯の競合製品となるAMDの8コア16スレッドCPU「Ryzen 7 1700」を用意した。

 そのほか、使用したパーツは以下の通り。なお、動作中に冷却不足による性能低下を避けるため、CPUクーラーとビデオカードのファン制御はそれぞれ80%に固定している。

【表2】テスト機材一覧
CPUCore i7-8700KCore i5-8400Core i7-7700KRyzen 7 1700
マザーボードASUS PRIME Z370-A (UEFI: 0408)ASUS PRIME Z270-A (UEFI: 1009)ASUS PRIME X370-PRO (UEFI: 0902)
メモリDDR4-2666 16GB×2
(2ch、19-19-19-43、1.20V)
DDR4-2400 16GB×2
(2ch、17-17-17-39、1.20V)
DDR4-2666 16GB×2
(2ch、19-19-19-43、1.20V)
GPUGeForce GTX 1080 8GB (FOUNDERS EDITION)
システム用ストレージPlextor PX-128M8PeG (128GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用ストレージOCZ VTR180-25SAT3-480G (480GB SSD/SATA 6Gbps)
電源玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium)
CPUクーラーサイズ 風魔 (SCFM-1000) ※ファン制御80%(約1,200rpm)
グラフィックスドライバGeForce Hotfix Driver version 385.69
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 1703/Build 15063.632)
電源プロファイル高パフォーマンスAMD Ryzen バランス調整
室温約27℃
Kaby Lake-Sの4コア8スレッドCPU「Core i7-7700K」
AMDの8コア16スレッドCPU「Ryzen 7 1700」

ベンチマーク結果

 今回実行したベンチマークテストは、「CINEBENCH R15(グラフ1)」、「x264 FHD Benchmark(グラフ2)」、「HandBrake 1.0.7(グラフ3)」、「TMPGEnc Video Mastering Works 6(グラフ4)」、「PCMark 10(グラフ5)」、「SiSoftware Sandra Platinum(グラフ6~12)」、「3DMark(グラフ13~15)」、「VRMark(グラフ16~17)」「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク(グラフ18)」、「Ashes of the Singularity: Escalation(グラフ19)」、「オーバーウォッチ(グラフ20)」、「The Witcher 3(グラフ21)」、「Ghost Recon Wildlands(グラフ22)」、「Watch Dogs 2(グラフ23)」。

 CGレンダリング性能を測るCINEBENCH R15では、全コア使用時と1コア使用時の両方でCore i7-8700Kが比較製品中最高のスコアを獲得した。ピークで4.7GHzに達する動作クロックの高さを活かし、Single Coreでは次点のCore i7-7700Kに約7%差をつけ、All Coreではコア数で勝るRyzen 7 1700に追いついた格好だ。

 一方、最大クロックが4.0GHz止まりのCore i5-8400は、Single Coreでの性能ではCore i7-7700Kの9割程度のスコアに留まるものの、全コアを使用した際のスコアではCore i7-7700Kを僅かに逆転している。

【グラフ01】CINEBENCH R15

 動画エンコード系のベンチマークテストとアプリケーションでも、Core i7-8700KがRyzen 7 1700を凌ぐ性能を発揮している。特に、エンコーダにx265を用いたH.265形式への動画変換ではRyzen 7 1700より31~49%高速な結果となっている。

 Core i5-8400はCore i7-7700Kを2~6%ほど上回った。マルチスレッド性能が物を言う動画エンコードにおいては、Coffee Lake-Sの中位モデルがKaby Lake-Sの最上位モデルを凌ぐという結果だ。

【グラフ02】x264 FHD Benchmark v1.0.1
【グラフ03】HandBrake 1.0.7
【グラフ04】TMPGEnc Video Mastering Works 6(v6.2.4.31)

 PCの総合的な性能を測定するPCMark 10では、Core i7-8700Kが総合スコアでトップを獲得。以下Core i7-7700K、Core i5-8400、Ryzen 7 1700と続いている。低CPU負荷のワークロードが多いPCMark 10では、Core i5-8400より動作クロックの高いCore i7-7700Kが有利なようだ。

【グラフ05】PCMark 10(v1.0.1275)

 CPUの演算性能を測定するProcessor Arithmeticでも、Core i7-8700Kが比較製品中最高のスコアを記録しているが、整数演算(Dhrystone)でRyzen 7 1700に14%前後上回っているのに対し、浮動小数点演算(Whetstone)では3%前後の差に縮まっている。

 Core i5-8400については、整数演算でCore i7-7700Kに10%前後の差をつけて上回る一方、浮動小数点演算では逆に13~21%の差をつけられている。どうやら浮動小数点演算ではスレッド数の差が効いているようだ。

 マルチメディア処理性能を測るProcessor Multi-Mediaでは、Core i7-8700KがほかのCPUを大きく引き離している。このテストでは浮動小数点演算でもCore i7-7700KがRyzen 7 1700に37~62%の差をつけている。

 暗号処理性能を測るProcessor Cryptographyでは、メインメモリの帯域幅の影響が大きいEncryption/Decryption BandwidthでDDR4-2666をサポートするCoffee Lake-Sの2製品が、DDR4-2400止まりのCore i7-7700Kを9%弱上回っている。Hashing Bandwidthでは、IntelのCPUがコア数と動作クロックに応じて性能を伸ばしている一方で、SHA拡張命令を持つRyzen 7 1700がCore i7-8700Kを約63%上回っている。

【グラフ06】Sandra Platinum(24.43) - Processor Arithmetic
【グラフ07】Sandra Platinum(24.43) - Processor Multi-Media
【グラフ08】Sandra Platinum(24.43) - Processor Cryptography

 メインメモリ帯域を測定するMemory Bandwidthでは、DDR4-2666をサポートするCPUのうちCore i7-8700KとRyzen 7 1700が31GB/sec前後を記録。Core i5-8400は29.0~29.61GB/secとなっており、DDR4-2400を使っているCore i7-7700Kよりは広帯域ながら、ほかのDDR4-2666対応CPUよりは一段遅い結果となっている。

 CPUのキャッシュ速度を測定するCache Bandwidthでは、L1~L2キャッシュ領域はコア数の多いCoffee Lake-Sの2製品がCore i7-7700Kより広帯域だが、L3キャッシュ領域ではCore i5-8400の帯域はCore i7-7700Kと同程度まで落ち込んでいる。

【グラフ09】Sandra Platinum(24.43) - Memory Bandwidth
【グラフ10】Sandra Platinum(24.43) - Cache Bandwidth
【グラフ11】Sandra Platinum(24.43) - Cache & Memory Latency(nsec)
【グラフ12】Sandra Platinum(24.43) - Cache & Memory Latency(Clock)

 3DMarkでは、DirectX 12テストのTime Spyと、DirectX 11テストのFire Strike UltraとFire Strikeを実行した。

 Time SpyではCPUのマルチスレッド性能が総合スコアに強く反映されており、Core i7-8700Kが最高スコアを記録、次点はRyzen 7 1700となった。6コア6スレッドCPUのCore i5-8400は、4コア8スレッドCPUのCore i7-7700Kとほぼ同じと言える結果となっている。

 一方、Fire Strike UltraとFire Strikeでは、CPUの違いがPhysics Scoreに大きく反映されているものの総合スコアへの影響は小さく、GPU性能がボトルネックとなるFire Strike Ultraでは全製品のスコアが横並びとなっている。

 相対的にGPU負荷の軽いFire Strikeでは、Core i7-8700Kが次点のCore i7-7700Kに約9%の差をつけている。GPU負荷が低くフレームレートが高くなる条件では、CPUの1コア当たりの性能が求められるようになる傾向がある。実際、Fire Strikeのスコアは1コア当たりの性能が高い順となっている。

【グラフ13】3DMark - Time Spy v1.0
【グラフ14】3DMark - Fire Strike Ultra v1.1
【グラフ15】3DMark - Fire Strike v1.1

 VRMarkでは高フレームレート動作が前提のOrange Roomと、超高負荷テストのBlue Roomを実行した。

 低負荷のOrange Roomでは1コアあたりの性能に優れたCPUであるほど高いスコアを記録し、GPU性能がボトルネックとなるBlue RoomではCPUの違いによってスコアに差がつかないという、3DMarkのFire StrikeとFire Strike Ultraの結果と同じような結果となった。

【グラフ16】VRMark スコア
【グラフ17】VRMark 平均フレームレート

 3DMarkやVRMarkでみられた、高フレームレートになる条件では1コアあたりの性能に優れたCPUが高い性能を発揮するという傾向は、ファイナルファンタジーXIVベンチマーク、Ashes of the Singularity: Escalation、オーバーウォッチなどでも同様だ。

 一方で、Intel製CPU同士の比較であれば、マルチスレッド性能でフレームレートの優劣が決まってくるWatch Dogs 2や、120fps近い高フレームレートでありながら各CPU間で有意な差のつかないGhost Recon Wildlandsなど、ゲームタイトルや描画設定などによってCPUに求められる要素は違っている。

 いずれにせよ、Core i7-8700Kはほとんどのゲームで比較製品の中で最上級の性能を発揮しており、ゲーム用途にも適した6コアCPUであると言える。一方のCore i5-8400はCore i7-7700Kに及ばない結果が目立つが、ワーストケースでもCore i7-7700Kの9割程度の性能を発揮しており、決して悪い結果というわけではない。

【グラフ18】ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
【グラフ19】Ashes of the Singularity: Escalation(v2.51.28527)
【グラフ20】オーバーウォッチ(v1.15.0.2)
【グラフ21】The Witcher 3(v1.31)
【グラフ22】Ghost Recon Wildlands(v2415526)
【グラフ23】Watch Dogs 2(v1.017.189.2.1088394)

 ワットチェッカーを用いてシステムの消費電力を測定した結果が以下のグラフだ。

 アイドル時の消費電力については、Coffee Lake-SベースのCPUはいずれも36Wで、Core i7-7700Kの38WやRyzen 7 1700の46Wよりも低い数値となっている。ただ、この数字にはマザーボードの違いによる消費電力差も含まれている。

 全てのCPUコアに高負荷が掛かるCINEBENCH R15のAll CoreやTMPGEnc Video Mastering Works 6では、139~159Wを記録したCore i7-8700Kが突出して高い消費電力となっている。TDP 65WのCore i5-8400は比較製品中最も低い消費電力となっているが、TDP 91WのCore i7-7700Kとの差は1~6Wと小さい。

 CPU負荷が極めて大きいPrime 95 Small FFTsを実行すると、Core i7-8700Kの消費電力は199Wに達し、Core i5-8400も141Wを消費してCore i7-7700Kの消費電力を上回った。

【グラフ24】システムの消費電力

 各ベンチマークテスト実行時のCPUコア温度を測定した結果が以下のグラフだ。なお、CPU温度については各CPUに搭載されたセンサーの測定値であるため、同じ条件で測定された結果とは言えない点に注意して欲しい。なお、今回テストしたIntel製CPUの最大コア温度は100℃で、Ryzen 7 1700は95℃である。

 消費電力の測定結果ではTDP値から想像される数字より大きな消費電力となっていたCoffee Lake-Sだが、Core i7-8700KがCore i7-7700Kと近い温度を記録し、Core i5-8400がTDP 90W台の2製品より明らかに低い温度となっている。CPUクーラーの冷却性能を統一している今回の検証では、まさにTDPのスペック通りの結果と言える。

 かつてはTDPからCPUの消費電力を推測できたこともあったが、現在のCPUにおいてTDPはあくまで熱設計電力であり、そこから消費電力を推測することはできないということがはっきり示された格好だ。

【グラフ25】CPU温度(HWMonitor 1.32 - CPU Package)

内蔵GPUの性能をチェック

 続いて、Coffee Lake-Sが備える内蔵GPUの性能をチェックする。テスト機材などは以下の表の通り。

【表3】内蔵GPUテスト・機材一覧
CPUCore i7-8700KCore i5-8400Core i7-7700K
マザーボードASUS PRIME Z370-A (UEFI: 0408)ASUS PRIME Z270-A (UEFI: 1009)
メモリDDR4-2666 16GB×2 (2ch、19-19-19-43、1.20V)DDR4-2400 16GB×2 (2ch、17-17-17-39、1.20V)
内蔵GPUIntel UHD Graphics 630Intel HD Graphics 630
システム用ストレージPlextor PX-128M8PeG (128GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用ストレージOCZ VTR180-25SAT3-480G (480GB SSD/SATA 6Gbps)
電源玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium)
CPUクーラーサイズ 風魔 (SCFM-1000) ※ファン制御80%(約1,200rpm)
グラフィックスドライバ22.20.16.475822.20.16.4771
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 1703/Build 15063.632)
電源プロファイル高パフォーマンス
室温約27℃

 Coffee Lake-Sが備えるGPUの基本的な設計はKaby Lake-Sを踏襲しており、Core i7-8700KとCore i5-8400が備える「Intel UHD Graphics 630」の規模は、Core i7-7700Kが備える「Intel HD Graphics 630」とほぼ同程度となっている。ただし、Core i5-8400のGPUは実行ユニットの数が23基に減らされている。

【表4】CPUの内蔵GPU仕様
モデルナンバーCore i7-8700KCore i5-8400Core i7-7700K
製造プロセス14++14+
マイクロアーキテクチャCoffee Lake-SKaby Lake-S
内蔵GPUIntel UHD Graphics 630Intel HD Graphics 630
GPU実行ユニット24 基23 基24 基
GPUクロック (最大)1.20 GHz1.05 GHz1.15 GHz
対応メモリDDR4-2666 (2ch)DDR4-2400/DDR3L-1600 (2ch)

 各CPUの内蔵GPUで3DMarkを実行した結果、最もGPUクロックが高く、VRAMとして利用されるメインメモリの動作クロックも高いCore i7-8700Kが最高スコアを記録している。次点はCore i7-7700Kで、Core i7-8700Kとのスコア差は約4~12%。

 最もスコアが低いのはCore i5-8400で、Core i7-8700との差は9~24%、Core i7-7700Kとの差は5~11%となっている。

【グラフ26】3DMark - Time Spy v1.0
【グラフ27】3DMark - Fire Strike v1.1
【グラフ28】3DMark - Sky Diver v1.0
【グラフ29】3DMark - Cloud Gate v1.1
【グラフ30】3DMark - Ice Storm Extreme v1.2

 ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでも、Core i7-8700Kが最高スコアを記録。Core i7-7700Kに約6%、Core i5-8400には約11~16%の差をつけた。

【グラフ31】ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク

 以下のグラフは、TMPGEnc Video Mastering Works 6で、内蔵GPUが備えるQuick Sync Video(Intel Media SDK Hardware)を利用し、動画のエンコードを実行した際の処理時間を比較したもの。

 Core i7-8700KとCore i5-8400の比較では、H.264形式とH.265形式でそれぞれ1秒ずつCore i7-8700Kの方が早く処理を終えているが、これはほぼ差のない結果とみても良いだろう。

 一方、Core i7-7700KはH.264形式への変換ではCore i7-8700Kと同じ処理時間だったが、H.265形式への変換ではCore i7-8700Kより5秒早く処理を終えている。Core i7-7700Kの方が約1割高速という結果だが、GPUのスペックから考えると不可解な結果だ。今後ドライバやソフトウェア側のアップデートによって、Coffee Lake-Sの性能が改善される可能性はありそうだ。

【グラフ32】TMPGEnc Video Mastering Works 6(v6.2.4.31)

 内蔵GPUで各ベンチマークテストを実行した際の消費電力を測定した結果が以下のグラフだ。

 ピーク消費電力に関してはCore i7-8700Kが最も高い。これはGPUの消費電力の差だけでなく、CPU側の消費電力の差も少なからず影響した結果である。

【グラフ33】システムの消費電力

マルチスレッド性能とコストパフォーマンスが飛躍するCoffee Lake-S

 Coffee Lake-Sの登場により、Intelのメインストリームプラットフォーム最上位CPUは4コア8スレッドから6コア12スレッドに引き上げられ、マルチスレッド性能は最大で1.5倍近く向上することになる。これにより、第8世代Coreプロセッサは、同価格帯のAMD Ryzenと同程度のマルチスレッド性能を得ることになる。

 最上位のCore i7-8700Kは、Ryzen 7 1700と同程度のマルチスレッド性能を持ちながら、Core i7-7700K以上のシングルスレッド性能を持つCPUだ。動画やCGの制作からPCゲーミングなど、用途を問わず性能を求めるユーザーにとって魅力ある選択肢となるだろう。

 また、182ドルのCPUでありながら、Core i7-7700Kに迫る性能を持つCore i5-8400のコストパフォーマンスも強烈だ。最上位モデルの大幅な性能向上に伴い、下位モデルの性能も大きく強化されたCoffee Lake-Sでは、ラインナップ全体のコストパフォーマンスが飛躍している。

 既存のLGA1151対応マザーボードが使えないという欠点はあるが、Coffee Lake-Sにはマザーボードを新調するに値する価値がある。国内でも早期の発売を期待したい。