レビュー
写真で見る最新マザー、「ASRock Z370 Extreme4」
~高消費電力CPUを支える12フェーズPWM電源回路搭載
2017年10月5日 22:01
ASRockは、第8世代Coreプロセッサ(Coffee Lake-S)の登場にあわせて、新マザーボード「Z370 Extreme4」を投入する。価格/発売時期ともに未定だ。今回、製品発売に先立ってマザーボードを入手できたので、写真を中心としたレビューをお届けする。
第8世代Coreプロセッサは、従来の第7世代Coreプロセッサ(Kaby Lake)や第6世代Coreプロセッサ(Skylake)と同じLGA1151ソケットを採用する。形状こそ同じだが、電気的特性が異なっているため、相互互換性はないとされている。
「同じソケットだけど、古いマザボに新しいCPUを刺しても動かない」という状況は、かつてのLGA775に似ているのだが、LGA775の新しいマザーボードは基本的に下位互換性を有しており、たとえばCore 2 Duo対応世代のIntel P965チップセットを搭載したマザーボードで、古いPentium 4を動作させることも可能だった。しかし第8世代Core対応マザーボードで、第6/7世代Coreプロセッサを動作させることはできないとされており、事実上完全に別のプラットフォームだ。
とは言え、メモリは同じDDR4で共通だし、AGPからPCI Express、IDEからSATAに変わったときのように、周辺機器を含めた大きなプラットフォーム刷新というわけではない。Haswell/Broadwell世代からのジャンプでなければ、ユーザーの出費は実質CPUとマザーボード代のみ。旧CPUとマザーボードを売り払ってしまえば、比較的少ない出費で4コア/8スレッドから6コア/12スレッドにアップグレードできそうだ。
前置きはこれぐらいにして、Z370 Extreme4を見ていこう。ASRockのマザーボードは製品名末尾でグレードを示しているが、「Extreme4」は歴代からコストパフォーマンスに重視したメインストリーム向けのグレードであり、同社の主力モデルとなっている。
このクラスはおおむねマザーボードとしての基本機能+いくつかの付加価値ということなのだが、Extreme4は高耐久部品を採用した12フェーズのCPU電源、スチールプレートで強化されたPCI Expressスロット、カスタマイズ可能なRGB LEDイルミネーション、そして基板レベルで左と右チャンネルを分離させて120dBのS/N比を実現したサウンド回路「Purity Sound 4」、そしてSLI HBブリッジの付属あたりが付加価値といったところだ。
12フェーズのCPU電源回路は、60Aの電流に対応したチョーク、2つのMOSFETを1つにして低RDS(on)を実現した「Dual-Stack MOSFET」、そしてニチコン製の12Kブラックコンデンサの採用が謳われている。また、同社のオーバークロック向け製品である「OC Formula」シリーズから受け継いだ、容量大小(820μFと100μF)のコンデンサを組み合わせることで応答性を改善しノイズを低減する「Combo Caps」も採用されており、ある程度のオーバークロック用途にも使用できる。
ちなみに製品情報やパッケージでは「12フェーズ」と表記されているが、使われているフェーズコントローラのIntersil製「ISL69138」は7フェーズのコントローラで、本製品はフェーズダブラーによって14フェーズに拡張している。12フェーズなのは、おそらくCPUコア用が12フェーズであり、残った2フェーズがアンコアやGPUといったほかの部分に使われているからなのかもしれない(ISL69138自体はそのような構成をサポートする)。
スチールプレートによって剛性を高めたPCI Express x16スロットは2基。これは重いビデオカードを装着したときにスロットが破損することを防ぐものなのだ。PCI Express x16スロットの一番上と2番目は2スロット分開いているため、2スロット使用するビデオカードでも窮屈になることなく、スムーズな吸排気が行なえる。
本機にはUSB 3.1が2ポート備え付けられており、うち1基はType-Cだ。2017年10月現在、USB 3.1(Gen2)に対応したデバイスはさほど多くないため、活用できるのはまだまだ先といったところだが、本機にはASMediaの新世代チップ「ASM3142」が採用されている。
じつは、これまで採用例が多かった旧世代の「ASM1142」は、ホストとの接続がPCI Express(PCIe) 3.0 x1または2.0 x2であった。PCIe 3.0 x1または2.0 x2の片方向の帯域は1GB/s、つまり8Gbpsであり、USB 3.1の10Gbps――128b/132bエンコードで1.21GB/sの帯域――に届かなかったのだ。ASM3142ではホストとの接続にPCIe 3.0 x2を採用することで、10Gbpsをフルで、2台のデバイスを接続しても、合計2GB/sの転送ができるようになり、ボトルネックが解消されたわけだ。
ちなみに本機には前面パネルのUSB Type-C用の、USB 3.1(Gen2)で定められたピンヘッダもあるのだが、これはASM3142接続ではなく、チップセットへの接続だ。実際にはUSB 3.0(つまりUSB 3.1 Gen1)の信号が流れており、5Gbpsの転送速度となっている。これとは別に、USB 3.0のピンヘッダもあり、ケース側の新旧どちらのコネクタにも対応できる。
M.2コネクタが3基用意されている点も特筆すべきだろう。うち2基はCPUに直結とされており、NVM Express対応のSSDの速度を最大限に活かせる(ただし、ビデオカードの性能はスポイルされる)。もう片方は背面パネルに近いところに位置し、Key EタイプのWi-Fiモジュールを搭載できる。もちろん、背面パネルにはアンテナのホールも用意されている。
Z370 Extreme4は、ちょっとしたオーバークロック遊びにも耐えうるし、過不足のない機能構成となっており、第8世代Coreプロセッサが持つ6コア/12スレッドの性能や、KプロセッサとZシリーズのチップセットの魅力を十分に引き出せる。新規にハイエンドゲームマシンを組むのはもちろんのこと、旧世代CPUからのアップグレードといった幅広い範囲に対応できる製品と言えるだろう。
ちなみにASRockは本製品のほかに、「Z370 Professional Gaming I7」、「Z370 Taichi」、「Z370 Gaming K6」、「Z370 Pro4」、「Z370M Pro4」、「Z370 GamingITX/ac」、「Z370M-ITX/ac」の製品投入を予定しており、幅広いラインナップでユーザーのニーズに応える。