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ついにブラックホールの撮影に成功か

 文字通り世界を股にかけた天文学プロジェクト「Event Horizon Telescope」(EHT)によって、科学者らが世界で初めてブラックホールの撮影に成功した可能性があるとPhys.orgなどが報じている。

 EHTは、ハワイ、南極、スペインなど地球上の8基の電波望遠鏡を組み合わせることで、地球と同じ直径1万kmの仮想レンズを持つ望遠鏡を実現したもの。EHTでは、地球から2万6千光年離れた天の川銀河の中心部にあり、質量は太陽400万個分もあるという超巨大ブラックホールの撮影を狙う。

 ブラックホールは、光でさえ脱出できないほどの巨大な重力を持つため、それ自身を電磁波で捕らえることはできない。これまで、ブラックホールであると考えられているものがいくつか観測されているが、これらは、周囲の天体に対する重力の影響を計算し、ブラックホールであるに違いないとされているのである。

 しかし、事象の地平線(Event Horizon)と呼ばれるブラックホールの境界部分のすぐそばで仮想粒子の対が発生すると(真空空間では極めて短い時間、粒子と反粒子のペアが生成され、すぐに対消滅という現象が発生していると考えられている)、そのペアのうち反粒子のみがブラックホールに飲み込まれ、対消滅するはずだった粒子が空間に残り続けることがあるとされている。これは、外部から観察すると、ブラックホールがあたかも放射を行なっているように見える。EHTでは、この放射を捕らえることで、直接ブラックホールを撮影しようとしている。

 EHTは、5夜にわたって撮影し続けた約4PB分の各望遠鏡のデータを収集しており、ブラックホール写真の「現像」を数カ月かけて行なう。科学者らはブラックホールを撮影できた可能性があると考えている。

 なお、ブラックホールは反粒子を飲み込むたびに放射を行ない、質量も減らす。最終的にはブラックホールが爆発とともに蒸発すると考えられているが、大質量ブラックホールの蒸発には宇宙の年齢より遙かに長い時間(10^68年)がかかる計算なので、その瞬間を捕らえる可能性はあまりなさそうだ。