【写真で見る】レノボ・ジャパン「ThinkCentre M92p」
~厚さ34.5mmの第3世代Coreプロセッサ搭載超小型デスクトップ

「ThinkCentre M92p」

4月9日 発表



 レノボ・ジャパン株式会社は9日、同社製で史上最小を実現したビジネス向けデスクトップPC「ThinkCentre M92p」を発表した。今回、いち早く試用機に触れる機会を得たので、本体の仕様面を中心に紹介していこう。ただし、今回の試用機は試作機で、スペック面も未定の部分が多くあるため、ベンチマークテストなどの性能面の評価は、今後製品版を入手した段階で行なうこととし、今回は写真を中心に紹介していく。

●1辺の長さがゴルフボール約4個分の超小型ボディ

 ThinkCentre M92p(以下、M92p)の最大の特徴は、レノボ史上最小となる超小型ボディだ。本体サイズは、179×182×34.5mm(幅×奥行き×高さ)と、片手で楽々持てるほどのコンパクトさ。体積は約1Lで、外付けHDDケースと同等の大きさしかない。実際に3.5インチHDDと並べてみたが、体積は3.5インチHDDの2倍少々といった程度。縦置きにした場合の高さはHDDケースより低く、BDケースとほぼ同等。また、厚さはDVDケースを2枚重ねた程度しかない。家庭用ゲーム機のWiiと比べると、高さはWiiの方が低いが、奥行きはM92pのほうが短く、幅も薄い。これだけコンパクトなボディなら、設置場所に困ることはまずないはずだ。

 これだけコンパクトなため、光学式ドライブは搭載しない。ただし、本体を液晶ディスプレイ背面などに固定するために利用する専用ブラケットと一体となった外付けDVDスーパーマルチドライブユニットが用意される。このDVDスーパーマルチドライブユニットは本体とUSBケーブルで接続する。このユニットを取り付けた場合でも、高さは59.5mmで、まだ十分にコンパクトだ。

 このブラケットには、100×100mmおよび75×75mmのVESAマウント規格に準拠した穴が用意されており、液晶背面のVESAマウント用ネジ穴に固定するのはもちろん、VESAマウントアームに固定して利用することも可能。例えば、2パネル用のVESAマウントアームの一方に液晶パネル、一方にM92pを固定すれば、デスク上のPCの占有スペースを皆無にできる。また、レノボ製液晶ディスプレイと組み合わせ、液晶背面側に設置するための専用アームも用意される。レノボはこれ以外にも、デスクの下に固定するなど、さまざまな場所への設置を提案している。

M92p本体。体積は約1Lと非常にコンパクトで、置き場所に困ることはないだろうM92p本体正面。幅は179mm、高さは34.5mmしかなく、圧倒的な小ささとなっている側面。奥行きは182mmと、こちらも非常に短い
背面。各種ポート類が並んでいる。電源にはACアダプタを利用する奥行きはゴルフボール4個分しかない光学式ドライブは外付けとなり、専用ブラケットを利用して本体に取り付ける
専用ブラケットで光学式ドライブを取り付けた状態。これでも高さは59.5mmにしかならない専用ブラケットを取り付けた状態では、幅が183mm、奥行きが183mmとわずかに大きくなる光学式ドライブはUSB接続で利用する
3.5インチHDDとの比較。体積は3.5インチHDDの約2倍少々しかない厚さは3.5インチHDDより若干厚い程度だDVDケースとの比較、縦置き時はDVDケースより低い
こちらはBDケースとの比較。縦置き時の高さはBDケースより若干高い厚さはDVDケースを2枚重ねた状態とほぼ同等Wiiとの比較。縦置き時の高さはM92pの方が若干高いが、奥行きは短い
厚さはWiiよりも薄い専用ブラケットには100×100mmおよび75×75mmのVESAマウント規格に準拠した穴を用意オプションのディスプレイブラケットに取り付けると、液晶ディスプレイ背面に配置できる
VESAマウントアームに液晶とM92p本体を取り付けて利用可能最近増えているマウンタ付きデスクにもこのように取り付けて利用可能だデジタルサイネージ用途にも柔軟に対応する
デスク下に固定するためのマウンタもオプションで用意される

●優れた冷却機構

 このような小型ボディのデスクトップPCは、これまでにもさまざまなメーカーから登場している。しかしその多くは、搭載CPUに低消費電力で発熱の少ないAtomシリーズを採用するものだ。筆者が個人的に利用しているShuttle製ベアボーン「XS35 V2」もM92p同様のコンパクトボディを実現したデスクトップPCだが、CPUはAtom D525を採用している。Atomプロセッサは、低消費電力であるものの処理能力も低く、Office系アプリケーションを利用するだけでも動作の重さが感じられる。

 それに対しM92pは、第3世代Coreプロセッサが搭載される。第3世代Coreプロセッサは未発表のため、実際に搭載されるCPUの型番などは現時点では不明。さすがに低TDPモデルが搭載されることになるようだが、それでもAtomシリーズより処理能力が優れることは間違いない。

 ただ、そこで心配になるのが発熱だ。低TDPモデルが搭載されるとはいえ、Atomシリーズより発熱が増えることは間違いなく、しっかりとした放熱機構の搭載が不可欠となる。この点について、M92pではCPUに比較的大型のヒートシンクを取り付けるとともに、その背後に排気ファンを取り付け、本体前面のスリットから外気を取り込み、CPUのヒートシンクを通って直接ケース外に排気するという直線的な空気の流れを実現し、CPUを強力に冷却。加えて、「Intelligent Cooling Engine 2」と呼ばれる独自機能を採用することで、効率の良い冷却性能と静音性を両立するという。

 実際、低負荷時にはファンの音は全くといっていいほど気にならず、動画エンコードや3D描画のゲームなどの高負荷時でも、若干耳に届くといった程度で、うるさいと感じることはなかった。そして、高負荷でしばらく稼働させた状態でも、本体がやや温かくなる程度で、動作が不安定になることはなく、冷却性能は問題ないと考えてよさそうだ。

本体内部。写真下部左がCPUヒートシンク、下部右が排気ファンで、ヒートシンクは本体前方から後方に空気が流れるようにカバーで覆われている本体前面のスリットから空気を取り込み、直接背面排気口から排気することで、効率的なCPUの冷却が可能本体内部は2.5インチHDDなどパーツがぎっしり詰まっている印象だが、高負荷時でも熱で動作が不安定になることはなかった

●搭載CPUとチップセットは現時点では未発表

 M92pの基本スペックだが、CPUとして第3世代Coreプロセッサが搭載されることは発表されているものの、具体的な型番などは未発表。また、採用チップセットも未発表となっており、詳しい仕様は非公開で、発売直前となる6月上旬に発表するとしている。

 ただ、CPUとチップセット以外の仕様はある程度判明している。今回利用した試用機では、メインメモリは2GB搭載されていたが、メモリの種類は1,600MHz動作のPC3-12800 DDR3 SDRAMで、最大8GBまで搭載可能。ストレージデバイスは2.5インチサイズの320GB HDDが搭載されていたが、容量はカスタマイズ可能になる。ネットワーク機能は、Gigabit Ethernetに加えて、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANが搭載されており、背面にアンテナが取り付け可能となっている。

 外部接続ポートは、背面にDisplayPort×1、ミニD-Sub15ピン×1、Gigabit Ethernet、USB 3.0×2、USB 2.0×1が、前面にUSB 3.0×2、マイク入力、ヘッドフォン出力の各端子を用意。オプションのDVDスーパーマルチドライブユニットはUSB 2.0接続で利用するが、ユニットにはUSBハブ機能が搭載され、背面にUSB 2.0ポートが2ポート用意されているため、USB 2.0ポートが減ることはない。

 ところで、背面には接続ポートを塞いでいる部分がある。このオプショナルポートには、シリアルポート、USB 2.0、DisplayPort、無線LANアンテナを選択できる。また、DisplayPortを選択した場合には、既存のDisplayPortと合わせて4画面分の画像を1画面として表示する「モザイク・モード」と呼ばれる出力モードをサポートする。このモードは、高解像度画面を利用する金融関係での利用に加えて、大型ディスプレイに広告を表示するデジタルサイネージ用途などにも柔軟に対応するとしている。M92pは、ビジネス用途や組み込み用途をメインターゲットとしているため、こういった外部接続ポートの自由度の高さを確保しているわけだ。

 さらに、今回の試用機には外付けDVDスーパーマルチドライブユニットが取り付けられていたが、他にもセカンドHDDユニットやバッテリユニットなども用意される。バッテリユニットに関しては、ノートPCのように持ち運んで利用するためではなく、停電時に安全にデータを保存しPCをシャットダウンするために用意される。

背面の接続ポート。本体側には、電源コネクタ、DisplayPort×1、USB 3.0×2、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet、USB 2.0×1を用意。また光学式ドライブにはUSB 2.0×2のHUb機能を内蔵前面にはUSB 2.0×2とマイク入力、ヘッドフォン出力の各ポートを用意。右のスリットは吸気口だ付属のACアダプタ。出力は65Wだ
ミニD-Sub15ピン上部はオプショナルポート。オプショナルポートはシリアルポート、USB 2.0、DisplayPort、無線LANアンテナを選択できるオプショナルポートにDisplayPortを拡張すれば、本体側のDisplayPortとアナログRGB出力と合わせ3画面出力が可能となるオプションとしてDisplayPortをDisplayPort×2ポートに変換するケーブルも用意
DisplayPortを拡張し、DisplayPort変換ケーブルを利用することで、4画面分の映像を出力できる「モザイク・モード」が利用可能となる外付けHDDは、320/500/750GBの3種類を用意バッテリユニットを利用すれば、停電時でも安全にシャットダウンが可能に

●非売品の専用キャリーケースも公開

 ところで、今回の試用機は、ちょっと面白いケースに入れられて届いた。そのケースとは、キャリーバッグをベースに、本体などを収納できるようにしたものだ。ケースには車輪が2個取り付けられ、収納可能なハンドルによって楽々移動が可能。内部には、マシン本体がピッタリ収納できる穴の開けられた発泡スチロールが入れられ、本体をしっかり保護しながらの移動ができるよう工夫されている。

 さらに、前方の収納スペースには、USB接続で利用するポータブル液晶ディスプレイ「ThinkVision LT1421」と、USB接続のキーボード「ThinkPad USB トラックポイントキーボード」を収納するスペースも確保。このセットがあれば、電源さえ確保できる場所ならどこでもM92pを利用できるわけだ。もちろん、実際に持ち歩いて利用することを想定しているわけではないと思うが、これまでのデスクトップPCの利用形態にとらわれず、新たな活用方法を提案するという意味で、非常に面白い取り組みのように感じる。

 ただし、この専用キャリーケースは販売の予定はないそうだ。ThinkCentreロゴやCoreプロセッサロゴなどが刺繍されているが、飽きの来ないシックなデザインは、出張時などPCを入れて持ち歩く以外の用途にも十分に活用できそう。レノボファンにとってロゴの刺繍は逆に嬉しいはずで、できればグッズとして単体販売してもらいたいところだ。

今回の試用機が収められていた、非売品のキャリーケース。残念ながら販売の予定はないそうだThinkCentreロゴやCoreプロセッサロゴなどが刺繍されている2個の車輪と伸縮可能なハンドルで楽々移動可能
内部にはM92p本体やACアダプタなどをピッタリ収納できるように工夫されている前方にはキーボードやレノボのポータブル液晶ディスプレイ「ThinkVision LT1421」が収納可能このセットで楽々持ち運べ、電源が確保できる場所ならどこでも作業が可能

 今回は試用したのは、まだ開発段階の試作機ということや、搭載CPUなどの基本スペックが固まっていないこともあり、ベンチマークテストなどの性能評価は行なっていない。ただ、実際に使ってみた印象は、Officeなどのビジネスソフトはどれもキビキビと動作し、かなり快適に利用できると感じた。

 また、先ほども紹介したように、負荷のかかるソフトを利用した場合でも、発熱によって動作が不安定になることはなく、ファンの騒音もうるさいと感じることはほとんどなかった。ビジネス向けの製品のため、AV関連機能は弱いものの、この超小型ボディと、第3世代Coreプロセッサ搭載による処理能力の高さは、一般ユーザーにとっても大きな魅力になるはずだ。個人的には、このボディをベースに、一般ユーザー向けの製品もぜひ提案してもらいたい。

(2012年 4月 10日)

[Reported by 平澤 寿康]