特別企画

4人の識者が語る、いますぐにでもWindows 10に乗り換えるべき理由

~Windows 7サポート終了まであと2年半

山田氏の所見~少しでも早い移行が最善のタイミング

 企業ユーザーは保守的だ。保守的にならざるを得ない理由もある。なにしろ、大事な業務が止まってしまっては話にならない。止まるのではなく管理下にある多くのエンドユーザーの業務を止めてしまうのだ。それは組織そのものの死活問題にもつながる。だから、各種業務のためのアプリがきちんと動くことが最優先される。しかも、まともに動いて使えているのであれば、できるだけ何も変更したくない。変更して、万が一不具合が発生したら元も子もないからだ。

 そういうわけで、この15年をかけて、Windows 2000をWindows XPに置き換え、VistaをスキップしてWindows 7、次はWindows 8/8.1をパスして、今のところWindows 10は様子見。典型的な企業ユーザーは、そういった感じで今なおWindows 7を使い続けている。

 その頼もしい、できることならずっと使い続けたいWindows 7がEOSを迎える。いつかその日が来るとわかってはいても、2年あまりしかないという事実をつきつけられると動揺する。

 Windows 7がRTMしたのが2009年の夏で、最新版は2011年頭にリリースされたService Pack 1だ。メインストリームサポートはすでに2015年に終了し、延長サポートのフェイズにある。それも、2020年1月に終了する。いわゆるEOSだ。

 2020年と言えば東京オリンピックが開催される年でもある。まだ2年以上先の話ではあるが、そうのんびりともしていられない。その着地点は、今のところWindows 10しか考えられない。Windows 10は、2015年のリリースからすでに2年が経過している。本当だったらメインストリームサポートはWindows 7の延長サポート終了と同じ2020年に終了する。延長サポートも2025年に終了する。

 結局のところ、OSのサポート終了にはあらがえないというのが現実だ。

 だが、Windows 10は、極端に言えば、毎年サポート期間を更新している。そんな馬鹿な話があるかと思われそうだが本当だ。新しく更新されることで、サポート期間が1年ずつ延長されているのだ。RTMが2015年7月で、その秋にNovember Updateとしてバージョン1511が、2016年8月にはWindows 10 Anniversary Updateとしてバージョン1607が、さらに今年2017年4月にはCreators Updateがバージョン1703としてリリースされている。その結果、現時点で最新のWindows 10の延長サポート終了は2026年となっている。この2016年秋には、Fall Creators Updateがリリースされるし、来年には、その次の大規模更新があるはずだ。順当に行けば、その時点でまた1年サポート期間が延長されることになるだろう。

 Microsoftは、Windows 10を最後のバージョンとし、今後はメジャーバージョンアップを行なわないと表明している。つまり、Windows 11は出ない。だが、Windows 10に対する大型更新は、ほぼ半年ごとに実施される。それでもWindows 10はWindows 10のままであり、サポート期間も延長される。つまり、Windowsのメジャーバージョンアップに悩まされることがなくなるというわけだ。

 いまWindows 7を使っているとすれば、そのあとに使うOSはWindows 10しかない。そしてそのWindows 10は、落ち着いて枯れるのを待とうにも半年ごとに更新される。もっともブランチと呼ばれるバージョンシステムによって、企業用途を想定したCBB(Current Branch for Business)では間隔が長く設定されるが、それとて1年ごとの更新だ。しかも、その直前のCBBのサポート期間は新しいCBBが出てからほぼ1年後に切れる。

 こうしたことを考えると、移行できるもっともよいタイミングというのは想定するのが難しい。2年後のWindows 7サポート終了までに少しでも早くWindows 10に移行し、その後は、1年おきにCBBを更新するという方法をとるのが最良だ。

 つまり、OSのバージョンアップ対応に関する考え方を根本的に変えないかぎり、Windows 10への対応は無理だ。ひどい話のように思うかもしれないが、管理する側にとっては、本当はそのほうが合理的なのだ。

 Windows 7のサポート切れが迫る一方で、Windows 10は容赦なくどんどん先に進む。どこかでキャッチアップしなければあとがない。もはや待ったなしの状態が今というタイミングだ。

 ただ、Windows 10は、あながち悪いOSではない。四半世紀以上、Windowsを使い続けている立場から見てもバランスのとれたOSだと感じている。

 さらに、新しいOSはセキュリティ面でも安心だ。Windows Helloによって、指紋や虹彩など複数の生体認証をサポートし、エンドユーザーにはやさしく、管理者にとっては安心できる利用環境を提供する。その環境で動くアプリケーションについても同様だ。

 さらにWindows 10 Sというソリューションもある。「なんでも自由でやり放題」というのがこれまでのWindowsのスタンスで、それに管理者は振り回されてきたわけだが、Windows 8移行、Universal Windows Platformへの方向転換が併行して行なわれ、Microsoftはいわゆるストア経由のモダンアプリケーションを主流にしようとしている。最終的に、ストア経由でしかアプリケーションをインストールできなくすることで、完全にエンドユーザーPCの状態を掌握できるようにしようという方向性だ。

 Windows 10 Sは、それを先取りし、かぎりなく制限された状態でのWindows環境を提供する。ストアアプリ以外はインストールできないなど、エンドユーザーの自由度は極端に低い。それが何を意味するかというと、壊れることのない堅牢なWindows環境が手に入るのだ。環境を壊す要素を徹底的に排除しているのだから当たり前だ。当然、エンドユーザーからのヘルプ要請も減るだろう。エンドユーザークライアントPCをこれまでは難しかった完全な管理下におくことができる。

 加えて、こうしたWindowsの新しい方法論に対応していくためには、これまでのPCの使い方、使わせ方を変える必要も出てきそうだ。つまり、Windowsやブラウザのバージョンに依存しないようにアプリケーションを用意することや、クラウド利用、オンプレミスを問わず、クライアントPCの状態に極力依存しないようにするにはどうすればよいかを考える必要がある。

 PCの持ち出しを禁止するのではなく、盗まれたり壊れたりしても困らないようにしておくような運用だ。つまり、アプリの不具合をOSやブラウザのバージョンやハードウェアのせいにしないようにするのはどうすればいいかが重要になる。

 たいへんなことかもしれないが、それをどう実現していくかをいま考えることで、この先の企業内におけるPCの使われ方は大きく変わるし、変えなければデジタルトランスフォーメーションなど少しも進まない。折しも政府は働き方の改革を叫び、こうした動きに対応できなければ、日本の企業は生き残れないとまで言われている。そんななかでのWindows 10への移行は、ある意味で試金石とも言えるのではないだろうか。

セブン物産の決断ー第 1 話
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