特集
最大4GHz動作の「Core i7-3970X Extreme Edition」ベンチマークレビュー
(2012/12/11 00:00)
約1カ月前の11月12日、Intelのコンシューマ向けCPU最上位モデル「Intel Core i7-3970X Extreme Edition」が発売された。今回、従来のフラッグシップモデルである「Intel Core i7-3960X Extreme Edition」とのパフォーマンス差をベンチマークテストで確認してみた。
最大4.0GHzに達する動作クロックと、150Wに増加したTDP
Intel Core i7-3970X Extreme Edition(以下i7-3970X)は、LGA2011ソケットを採用するSandy Bridge-EアーキテクチャのCPUだ。「Intel Hyper-Threading Technology」に対応した6つのCPUコアを備える6コア12スレッドのCPUで、15MBのL3キャッシュを備える。CPUの動作クロックは3.5GHzだが、自動オーバークロック機能である「Intel Turbo Boost Technology」により、動作クロックは最大で4.0GHzに達する。
i7-3970Xは、従来のコンシューマ向けCPUのフラッグシップモデルであったIntel Core i7-3960X Extreme Edition(以下i7-3960X)を置き換えるモデルであり、基本的なスペックはi7-3960Xを踏襲している。両CPUの主な違いは動作クロックとTDPで、i7-3970Xでは動作クロックが引き上げられるとともに、TDPがi7-3960Xの130Wから150Wへと増加している。
CPU | i7-3970X | i7-3960X | i7-3930K |
---|---|---|---|
CPUコア数 | 6 | 6 | 6 |
スレッド数 | 12 | 12 | 12 |
CPU動作クロック | 3.5GHz | 3.3GHz | 3.2GHz |
Turbo Boost時最高クロック | 4.0GHz | 3.9GHz | 3.8GHz |
L3キャッシュ | 15MB | 15MB | 12MB |
メモリクロック | DDR3-1600 | DDR3-1600 | DDR3-1600 |
倍率ロックフリー | ○ | ○ | ○ |
製造プロセス | 32nm | 32nm | 32nm |
TDP | 150W | 130W | 130W |
テスト環境
今回のテストでは、Intelからi7-3970Xとセットで借用したIntel X79 Express チップセット搭載マザーボード「DX79SR」を用いてベンチマークテストを行なった。そのほか、テストに使用した機材は以下の表の通り。
i7-3970X | i7-3960X | |
---|---|---|
マザーボード | Intel DX79SR(BIOS:0553) | |
メモリ | DDR3-1600 4GB×4(9-9-9-24、1.5V) | |
ビデオカード | Radeon HD 7970 | |
ストレージ | Western Digital WD5000AAKX | |
電源 | Silver Stone SST-ST75F-P | |
ディスプレイ解像度 | 1,920×1,080ドット | |
グラフィックスドライバ | Catalyst 12.11 beta | |
OS | Windows 8 Pro 64bit |
CPU処理中心のベンチマークテスト
まずはCPUベンチマークのテスト結果から見ていく。実施したテストは、「Sandra 2013a 19.11」(グラフ1、2、12、13、14、15)、「PCMark05 Build 1.2.0」(グラフ3、4)、「CINEBENCH R10」(グラフ5)、「CINEBENCH R11.5」(グラフ6)、「x264 FHD Benchmark 1.01」(グラフ7)、「Super PI」(グラフ8)、「PiFast 4.3」(グラフ9)、「wPrime 2.09」(グラフ10)、「PCMark 7」(グラフ11)だ。
定格動作クロックでは200MHzの差があるi7-3970Xとi7-3960Xだが、ベンチマークスコアの差は大きなものでも5%程度に留まっている。Turbo Boostによる自動オーバークロック動作の条件の1つであるTDPが150Wに緩和されたことで、特にフルスレッド動作時のスコアアップに期待したくなるところなのだが、ベンチマーク中のCPUクロックをモニタリングしたところ、フルスレッド動作時に3.7GHzで動作したi7-3970Xに対し、i7-3960Xの動作クロックも3.6GHzまで引き上げられていた。
Turbo Boost動作についてはマザーボードによって動作が多少異なるため、今回の結果が全ての環境で同様の結果になるとは限らないのだが、各ベンチマークスコアがほぼ動作クロック差に準じた結果となっているところを見ると、このTDP枠拡大がTurbo Boostの効き具合に大きな影響は与えていないように見える。
GPU処理中心のベンチマークテスト
続いて、3Dゲーム系のベンチマークテストの結果を確認する。実施したテストは、「3DMark 11 Build 1.0.3」(グラフ16~19)、「3DMark Vantage Build 1.1.0」(グラフ20、21、22)、「3DMark06 Build 1.2.0」(グラフ23、24)、「MHFベンチマーク [大討伐]」(グラフ25)、「ファンタシースターオンライン2 ベンチマーク」(グラフ26)だ。
CPU系ベンチマーク同様、3Dゲーム系のベンチマークテストでもi7-3970Xとi7-3960Xのスコア差は最大6%程度という小差に留まる。Turbo Boostの効きに明確な差が無かった以上、ステッピングまで同じCPUコアをベースにしている両製品のスコアとしては、順当な結果と言えるだろう。
消費電力の比較テスト
最後に、サンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を利用してシステム全体の消費電力を測定した結果を紹介する。
アイドル時にはi7-3970Xがi7-3960Xより2W高い66Wを記録しているが、これはほぼ変わらない数値と言って良いだろう。一方、負荷時の消費電力については、CINEBENCH R11.5のシングルスレッド動作時で5W、フルスレッド動作時に7W、i7-3970Xが高い消費電力を記録している。
CPUに極端な負荷を掛けるOCCT 4.3.2のLinpackテスト時であっても、両CPU間の消費電力差は10Wに留まっており、TDP 150Wという数値からイメージされるほどの消費電力増加は見られない。
TDP枠の増大に伴う消費電力やTurbo Boost動作への影響は軽微
以上の結果から、TDP 150Wという数字を引っ提げて登場したi7-3970Xは、i7-3960Xを置き換える製品としては至って普通のクロックアップモデルに過ぎないということが見えてくる。TDP枠の増大に伴う消費電力やTurbo Boost動作への影響は小さく、i7-3970Xの「TDP 150W」という数字に関しては、期待も不安も抱く必要はなさそうだ。
現在、i7-3970Xの実売価格は8万円台中盤程度で、i7-3970X登場以前のi7-3960Xとほぼ同程度の価格となっている。すでにi7-3960Xを持っているユーザーにとって、i7-3970Xは乗り換える魅力のあるCPUとは言えないが、これから導入するのであれば、コンシューマ向けCPU最上位というポジションにあるi7-3970Xと、同じ基本スペックながら5,000円ほど安いi7-3960Xのどちらを選ぶのか、判断が分かれそうだ。