株式会社リンクスインターナショナルから、PLEXTORブランドのSSD製品3モデルが発売された。今回、容量128GBの「PX-128M2S」と、256GBの「PX-256M2S」の2モデルを借用したので、早速その性能をチェックしていきたい。
本製品は、PLEXTORのブランドを冠しているが、PHILIPS & LITE-ON DIGITAL SOLUTIONS(PLDS)が製造したものだ。PLDSは、PHILIPS ELECTRONICSとLITE-ON ITの合弁会社として2007年3月に設立された。
PX-M2Sシリーズは、いずれもコントローラとしてSATA 6Gbps対応のMarvell製「88SS9174-BKK2」を採用している。Marvell製の6Gbps対応コントローラを採用したSSDとしては、ほかにCrucialの「RealSSD C300」シリーズが挙げられるが、採用されているコントローラは「88SS9174-BJP2」と別型番だ。88SS9174-BKK2は“サーバーグレード”として位置づけられており、256GBモデルでは公称リード最大400MB/secと、RealSSD C300シリーズと比較して高速化されている。
また、NANDフラッシュに東芝製のMLC NANDを採用している点も、RealSSD C300と大きく異なるところだ。さらに、高速な128MB DDR3メモリを採用している点も、この製品ならではの特徴といえよう。
いずれにしても、現在発売されている2.5インチのSSDとしては最速クラスであり、性能が気になるところだ。そこで今回、SATA 6Gbpsに対応した環境を用意し、そこでCrystalDiskMark 3.0を実行して得られた結果をお伝えする。
製品パッケージ(256GBモデル) | Acronisのバックアップソフト「True Image OEM HD」が付属する | 本体正面 |
基板は1.8インチだ | コントローラに88SS9174-BKK2を採用する | 基板の裏面はNANDフラッシュのみを装備する |
●AMD環境
まず、現時点ではコンシューマレベルで唯一SATA 6Gbpsにチップセットレベルで対応しているAMD環境でベンチマークを行なった。テスト環境は下記の通り。
【表1】AMDのテスト環境CPU | Phenom II X6 1090T Black Edition |
メモリ | 8GB(DDR3-1600) |
マザーボード | ASUSTeK Crosshair IV Extreme(890FX+SB850) |
ビデオカード | Radeon HD 5870×3(CrossFire X) |
サウンドカード | SoundBlaster X-Fi Titanium HD |
ブートドライブ | VelociRaptor(300GB) |
OS | Windows 7 Ultimate(64bit) |
当初、ASUSTeKから配布されているSB850のAHCIドライバ1.2.1.263(2010年9月10日版)を利用したところ、256GBモデルではシーケンシャルリード309MB/sec前後、同ライトが174MB/sec前後と、スコアが振るわなかった。また、128GBモデルではそもそも計測に異常が発生した。
256GBモデルのAMD AHCIドライバ1.2.1.263での結果。速度に頭打ちが発生してしまった | ブロックサイズを100MBに変更しても同様だった | 128GBではスコアが異常で計測できなかった |
これについてリンクスに問い合わせたところ、AMD製のAHCIドライバ環境では、性能が出ない可能性があるとし、Windows 7付属のAHCIドライバの使用を勧められた。
そこで、OS標準のドライバに変えたところ、シーケンシャルリード速度が256GBモデルでは最大約442MB/sec(1,000MB時)、128GBモデルでも約358MB/sec(同)と、公称値以上の速度を記録した。また、シーケンシャルライトに関しても、それぞれ約308MB/sec、205MB/secの好結果を残した。
512KBランダムアクセスについては、256GBモデルがリードで286MB/sec、ライトで277MB/sec前後、128GBモデルがリードで286MB/sec、ライトで195MB/secと、良好なスコアを残した。
一方4KBランダムアクセスに関しては、両モデルともにリードが12MB/sec前後、ライトが42MB/sec前後となった。同価格帯のSSDとしては平均的な値だが、HDDよりは大幅に高速であり、実環境では十分な性能を持っていると言っていいだろう。
256GBモデルの結果(1,000MB/OS標準のAHCIドライバ) | 256GBモデルの結果(100MB/OS標準のAHCIドライバ) |
128GBモデルの結果(1,000MB/OS標準のAHCIドライバ) | 128GBモデルの結果(100MB/OS標準のAHCIドライバ) |
OS標準ドライバでスコアが出て、AMDのAHCIドライバでは速度が出ないというのは腑に落ちないので、現在AMDのサイトで配布されている最新のAHCIドライバ12.1.269(Catalyst 10.12に含まれる。2010年11月4日版)をインストールして試してみた。すると、ほぼOS標準ドライバと同等の正常なスコアが得られた。128GBの1,000MBシーケンシャルリードのみだが400MB/sec近い高スコアも記録した。AMD環境を利用しているユーザーはドライバのバージョンに注意されたい。
256GBモデルの結果(1,000MB/AMD AHCIドライバ12.1.269) | 256GBモデルの結果(100MB/AMD AHCIドライバ12.1.269) |
128GBモデルの結果(1,000MB/AMD AHCIドライバ12.1.269) | 128GBモデルの結果(100MB/AMD AHCIドライバ12.1.269) |
●Intel環境
続いて、Intel環境でもベンチマークを行なった。と言っても、Intel環境は2010年末時点ではチップセットレベルでSATA 6Gbpsに対応していないので、ASUSTeK製のUSB 3.0+SATA 6Gbps対応拡張カード「U3S6」を利用して計測を行なった。ドライバはASUSTeKから配布されている1.0.0.1036(2010年3月17日版)
【表2】Intelのテスト環境CPU | Core i7-930(2.80GHz) |
メモリ | 12GB(DDR3-1333) |
マザーボード | DFI JR X58-T3H6 |
ビデオカード | Radeon HD 5770 |
サウンドカード | SoundBlaster X-Fi Elite Pro |
ブートドライブ | WD3200AAKS |
OS | Windows 7 Ultimate(64bit) |
拡張カード | ASUSTeK U3S6 |
今回テスト機のマザーボードであるDFIの「JR X58-T3H6」にちょうどPCI Express x4のスロットがあったので、そこに接続して計測した。この拡張スロットはICH10Rから信号線が出ているので、PCI Express 1.0相当の速度であり、x4のバス幅だと最大1GB/secの速度が得られる計算だ。
256GBモデルの結果(1,000MB/Marvell AHCIドライバ1.0.0.1036) | 256GBモデルの結果(100MB/Marvell AHCIドライバ1.0.0.1036) |
128GBモデルの結果(1,000MB/Marvell AHCIドライバ1.0.0.1036) | 128GBモデルの結果(100MB/Marvell AHCIドライバ1.0.0.1036) |
結果から言うと、256GBと128GBの2モデルともにリードが330MB/sec前後、ライトが200MB/secで頭打ちになってしまった。これもリンクスに問い合わせたところ、現時点ではMarvell製のホストコントローラとの相性問題があり、今後SSD側のファームウェア更新、またはホストコントローラ側のドライバの更新で解消される可能性があるとした。
OS標準のAHCIドライバでは4K QD=32を完走できなかった |
というわけで、こちらの方もOS標準のAHCIドライバで試しにやってみたが、速度は変わらず、さらに4K QD=32のテストだけ完走できなかった。
●相性問題があるが、最速は間違いない
というわけで簡単に一通り試してみたが、今時やや珍しい“相性”が存在するのはやや問題だろう。今後ファームウェアの改善に期待したい。
一方、環境さえ揃えば2.5インチSSD最速であることは疑いようがなく、性能を求めるユーザーにとって良い選択肢となるだろう。現時点では実質上AMD環境に限られるが、2011年初にもSATA 6Gbps対応とされるIntel 6シリーズの発売が控えており、Intelの新プラットフォームでも高性能が期待できそうだ。
(2010年 12月 27日)
[Reported by 劉 尭]