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MIT、沸騰を制御する方法を開発。より効率的なヒートパイプや発電に繋がる技術

金属の極性を変更することで、気泡ができやすくなっている場所(両端)と、できにくくなっている場所(内側)が形成されている

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)は26日(現地時間)、単純な電気スイッチの切り替えで水の沸騰プロセスを制御する方法を世界で初めて発見したと発表した。

 従来も沸騰プロセスを制御する手法はあったが、電場を用いるもので、特殊な液体や非常に高い電圧が必要で、経済的には実用的なものではなかった。今回MITの研究チームが開発したのは、水に界面活性剤を加え、あとは容器の中に敷き詰めた金属の電圧極性を変更するだけで済むというもの。

 界面活性剤の分子は電荷を持っており、金属の極性を変更すると、金属表面にくっついたり離れたりする。これによって、金属表面の親水性と疎水性が変化する。疎水性になると、金属表面上の非常に小さな凹凸によって気泡の発生に必要な核生成が促され、水の気泡ができやすくなる。一方、金属表面の電荷を保っていると、親水性になり、気泡の生成が抑制される。つまり極性の変更によって、気泡の生成率を正確に制御できるようになる。

 気泡の生成を制御できると、金属から液体への熱伝導も制御できるようになる。発電はボイラーの沸騰による蒸気でタービンを回転させることで行なっているが、現行の発電所では設備の破壊を防ぐため、稼働中の温度を一定に保っている。今回の技術で熱伝導率をリアルタイムで制御できるようになり、効率を落とさず出力を調整できるようになり、発電所の効率を高められるという。

 また、PCなどのチップ冷却に用いられるヒートパイプも液体の蒸発や熱伝導を利用しており、今回の技術を適用することで、効率を高められるとしている。

(若杉 紀彦)